【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アートスパークHDは2月高値に接近、収益改善基調や自動走行関連を評価して上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アートスパークホールディングス<3663>(東2)は電子書籍ビューアやグラフィクス制作支援ソフト関連などを展開している。27日の株価は第1四半期(1月~3月)の黒字転換を好感する形で1240円まで急伸し、2月高値1350円に接近する場面があった。取引終了にかけてやや伸び悩んだが日柄調整が完了したようだ。収益改善基調や自動車の自動走行関連というテーマ性を評価して2月高値を試す展開だろう。

 同社は、グラフィクス技術のセルシスとエイチアイが12年4月に統合した持株会社である。

 電子書籍ビューア(フィーチャーフォン向けBS Reader およびスマートフォン向けBS Reader for Browser)やグラフィクスソリューションなどのコンテンツソリューション事業、マンガ・イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO」などグラフィクスコンテンツ制作支援ツールのクリエイターサポート事業、3Dグラフィックス描画エンジンなどのUI/UX事業を展開している。アプリケーション事業は戦略的に縮小している。

 セルシスの電子書籍ビューア「BS Reader」はインフォコム<4348>グループのアムタスの電子書籍配信サービス「ekubostore」や、ソフトバンクモバイルのスマートフォン向け総合電子書籍サービス「スマートブックストア」など多くの電子書籍配信サービスで利用されている。

 4月17日には電子書籍ビューア「BS Reader for Browser」が白泉社の電子書籍配信サービス「ヤングアニマルdensi」に採用されたと発表した。また4月24日には電子書籍ビューア「BS Reader」を利用して集英社のコミックが「コマビュー形式」で配信開始されたと発表している。アムタスの電子書籍配信サービス「めちゃコミック」で閲覧が可能だ。

 セルシスのマンガ・イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT」シリーズは15年3月に出荷本数が累計100万本を超え、15年4月にはセルシスが運営するクリエイター創作活動応援サイト「CLIP」におけるクリエイター登録者数が50万人を超えた。

 なお4月27日に、合わせて260万本の出荷実績を持つマンガ制作ソフト「ComicStudio」およびイラスト制作ソフト「IllustStudio」の販売を6月30日で終了すると発表した。今後はマンガとイラスト両方の制作機能を備えた「CLIP STUDIO PAINT」シリーズに引き継ぐとしている。

 UI/UX事業では、エイチアイの組み込み機器向けUI開発環境「UIコンダクター」が、14年11月にマツダ<7261>のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース=人間と機械が情報をやり取りするための手段・装置・ソフトウェアなどの総称)先行開発環境に採用されている。

 戦略分野に対して積極投資を推進し、13年12月にエイチアイが自動走行関連ベンチャーのZMPの第三者割当増資の一部を引き受けた。また14年2月にエイチアイがエイチアイ関西の株式を取得、14年4月にエイチアイが組み込み機器向けソフトウェア開発のユーアイズデザインの株式を取得して子会社化した。

 なおエイチアイは、15年1月の自動車次世代技術専門展「オートモーティブ ワールド2015:第3回コネクティッド・カー EXPO」に、次世代車載HMIや自動走行関連ベンチャーのZMPとのコラボレーションデモを展示した。また米国で開催された世界最大規模の家電見本市CESにおいても次世代車載HMIをデモ展示した。

 4月24日に発表した今期(15年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比24.1%増の10億08百万円、営業利益が47百万円(前年同期は66百万円の赤字)、経常利益が35百万円(同74百万円の赤字)、純利益が17百万円(同64百万円の赤字)だった。

 大幅増収効果で各利益とも黒字転換した。セグメント別売上動向は、コンテンツソリューション事が同5.5%減収だったが、クリエイターサポート事業がマンガ・イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT」シリーズの好調で同23.0%増収、UI/UX事業がエイチアイ関西とユーアイズデザインの連結も寄与して同69.2%増収だった。

 通期の連結業績見通しは前回予想(2月6日公表)を据え置いて売上高が前期比13.7%増の43億49百万円、営業利益が同81.5%増の1億81百万円、経常利益が同58.1%増の1億48百万円、純利益が同2.1倍の1億25百万円の大幅増収増益としている。配当については無配継続としている。

 通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が23.2%、営業利益が26.0%、経常利益が23.7%、純利益が13.6%と概ね順調な水準である。期初時点で利益は下期偏重の計画だったため、通期上振れの可能性もありそうだ。

 今期の主要施策として、グループ共通コアエンジン開発と製品化への展開、コンテンツソリューション事業における「CLIP STUDIO」技術ノウハウを生かした法人向けグラフィクス関連分野の強化、クリエイターサポート事業における「CLIP STUDIO」シリーズの拡販、国内市場の直販率拡大および海外マーケット立ち上げ、UI/UX事業における市場拡大戦略を掲げている。製品開発の効率化や原価管理の徹底も寄与して収益改善基調だろう。

 株価の動きを見ると、急伸した2月の上場来高値1350円から反落し、概ね1000円~1100円近辺でモミ合う展開だったが、24日発表の第1四半期業績の黒字転換を好感し、27日は1240円まで急伸して2月高値に接近する場面があった。取引終了にかけてやや伸び悩んだが、日柄調整が完了して上値を試す動きのようだ。

 4月27日の終値1141円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS18円80銭で算出)は61倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS348円84銭で算出)は3.3倍近辺である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近して下値を切り上げている。収益改善基調や自動車の自動走行関連というテーマ性を評価して2月高値を試す展開だろう。

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