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三洋貿易は上値試す、20年9月期増益・増配予想
- 2019/11/28 08:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
三洋貿易<3176>(東1)は自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。19年9月期は増益・大幅増配だった。20年9月期も小幅ながら増益・増配予想である。収益拡大を期待したい。株価は7月の年初来高値に接近している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■自動車向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社
ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に展開し、自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。メーカー並みの技術サポート力が特徴だ。
自動車関連は合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサー)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーター(Gentherm社製)はカーボンファイバー仕様市場を独占し、ランバーサポート(L&P Group社製)は世界市場6割を占有している。
19年9月期セグメント別(連結調整前)営業利益構成比は化成品が24%、機械資材が62%、海外現地法人が13%、その他が1%だった。収益面では設備投資関連商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高くなりやすい特性がある。
■業容拡大・グローバル戦略を推進
M&Aも活用して業容拡大・グローバル戦略を推進している。17年6月精密鋳造用副資材輸入販売の日本フリーマンを子会社化、17年10月化学品専門商社のアズロを子会社化、18年4月工業化学薬品輸入販売の子会社ソートを吸収合併、18年8月大日本コンサルタント<9797>と合弁で静岡県・湯船原地区の木質バイオマス発電所を管理運営する合同会社ふじおやまパワーエナジーを設立、19年5月ゴムライニング製ポンプで世界首位の新東洋機械工業を子会社化した。
19年10月日本ルフト(16年7月子会社化)の科学機器事業を譲り受けた。日本フルトは医療機器事業に経営資源を集中する。また畜産機能性原料の輸入専門商社ワイピーテックを子会社化した。19年11月には英国OXIS社と、同社のリチウム硫黄電池セルとバッテリーシステムの日本市場での拡販に関して業務提携した。
海外は米国、メキシコ、中国、タイ、ベトナム、インド、インドネシア、シンガポール、ドイツに展開している。
■長期経営計画の経営スローガン「最適解への挑戦」
長期経営計画「VISION2023」では、目標値を23年9月期経常利益75億円、ROE15%、海外拠点成長率(売上高、年率)10%としている。
経営スローガンに「最適解への挑戦」を掲げ、基本戦略として企業体質の強化で最適解への挑戦、企業基盤の強化、人材への投資、収益基盤の強化で事業領域の深化、新規ビジネスの開拓、グローバル展開の加速、新規投資案件の推進に取り組む。
事業領域の深化では注力ドメインを、自動車部材(内装材、ゴム部材)、ファインケミカル(高機能化学品、ゴム添加剤)、ライフサイエンス(医薬中間体、医療機器、ゴム部材)、サステナブル(木質バイオマス、地熱発電)、畜産関連(ペレットミル機械、畜産部材)、科学分析機器(先端計測・分析機器)とした。
また今後の成長ドライバーとして木質バイオマス関連、自動車関連、および海外への展開を加速する方針だ。
木質バイオマス関連は、実績豊富な木質ペレット製造装置(CPM社製)やガス化熱電併給装置(ブルクハルト社製)のプロジェクト受注を積み上げて、将来的には部品更新やメンテナンスを中心とするストック型収益の構築を目指す。自動車関連はEV化や自動運転化に対応し、モビリティ分野での移動環境の快適化・高付加価値化の流れを踏まえた商品開発を推進する。海外はアセアン+インド、中国、北中米の3拠点を主軸としてグローバル展開を加速する。
また19年11月策定の中期経営計画では、21年9月期目標値を売上高1020億円、営業利益65億円、経常利益67億円、純利益45億円とした。長期経営計画「VISION2023」で掲げた企業体質の強化、収益基盤の強化を重点戦略とする。
■20年9月期増益・増配予想
19年9月期の連結業績は、売上高が18年9月期比6.1%増の832億30百万円、営業利益が11.6%増の58億71百万円、経常利益が9.0%増の60億75百万円、純利益が10.5%増の40億18百万円だった。配当は10円増配の74円(第2四半期末37円、期末37円)とした。
計画を若干下回ったが、機械資材の自動車関連が牽引して増収増益、10期連続経常増益だった。化成品は1.3%増収だが20.2%減益だった。ゴム関連製品の仕入価格上昇、中国・アジアの景気減速、中国の環境規制などが影響した。機械資材は18.0%増収で29.2%増益だった。自動車シート部品が好調に推移し、木質バイオマス大型熱電併給施設が5月に北海道で本格稼働した。海外現地法人は3.4%減収で0.1%増益だった。上海、タイ、メキシコで自動車内装用部品が堅調だが、米国でフィルム関連が低調、ベトナムで建材関連が伸び悩んだ。
20年9月期の連結業績予想は、売上高が19年9月期比13.5%増の945億円、営業利益が2.2%増の60億円、経常利益が2.0%増の62億円、純利益が4.5%増の42億円としている。配当予想は1円増配の75円(第2四半期末37円、期末38円)である・
自動車関連が堅調に推移する。さらに中国の環境規制の影響を受けた化成品の収益改善、M&A効果、海外現地法人の事業拡大なども見込み、原料高や継続的に実施する成長投資を吸収して小幅ながら増益・増配予想である。収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は7月の年初来高値に接近している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。11月27日終値は2362円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS293円39銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の74円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2022円63銭で算出)は約1.2倍、時価総額は約343億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)