【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリーク・アンド・リバー社は16年2月期増収増益見通しを再評価して反発のタイミング

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(JQS)はクリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業を展開している。株価は調整局面だが、1月安値593円に接近して調整のほぼ最終局面のようだ。16年2月期増収増益見通しを再評価して反発のタイミングだろう。

 日本のクリエイティブ分野(映像・テレビ番組・ゲーム・Web・広告などの制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業、およびプロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業を主力として、韓国のクリエイティブ分野、医療・IT・法曹・会計などの分野にも事業展開している。

 クリエイティブ分野(日本)では、13年8月公開のテレビ朝日開局55周年記念劇場公開映画「少年H」(モスクワ映画祭特別賞受賞)の制作を担当したことが評価され、番組制作受託事業が急拡大している。15年2月期の当社制作番組はレギュラーと特番を合わせて24本となった。

 新規分野として電子書籍取次および「作家」「オンラインクリエイター」「建築」「ファッションクリエイター」エージェンシー事業にも展開し、13年12月にはアパレル業界に特化した人材派遣会社インター・ベルを子会社化した。また14年9月にはクラウド関連サービスとしてクリエイティブプラットフォーム「Creators Ship(クリエイターズ・シップ)」のサービスを開始した。

 15年3月には中国大陸最大の電子マンガプラットフォーム「布卡漫画」において、一迅社のコミック雑誌「コミック百合姫」中国語電子版の配信を開始した。一迅社の人気コミック単行本の中国語電子版を制作して、同プラットフォームで順次配信する予定としている。またサイブリッジが運営するWebデザイナーのためのギャラリーサイト「ikesai.com」内において、Web業界に特化した「キャリア・求人情報」サービスの運営を開始した。

 15年4月にはプロフェッショナルメディア(トータルブレーンが運営する人材紹介・派遣事業および広告業界特化型情報事業「広告転職.com」「クリエイティブ派遣.com」を新設分割して設立)を連結子会社化した。広告分野における人材事業を強化する。

 また子会社C&R上海と中国のエンターテインメント企業DragonPRCの共同出資で、中国市場に向けたコミック・ゲームの配信取次事業を行う合弁会社(C&R上海の出資比率51%)を立ち上げる。日本企業として初めてスマホ中国1位の小米に日本マンガをプリインストール配信することが決定した。

 4月8日に発表した前期(15年2月期)の連結業績は、売上高が前々期比11.2%増の229億26百万円、営業利益が同18.6%増の12億96百万円、経常利益が同20.9%増の13億20百万円、純利益が同51.5%増の7億44百万円だった。純利益以外は計画をやや下回ったが、クリエイティブ分野(日本)の好調が牽引して4期連続の過去最高業績となった。

 配当予想は同2円増配の年間7円(期末一括)とした。なおROE(自己資本当期純利益率)は17.0%(前々期比3.9ポイント上昇)で、自己資本比率は52.6%(同5.8ポイント上昇)だった。

 セグメント別(内部取引・全社費用等調整前)に見ると、クリエイティブ分野(日本)は同8%増収、同4%営業増益だった。TV番組制作受託が急速に拡大したため制作体制構築が追いつかなかったことや、ゲーム・アプリ分野の制作拡大に伴う拠点拡充投資や一部案件の開発遅延の影響で営業利益は計画を下回ったが、高付加価値のテレビ番組制作受託や大規模Webサイト制作請負などの受注は好調に推移した。前々期に計上した映画制作の大型案件の反動を除くと実質的に同13%増収、同11%営業増益と好調だった。

 クリエイティブ分野(韓国)は同9%増収、同90%営業増益、医療分野は同7%増収、同10%営業増益、その他(4分野)は同38%増収で営業黒字化した。なお新規事業に係る費用先行の営業利益に対するマイナス影響は1億60百万円で、前々期の2億50百万円から縮小した。電子書籍取次は通期で営業黒字化、オンラインクリエイターは下期に営業黒字化したようだ。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)60億92百万円、第2四半期(6月~8月)56億97百万円、第3四半期(9月~11月)55億42百万円、第4四半期(12月~2月)55億95百万円、営業利益は第1四半期5億78百万円、第2四半期3億50百万円、第3四半期1億69百万円、第4四半期1億99百万円だった。

 医療分野が季節要因などで第1四半期および第2四半期の構成比が高く、第3四半期と第4四半期は赤字となる収益構造だ。ただし主力のクリエイティブ分野(日本)は四半期ベースでも、売上・営業利益とも拡大基調である。

 今期(16年2月期)の連結業績見通し(4月8日公表)は、売上高が前期比9.0%増の250億円、営業利益が同15.7%増の15億円、経常利益が同13.6%増の15億円、純利益が同7.5%増の8億円、配当予想が同1円増配の年間8円(期末一括)としている。

 主力のクリエイティブ分野(日本)や医療分野の好調が牽引して増収増益見通しだ。新規事業の収益改善やプロフェッショナルメディアの新規連結なども寄与する。期初時点ではやや慎重な見通しを公表する傾向もあるだけに、通期業績見通しには増額余地があるだろう。

 セグメント別売上の計画は、クリエイティブ分野(日本)が同8%増収、クリエイティブ分野(韓国)が同3%増収、医療分野が同6%増収、その他(4分野)が同23%増収としている。クリエイティブ分野(日本)では既存のエージェンシー事業が順調に拡大し、建築・ファッションクリエイター事業など新規事業の収益改善も進展する。新たにシェフ・エージェンシー事業およびプロフェッサー・エージェンシー事業の立ち上げも予定している。

 中期成長戦略では既存事業で年率10~15%の成長を見込み、新規事業分野の積み上げや収益化も寄与して、18年2月期売上高300億円、営業利益30億円をイメージしている。ロボット、バイオ、ファイナンシャルなどの分野への進出も想定しているようだ。中期的に収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、2月の戻り高値810円から反落後の調整局面が続いている。16年2月期増収増益見通しに対してもネガティブ反応がやや優勢となった。15年2月期実績に比べて16年2月期見通しの伸び率鈍化が嫌気されたようだ。ただし1月安値593円に接近して調整のほぼ最終局面だろう。

 4月27日の終値630円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円74銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS229円00銭で算出)は2.8倍近辺である。

 週足チャートで見ると、13週移動平均線と26週移動平均線を割り込んで調整局面だが、52週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。16年2月期増収増益見通しを再評価して反発のタイミングだろう。

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