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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】TAC下値固め完了感、16年3月期の収益改善期待で反発
- 2015/4/27 07:01
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
「資格の学校」を運営するTAC<4319>(東1)の株価は安値圏でモミ合う展開だが、2月安値208円まで下押すことなく下値固め完了感を強めている。調整のほぼ最終局面のようだ。16年3月期の収益改善期待で反発のタイミングだろう。
財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営し、法人研修事業、出版事業、人材事業も展開している。
財務・会計、経営・税務、法律など既存領域の市場が縮小傾向のため、中期成長に向けてオンライン教育(Webなどの通信系講座)の活用や、教員、医療、介護、語学など新領域への事業展開を強化している。
13年12月に増進会出版社(子会社のZ会が通信教育事業などを展開)と資本業務提携し、当社の教室運営ノウハウや資格系コンテンツ開発力と、増進会出版社の通信教育ノウハウや教養系コンテンツ開発力を融合させたソリューションの提供を目指している。14年8月には増進会出版社が第2位株主となって資本関係を強化した。
14年6月には、レセプト点検・整理業務を中心に医療機関事務分野の人材サービスを展開するクボ医療(兵庫県加古郡)と、医療事務に関する労働者派遣事業・レセプト作成請負業務を展開する医療事務スタッフ関西(兵庫県神戸市)を子会社化した。
そして14年11月には関西の4校舎で「医療事務講座」を開講し、14年12月には子会社TAC医療事務スタッフを設立した。クボ医療および医療事務スタッフ関西を子会社化し、自ら育成した医療機関系人材を幅広い医療機関に提供することが可能になったため、関東エリアでも医療事務スタッフ派遣事業や診療報酬請求事務請負事業を展開する。
14年11月にはトーハン・コンサルティングとの業務提携と介護系資格取得支援事業の開始を発表し、15年1月にトーハン・コンサルティングが展開する介護系資格取得教室を当社の主要校舎において「介護教室ケアマイスター TAC教室」の名称で開講した。
15年1月には「相続アドバイザー講座」の開講を発表した。銀行業務検定のうち相続アドバイザー3級は14年3月から実施された新しい試験である。15年から相続税および贈与税の税制改正が行われたため、初回試験の受験者が約1万人に達する注目度が高い試験だ。
15年3月には一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)公認で、日本初の大規模公開オンライン講座提供サイト「gacco(ガッコ)」に対して、無料の実務・資格講座を提供すると発表した。人気の高い簿記3級、行政書士、宅建士、基本情報技術者、ファイナンシャル・プランナーなどの入門講座を無料で開講する。
また4月10日には、日本商工会議所と連携して「高等学校日商簿記学習支援プログラム」を15年4月から開始すると発表した。18歳人口の減少に直面する多くの大学が就職や国家試験合格に直結する簿記教育の有用性を見直して、高校時代に日商簿記検定試験を取得した生徒を推薦やAO入試などで優遇する事例が増加している。こうした状況を背景に、日商簿記検定試験の高等学校向け教育支援の一環として、個人向け・法人向けに販売している当社の日商簿記教育コンテンツの基本講義部分を高等学校向けに無償で提供する。これによって日商簿記検定試験の一層の普及促進を図るとしている。
なお当社の四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係で季節変動の特徴がある。公認会計士・税理士講座は第2四半期(7月~9月)と第3四半期(10月~12月)が翌年受験のための申込時期となるため、第2四半期と第3四半期は現金売上および売掛金計上が増加する。しかし受講期間に応じて前受金に振り替えられる一方で、経費は毎四半期一定額が計上されるため売上総利益率が低下する。そして第4四半期(1月~3月)と第1四半期(4月~6月)は、前受金が各月の売上高に振り替えられるため売上総利益率が上昇する傾向が強い収益構造としている。
前期(15年3月期)の連結業績見通し(5月15日公表)は売上高が前々期比1.1%減の203億円、営業利益が同1.5%増の10億50百万円、経常利益が同16.9%減の10億80百万円、純利益が同24.7%減の6億15百万円、配当予想が前々期と同額の年間1円(期末一括)としている。消費増税前駆け込み申込の反動影響で減収見通し、投資有価証券運用益一巡なども影響して経常利益と純利益は減益見通しとしている。
第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比5.2%減収、同71.2%営業減益、同59.8%経常減益、同61.0%最終減益だった。法人受講者数は堅調だったが、個人受講者数の減少や販管費増加などで減収減益だった。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)54億04百万円、第2四半期(7月~9月)49億56百万円、第3四半期(10月~12月)43億91百万円で、売上総利益率は第1四半期44.4%、第2四半期39.4%、第3四半期31.1%だった。営業利益は第1四半期5億75百万円、第2四半期2億12百万円、第3四半期は季節要因も影響して4億28百万円の赤字だった。
なお損益計算書に計上される発生ベース売上高は同5.2%減収だったが、当社が経営管理上で重視している現金ベース売上高は同0.5%減収にとどまった。第2四半期累計(4月~9月)の同9.6%減収に比べて、第3四半期(10月~12月)は同0.5%減収とほぼ前年並みに改善している。
今後の重点取り組みとして、新講座(教員試験対策講座、建築士講座など)の開発と収益化、医療・介護系分野の講座や人材ビジネスへの進出と拡大、増進会出版社との共同事業の推進、連結子会社オンラインスクールによる新たな資格学習者層の開拓・囲い込み、事業構造改善やコスト削減の継続的実施を推進する方針だ。
今期(16年3月期)は景気回復に伴って財務・会計系の求人ニーズが高まっていることも追い風となりそうだ。増進会出版社との提携効果、医療事務講座や医療事務に係る人材ビジネスの本格寄与に加えて、本社ビル取得によって年間1億70百万円程度の営業損益改善効果が見込まれることもプラス要因だろう。収益改善基調が期待される。
株価の動きを見ると安値圏でモミ合う展開だが、2月安値208円まで下押すことなく下値固め完了感を強めている。調整のほぼ最終局面のようだ。
4月24日の終値213円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS33円24銭で算出)は6~7倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間1円で算出)は0.5%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS224円46銭で算出)は0.9倍近辺である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、210円近辺が下値支持線のようだ。調整のほぼ最終局面と考えられ、16年3月期の収益改善期待で反発のタイミングだろう。