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アスカネットは調整一巡、20年4月期減益予想だが上振れ余地
- 2019/11/14 07:35
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工と写真集制作を主力として、葬祭市場をIT化する葬Techや、空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)の事業化を推進している。20年4月期は一時的費用発生で減益予想だが上振れ余地がありそうだ。AI事業ではメルセデス・ベンツ日本のブランド発信拠点と体験施設にASKA3Dプレートが採用された。本格受注・量産化への期待が高まる。株価は上値を切り下げる形だが、調整一巡して出直りを期待したい。
■写真加工関連を主力として、空中結像AIの事業化を推進
葬儀社・写真館向け遺影写真加工のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力として、既存分野では葬祭市場をIT化する葬Tech、新規分野では空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)の事業化を推進している。19年4月期の売上構成比はMDS事業40.3%、PPS事業57.5%、AI事業2.2%だった。
MDS事業は葬儀関連、PPS事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場である。いずれも景気変動の影響を受けにくい特性や、下期の構成比が高い季節特性がある。
また17年2月人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボットと資本業務提携、18年3月全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社と資本業務提携している。
■MDS事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進
MDS事業は、専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。19年4月期末のハード設置件数は2484ヶ所、19年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が約35万枚、電照焼増枚数が約14万枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため、市場シェアは約30%(1位)である。
成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」の拡販、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo」の浸透など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。
■PPS事業はOEMが拡大
PPS事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するサービスで、高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力としている。19年4月期時点で約4290社の写真館向けなどに、BtoBとBtoCの合計(OEM除く)で年間約40万冊提供している。19年6月にはプロフォトグラファー向けサービスとして、データ納品システム「Grandpic」をリリースした。
またNTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」に、フォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。NTTドコモが台湾で展開するフォトブックサービスOEM提供においても、フォトブック商品の供給と発送を担当する。なおOEMを中心とする需要拡大に対応するため、19年8月本社隣接地の新工場が稼働した。
■樹脂製ASKA3Dプレートは本格受注・量産期待
空中結像のAI事業は、プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色として、サイネージ、車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。18年1月にはサービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一し、本格量産(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を目指している。
高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレート、および大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートの開発・製造・販売を進めている。18年11月リリースした新バージョンの樹脂製ASKA3Dプレートは、国内外合計約200社に試作品を販売し、顧客側で組込製品化の検討を進めている。複数の試作品供給先の製品開発に、デザイン・インの形で協力する動きも出始めているようだ。
生産面では19年5月、一定水準以上の品質の安定と歩留まりの向上を実現できたため、月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行した。さらに一部工程の生産設備を増強することで、比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できるとしている。
19年10月にはメルセデス・ベンツ日本のブランド発信拠点と体験施設にASKA3Dプレートが採用されたと発表している。本格受注・量産化への期待が高まる。
■20年4月期微減益予想だが上振れ余地
20年4月期非連結業績予想は売上高が19年4月期比7.0%増の67億38百万円、営業利益が5.1%減の8億24百万円、経常利益が5.1%減の8億29百万円、純利益が9.0%減の5億45百万円としている。配当予想は1円減配の10円(期末一括)である。
MDS事業、PPS事業とも堅調に推移して増収だが、新工場稼働(19年8月)に伴う設備移設関連の一時的費用が発生し、減価償却費、人件費、開発費などの増加も考慮して微減益予想としている。ただし保守的だろう。
セグメント別の売上高計画は、MDS事業が3.3%増の26億22百万円、PPS事業が8.2%増の39億16百万円、AI事業が46.0%増の2億円としている。MDS事業は遺影写真加工収入の着実な積み上げや葬儀演出ツールの伸長を見込む。PPS事業はOEMが牽引して増収だが、コスト面で設備移設関連の一時的費用や減価償却費などの増加を見込んでいる。AI事業は量産案件受注に向けてサンプル拡販を推進する。計画値には量産案件を含んでいない。
第1四半期は、売上高が前年同期比6.9%増の15億41百万円で、営業利益が11.3%増の1億55百万円、経常利益が9.2%増の1億55百万円、純利益が13.1%増の1億09百万円だった。MDS事業(2.2%減収・5.2%減益)はサプライ品などの売上が伸び悩んだが、PPS事業(14.4%増収・18.9%増益)はOEMを中心に好調に推移した。
通期は、第2四半期の新工場稼働に伴う一時的費用が発生するため、微減益予想としている。ただし上振れ余地がありそうだ。収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年4月末の株主対象
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。
■株価は調整一巡
株価は上値を切り下げる形だが、調整一巡して出直りを期待したい。11月13日の終値は1401円、今期予想PER(会社予想のEPS32円36銭で算出)は約43倍、今期予想配当利回り(会社予想の10円で算出)は約0.7%、前期実績PBR(前期実績のBPS322円49銭で算出)は約4.3倍、時価総額は約245億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)