【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは下値固め完了、16年5月期の営業損益改善期待で反発

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信や店頭アフィリエイト広告ビジネスなどを展開している。株価は4月20日に動意づいて425円まで急伸する場面があった。4月上旬~中旬の安値圏340円近辺で下値固めが完了したようだ。15年5月期の営業利益下振れ懸念の織り込みが完了し、16年5月期の営業損益改善期待で反発のタイミングだろう。

 コンテンツ制作・配信などのコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開し、中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営と電子コミック配信サービスを手掛けている。

 配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略として、ネイティブアプリ事業を新たな収益柱に育成している。ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化に向けて、13年3月に音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月に子会社HighLabを設立、14年11月にアプリ開発の会津ラボを子会社化した。

 中国・上海の携帯電話販売事業については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造の構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進している。

 コンテンツ配信のグローバル展開では14年6月、インドネシア大手移動体通信キャリアのXL Axiata社が運営するアプリストア内のアプリ取り放題サービス向けに、スマートフォンアプリの提供を開始した。ローカライズした自社アプリを世界の各種プラットフォームに配信し、自社コンテンツ資産の2次利用を推進する戦略だ。

 法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。また14年10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。

 子会社HighLabは、3月17日にパズルゲーム「ハニープラス」、3月23日に旦那育成ゲーム「ウチの旦那はイケてない」の配信を開始した。さらに4月24日には美少女キャラと対局☆サクサク遊べる麻雀ゲーム「爽快麻雀!イーシャンテン」の事前予約開始を発表した。

 また4月17日には集英社コミック約1700作品・8800冊を、スマートフォン・タブレット向け総合電子書籍サービス「BOOKSMART」にて配信開始すると発表した。

 今期(15年5月期)第3四半期累計(6月~2月)の連結業績は、売上高が前年同期比14.1%増の37億40百万円だが、営業利益が同55.0%減の1億14百万円、経常利益が同51.4%減の1億25百万円、純利益が同60.8%減の1億62百万円だった。広告宣伝費の増加などが影響して大幅減益だった。

 セグメント別に見ると、コンテンツサービス事業は新規コンテンツの投入などで売上高が同4.4%増の19億11百万円と順調に推移したが、広告宣伝費の増加などで営業利益(全社費用等調整前)が同25.3%減の4億39百万円だった。ソリューション事業は広告ビジネス「店頭アフィリエイト」に係る携帯電話販売会社との連携強化などで売上高が同26.5%増の18億29百万円、営業利益が同40.3%増の1億30百万円と好調に推移した。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)13億16百万円、第2四半期(9月~11月)11億98百万円、第3四半期(12月~2月)12億26百万円で、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期10百万円、第3四半期52百万円だった。

 通期の連結業績見通しは、前回予想(11月28日に売上高と利益を減額、1月9日に税金費用減少で純利益を増額修正)を据え置いて、売上高が前期比13.8%増の51億30百万円、営業利益が同34.4%減の2億20百万円、経常利益が同32.4%減の2億30百万円、純利益が同58.8%減の1億80百万円としている。配当予想(7月9日公表)は前期と同額だが普通配当で年間3円(期末一括)としている。

 新サービスの企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」の開発遅延に伴って売上高が期初計画を下回り、子会社HighLabのネイティブアプリ「Fivetoak」および「ひっぱれ!ネコPingプラネット」のプロモーション費用など先行投資負担が影響して減益見通しとしている。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高72.9%、営業利益51.8%、経常利益54.4%、純利益90.0%である。営業利益と経常利益は低進捗率のため通期下振れに注意が必要だが、売上面で見るとコンテンツサービス事業は交通情報などが牽引し、ソリューション事業は広告ビジネス「店頭アフィリエイト」が大幅伸長して増収基調だ。3月に配信開始したゲーム新タイトルも寄与して営業利益と経常利益の挽回が期待される。

 また来期(16年5月期)は、交通情報や「店頭アフィリエイト」の好調に加えて、ゲーム新タイトルも本格寄与して営業損益改善基調だろう。

 株価の動きを見ると、4月20日に動意づいて425円まで急伸する場面があった。15年5月期の営業利益下振れ懸念を織り込んで、4月上旬~中旬の安値圏340円近辺で下値固めが完了したようだ。

 4月27日の終値356円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS4円63銭で算出)は77倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績に増資を考慮した連結BPS107円70銭で算出)は3.3倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線突破の動きを強めている。15年5月期の営業利益下振れ懸念の織り込みが完了し、16年5月期の営業損益改善期待で反発のタイミングだろう。

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