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【小倉正男の経済コラム】米韓軋轢、駐留経費5倍増要求で揉める
- 2019/11/21 16:36
- 小倉正男の経済コラム
黒澤明監督の映画「用心棒」、三船敏郎が用心棒「桑畑三十郎」を演じた。
ハリウッドでは、「ラストマン・スタンディング」などにリメイクされ、ブルース・ウィリスが主演した。「ラストマン・スタンディング」は、偶然に何も知らずに観たのだが十分面白いものだった。
用心棒の桑畑三十郎は、街を支配する一方のヤクザから50両で雇われる。街はふたつのヤクザが縄張りを争っており、50両を払うニーズがあったわけである。桑畑三十郎の狙いは、ふたつのヤクザを闘わせて共倒れにすることだった。
三船敏郎が演じる桑畑三十郎は、仲代達矢が演じる回転式拳銃を使う凄腕のヤクザを切って映画が終わる。「あばよ」。ふたつのヤクザを退治して桑畑三十郎は去って行く。
「ラストマン・スタンディング」でもブルース・ウィリスが演じる用心棒がクルマをブッ飛ばして地平線を消えて行くのがラストシーンだった。
■アメリカは韓国に50億ドルの駐留経費を要求
文在寅大統領の韓国政権は、アメリカと駐留経費負担をめぐって揉めている。アメリカは、新年の韓国の駐留経費として50億ドルを要求したといわれている。従来の5倍超というのだから確かにこれは揉めないわけにはいかない。
アメリカも韓国も超タフ・ネゴシエーターである。どう脅かして、どう折れて、どう決着
するのか。
アメリカは、50億ドルの負担を飲まないなら駐留米軍の一部を引き上げるとしている。日本とのGSOMIAの延長がないとすれば、駐留米軍の危険を増大させる――。これも駐留経費50億ドル要求の伏線になっている。
もちろん、韓国もこれには衝撃を受けたのは事実であり、アメリカ国内からも「正気の沙汰ではない」と批判が出ている。
だが、同盟国に防衛経費負担を増額しろというのは、トランプ大統領の当初からの持論にほかならない。
韓国も、核武装すれば米軍の駐留は不要だとか、日本とのGSOMIAを延長すれば50億ドルは引っ込めるのかとか――。韓国も慌てているのか、いつものことだが様々な議論が出ている。慌てている段階が収まれば、おそらく反撃に出るに違いない。
■米韓軋轢で資本が逃げる
GSOMIA延長でディスカウントされるという話ではないとみられる。トランプ大統領は本気で50億ドルの経費負担を要求している。
しかもトランプ大統領は文大統領をそう信用していないし、おそらく好きでもない。簡単にはディスカウントしてくれない。
文大統領の韓国とすれば、米韓同盟を破棄して、中国、ロシア、北朝鮮のほうに走るぐらいのことは言いかねない。文在寅大統領の韓国政権は、北朝鮮の核もミサイルも自国にとって脅威ではないと公言としている。それに北朝鮮へのコンプレックスやシンパシーが強いだけにそうしたことを本気で言い出すかもしれない。
日韓軋轢に続いて米韓軋轢まで表面化するということで、韓国は安全保障に火が付いている。資本はますます韓国を逃げていく状態になっている。資本が逃げるのは厄介なことだが、元はいえば文大統領の左派ポピュリズム政策により自ら招いたクライシスにほかならない。いわば納得してもらうしかない。
しかし、日本にとっても対岸の火事というわけにはいかない。
アメリカは日本の駐留経費(思いやり予算)の増額をどう要求してくるのか。これまでの4倍超という説が流れている。河野太郎防衛相は「そうした事実関係はない」と否定している。韓国とは違って、日米はもう少しスマートに解決してもらいたいものだが。
「桜を見る会」とか、相も変わらず野党はワンパターンである。日本としてもそんな平和な議論をしているところではない。
(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)