- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- アルコニックスは戻り試す、20年3月期経常減益予想だが21年3月期回復期待
アルコニックスは戻り試す、20年3月期経常減益予想だが21年3月期回復期待
- 2019/11/14 07:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アルコニックス<3036>(東1)は商社機能と製造業を融合する「総合企業」を目指している。20年3月期は下方修正して減収・経常減益予想となったが、21年3月期の収益回復を期待したい。株価は年初来高値を更新して、安値圏ボックスレンジから上放れの動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。
■商社機能と製造業を融合する「総合企業」目指す
軽金属・銅製品(伸銅品、銅管など)、電子・機能材(レアメタル・レアアース、チタン・ニッケル製品など)、非鉄原料(アルミ・亜鉛地金など)、建設・産業資材(配管機材など)を取り扱う非鉄金属商社グループである。
商社機能と製造業を融合する「総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。
■製造が利益柱
19年3月期セグメント別売上高構成比は、商社流通84%(電子機能材33%、アルミ銅51%)で製造16%(装置材料8%、金属加工8%)だが、経常利益構成比は商社流通28%(電子機能材12%、アルミ銅16%)で製造72%(装置材料10%、金属加工63%)だった。
レアメタル・レアアースなど非鉄金属の市況、持分法投資損益、M&Aに伴うのれん償却や負ののれん益なども収益変動要因となるが、積極的なM&Aで製造が連結経常利益の過半を占める収益柱となっている。
中期経営計画(20年3月期~22年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、経営目標値を22年3月期の経常利益100億円超、純利益70億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0~1.3倍程度としている。
3年間の投融資総額はM&A・事業投資を中心に250億円~300億円で、ROIC10%を目標とする。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指して積極投資を推進する方針だ。
18年12月には摩擦調整材のカシューパーティクルを製造販売する東北化工を連結子会社化してブレーキ関連市場に参入、19年2月にはカーボンブラシを製造販売する富士カーボン製造所を連結子会社化、19年6月には中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立、19年10月には香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立した。
19年7月には、メキシコFNA社(富士プレスが日邦産業と共同設立)の自動車部品用精密金属プレス部品事業を、メキシコFUJI-MX社(18年12月設立)が譲り受けて営業開始した。FNA社の事業運営に係る日邦産業との合弁契約は解消した。
■20年3月期経常減益予想だが21年3月期回復期待
20年3月期の連結業績予想(10月29日に下方修正)は、売上高が19年3月期比9.9%減の2320億円で、営業利益が15.3%減の53億円、経常利益が4.1%減の60億円、純利益が9.7%増の44億円としている。配当予想(8月6日に2円上方修正=第2四半期末1円+期末1円)は、19年3月期比3円増配の42円(第2四半期末21円、期末21円)である。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比8.7%減の1184億32百万円、営業利益が29.6%減の26億99百万円、経常利益が20.8%減の29億68百万円、純利益が30.9%減の19億12百万円だった。米中貿易摩擦長期化や中国経済減速などによる需要減少で、商社流通における電子材料や自動車関連部材を中心に取り扱いが減少し、売上高、利益とも計画を下回り減収減益だった。販管費の増加やレアメタル関連での評価損計上も影響した。
商社流通―電子機能材は85.6%減益だった。電子・電池材料は堅調だが、レアメタル・レアアースの相場下落・需要停滞および評価損計上が影響した。商社流通―アルミ銅は20.8%減益だった。中国経済減速の影響で自動車関連や半導体関連、天候不順の影響で空調機器関連が低調となり、非鉄市況下落も影響した。製造―装置材料は87.0%減益だった。メッキ材料や非破壊検査・マーキング装置が低調で、新規連結の富士カーボン製造所の業績が計画を下回ったことも影響した。製造―金属加工は14.9%増益だった。精密プレス部品の新規受注や持分法投資利益の増加が寄与した。
通期も需要減少で減収・経常減益予想とした。経常利益の計画は、商社流通―電子機能材が58.4%減の3億円、商社流通―アルミ銅が26.8%減の7億50百万円、製造―装置材料が1.3%減の6億円、製造―金属加工が11.1%増の43億50百万円としている。なお製造―金属加工の富士プレスとのメキシコ合弁事業は費用が先行し、収益貢献は21年3月期以降としている。
20年3月期は下方修正して減収・経常減益予想となったが、21年3月期の収益回復を期待したい。
■株主優待制度は3月末の株主対象
株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は戻り試す
株価は年初来高値を更新して、安値圏ボックスレンジから上放れの動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。11月13日の終値は1512円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS174円23銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想42円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1489円59銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約392億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)