【鈴木雅光の投信Now】グロソブ1兆円割れに思う

国際投信投資顧問が設定・運用している看板ファンド「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」の純資産総額が1兆円を割り込みました。4月14日に1兆円を割り込んだ後、再び1兆円に戻しましたが、4月17日以降は1兆円割れの状態が続いています。

かつて純資産総額が5兆円を超えていたファンドの末路が、まさにこれです。米国で残高の大きな投資信託は、20年、30年と長期にわたって運用されていますが、グロソブが設定されたのは1998年のこと。それでも約17年間運用され続けてきましたが、2008年8月には5兆7000億円あった純資産総額が、6年と8カ月で1兆円割れまで目減りしたペースを考えると、販売金融機関の変わり身の早さに唖然とします。

かつて日本の投資信託では最も大きな規模を誇っていたファンドが、ここまで凋落した理由は、高パフォーマンスが期待できなくなったということもあります。かつてグロソブの分配金は、1万口あたり40~60円が長く続きました。それが徐々に引き下げられ、現在の毎月の分配金額は、1万口あたり20円です。ここまで分配金が目減りした理由は、ひとえに運用環境が悪化したからです。ご存じのように、世界的に金融緩和競争が行われた結果、グロソブの投資対象であるソブリン債の利回りが、大幅に低下し、分配金の原資を稼げなくなったのです。

これは、1万口あたりの分配対象額を見れば明らかです。2013年2月の決算後分配対象額は525円でしたが、2015年3月のそれは235円です。分配対象額が減れば減るほど、分配金支払い額の安定性に支障を来す恐れが強まります。

ただ、そういう事実はありますが、5兆7000億円超もあった純資産総額が、6年8カ月で1兆円割れまで目減りした最大の要因は、販売金融機関がグロソブを解約し、他の、より個人に売りやすいファンドに乗り換えさせたからです。ブラジルレアル型のファンド、通貨選択型ファンド、新興国株ファンドなど、枚挙に暇がありません。

その意味では、グロソブの大縮小は、移り気な販売金融機関にしてやられたといっても良いでしょう。販売金融機関のこの手の営業体質が変わらない限り、日本に本格的な長期投資ファンドは根付かないとも言えそうです。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■国内初、HVO51%混合燃料が建設現場で稼働  大成建設<1801>(東証プライム)とユーグレナ…
  2. ■従来の制作プロセスを刷新しAI時代の人材育成を推進  武蔵精密工業<7220>(東証プライム)は…
  3. ■高速道路で手放し運転が可能に、新開発「Honda SENSING 360+」がACCORDの運転支…
2025年7月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

ピックアップ記事

  1. ■内需株に広がる「トランプ・ディール」回避の波  東京電力ホールディングス<9501>(東証プライ…
  2. ■日米関税交渉、7月9日に運命の日「90日猶予」迫る潮目  「三日、三月、三年」とは、潮目、変わり…
  3. ■祝日と金融政策が交錯する7月  7月は、7月21日が「海の日」が国民の祝日に制定されてからフシ目…
  4. ■「MMGA」効果の造船株・海運株は「海の日」月間キャンペーン相場も加わり一段高を期待  あと1カ…
  5. ■選挙関連の「新三羽烏」の株価動向をウオッチ  足元では野党が石破内閣への内閣不信認決議案提出を見…
  6. どう見るこの相場
    ■米、イラン核施設を電撃空爆、緊張激化へ  「2週間以内」と言っていたのが、わずか「2日」である。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る