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アイビーシーは戻り試す、20年9月期大幅増収増益予想
- 2019/11/25 07:58
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイビーシー<3920>(東1)はネットワークシステム性能監視ツールを主力として、マーケット変化に対応したITサービス拡大や、IoTセキュリティ基盤サービス「kusabi」などブロックチェーン技術を活用した分野への展開を推進している。19年9月期(連結決算に移行)は18年9月期非連結業績との比較で増収増益だった。20年9月期は大幅増収増益予想である。保守的な予想としており、上振れを期待したい。株価は安値圏でのモミ合いから上放れの動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。
■ネットワークシステム性能監視ツールが主力
ネットワークシステム性能監視ツール(ネットワークシステム全体の稼働・性能状況を精度の高いデータを取得して分析するソフトウェア)の開発・販売、および導入支援サービスを主力としている。
様々なデータおよび統計分析・解析ノウハウを蓄積し、ネットワークシステム性能監視に必要なマルチベンダー対応ソフトウェアを自社開発して、サービスをワンストップで提供していることが強みだ。ほぼ全ての主要メーカーに対応するとともに、クラウドとオンプレミス環境を組み合わせた「ハイブリッドクラウド」の統合監視に対応している。100社を超えるマルチベンダー機器対応で、使い勝手の良い性能監視ソフトウェアは世界でも類がない。
主力製品はネットワーク性能監視ソフトウェアのSystem Answerシリーズである。累計販売実績は08年12月リリースのSystem Answer、11年7月リリースのSystem Answer G2の合計で1400システム以上に達している。
17年7月には情報監視機能を備えた新製品System Answer G3、18年8月にはクラウド型System Answer G3 on SAMSを発売した。これに伴い19年12月末をもってG2シリーズの販売を終了予定である。
■高収益ストック型ビジネスモデル
19年9月期の事業別売上高構成比(単体ベース)は、ライセンス(ソフトウェア使用権)販売59%、導入支援やネットワークシステム構築に係るコンサルティングなどのサービス提供16%、その他物販(他社製情報通信機器等の販売)24%だった。
ライセンス販売という高収益のストック型ビジネスモデルが特徴である。また顧客の検収時期の影響で、第2四半期と第4四半期の構成比が高い季節要因がある。大手優良企業を中心とした顧客構成で売上債権の貸倒実績が無く、安定的な財務体質を維持していることも特徴だ。
■中期成長戦略でIoT分野等への展開を加速
中期成長戦略として、ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニーにとどまらず、マーケット変化に対応したITサービスの拡大を目指し、IBCソリューション(System AnswerやSAMSプラットフォームを中心にセキュリティを含めた総合的インフラ運用支援サービス)の拡大、インシュアテック(保険×IT)分野やブロックチェーン技術を活用したIoT分野等への展開、およびIBCソリューション拡充や成長分野進出に向けたベンチャー企業に対する投資を推進している。
新製品ではSystem Answer G3およびクラウド型System Answer G3 on SAMSの販売が20年9月期に本格化する見込みだ。性能監視から情報監視へと新たなステージに入る。
IBCソリューションの拡大では高付加価値サービスの創出を目指している。19年4月にはNSD<9759>の子会社であるNSD先端技術研究所に出資して持分法適用関連会社化した。19年8月にはナビプラスからセキュリティ事業の一部を譲り受け、脆弱性診断サービスおよびSSLサーバー証明書クーポン販売を開始した。
インシュアテック(保険×IT)分野の子会社iChain(19年5月完全子会社化)は、他社に先駆けてブロックチェーン技術を活用したインシュアテック事業を推進し、保険ポートフォリオ管理スマホアプリ「iChain保険ウォレット」を配信している。18年12月には「iChain保険ウォレット」が三井住友海上火災保険「お客さまWebサービス」とサービス連携した。20年1月には「iChain保険ウォレット・ホワイトレーベル」を、東海東京フィナンシャル・ホールディングスの子会社マネーコンパス・ジャパンに「そなえるコンパス」ブランドとして提供予定である。
また19年4月にはブロックチェーン開発のサンデーアーツを子会社化した。
IoTセキュリティ基盤サービスのkusabi(楔)は、18年5月特許取得した2大中核技術(ブロックチェーン技術による電子証明システムと独自のデバイスプロビジョニングシステム)により、ソフトウェアだけでIoTセキュリティを実現する画期的なサービスである。3つの不要(専用チップが不要、認証局登録が不要、マルウェア対策が不要)を実現し、新たなIoT時代のセキュリティエコシステムを構築する。
18年2月にはIoTセキュリティ標準化に向けてkusabiコンソーシアムを設立、18年3月にはkusabiのパートナーライセンス販売を開始、19年4月にはkusabiを詳細に解説したホワイトペーパーを発表、19年5月にはkusabi実証実験を支援するPoC支援サービスを開始した。
さらに総務省がIoTセキュリティ対策として、端末機器に不正アクセスを防ぐ機能を設けることを義務付け(20年4月から適用予定)たため、kusabiの採用が期待されている。
ベンチャー企業投資では、多くの投資実績を持つOctave Tech Investment L5 LLCに出資し、同ファンドを通じて自動運転車向けLiDARを開発する米スタートアップ企業に出資している。
■20年9月期大幅増収増益予想
19年9月期連結業績(連結決算に移行)は、売上高が18億33百万円、営業利益が2億44百万円、経常利益が2億23百万円、純利益が1億34百万円だった。iChainの開発費増加で利益が計画未達だったが、18年9月期個別業績(売上高12億90百万円、営業利益2億02百万円)との比較で増収増益だった。また個別業績は売上高が34.5%増の17億35百万円、営業利益が56.2%増の3億15百万円と大幅増収増益だった。
事業別売上高は、ライセンス販売が新規大型案件も寄与して13.7%増の10億29百万円、サービス提供が構築・運用サポート増加で56.5%増の2億84百万円、その他物販がシステム周辺機器増加やSSLサーバー証明書クーポン販売開始で2.1倍の4億21百万円だった。
20年9月期連結業績予想は、売上高が19年9月期比39.4%増の25億55百万円、営業利益が44.1%増の3億52百万円、経常利益が39.3%増の3億11百万円、純利益が57.4%増の2億12百万円としている。
新製品のSystem Answer G3およびクラウド型System Answer G3 on SAMSの販売が本格化し、IBCソリューションの拡大を推進して大幅増収増益予想である。iChainが開発を進めていた製品の販売も開始するが、新規分野は保守的な予想としている。上振れを期待したい。
■株価は戻り試す
19年9月5日発表の自社株取得(上限10万株・1億円、取得期間19年9月6日~19年10月31日)は、10月31日時点の累計取得株式数が8万6200株となって終了した。
株価は安値圏でのモミ合いから上放れの動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。11月22日の終値は1221円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS38円49銭で算出)は約32倍、前期実績PBR(前期実績連結BPS292円93銭で算出)は約4.2倍、時価総額は約70億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)