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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エストラスト目先的な売りが一巡して反発期待
- 2015/4/28 07:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エストラスト<3280>(東1)は山口県や福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。株価は4月9日の戻り高値709円から急反落して、10日と24日には直近安値となる624円まで調整した。16年2月期の営業微減益見通しを嫌気したようだ。ただし620円台では下げ渋る動きであり、目先的な売りが一巡して反発展開が期待される。
山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。一次取得ファミリー型の新築分譲マンション「オーヴィジョン」シリーズ、および新築戸建住宅「オーヴィジョンホーム」の不動産分譲事業を主力として、連結子会社トラストコミュニティが展開する「オーヴィジョン」マンション管理受託の不動産管理事業、および不動産賃貸事業も強化している。
九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指し、福岡県および九州主要都市への進出加速、九州・山口エリアでのマンション年間供給500戸体制構築、山口県での戸建住宅年間供給100戸体制の構築、ストック型ビジネスとなる不動産管理事業でのマンション管理戸数拡大、不動産賃貸事業での収益物件長期保有による収益基盤強化などを推進している。
重点エリアである福岡県での事業展開加速に向けて、13年6月第三者割当増資によって、ふくおかフィナンシャルグループ<8354>傘下の福岡銀行との関係を強化している。14年3月には山口県内最大のオフィス街に立地する下関第一生命ビルディング(山口県下関市)を取得して、不動産賃貸事業の収益基盤を強化した。
なお15年1月には「オーヴィジョン下関海峡テラス」「オーヴィジョン広島パークサイド」「オーヴィジョン飯塚本町」の各プロジェクト、15年4月には「オーヴィジョン新下関駅南」プロジェクトが始動している。
4月9日に発表した前期(15年2月期)の連結業績は、売上高が前々期比16.1%増の119億41百万円、営業利益が同20.1%増の11億78百万円、経常利益が同7.1%増の9億53百万円、純利益が同7.9%増の5億86百万円だった。
配当予想については市場変更記念配当2円を含む年間10円(第2四半期末4円、期末6円)とした。前々期比2円増配である。なおROE(自己資本当期純利益率)は21.3%(前期比8.7ポイント低下)で、自己資本比率は28.5%(同6.3ポイント上昇)だった。
セグメント別に見ると、不動産分譲事業は売上高が同16.4%増の114億55百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同11.0%増の15億93百万円だった。引き渡し戸数は分譲マンションが7物件合計429戸(前々期比55戸増加)、分譲戸建が36戸(同19戸増加)だった。
不動産管理事業は売上高が同91.9%増の2億65百万円、営業利益が同2.7倍の45百万円だった。マンション管理戸数は2139戸(同429戸増加)と着実に増加している。不動産賃貸事業は収益物件が寄与して売上高が同2.1倍の1億90百万円、営業利益が同20.5%増の75百万円、その他(不動産仲介など)は売上高が同86.3%減の29百万円、営業利益が同80.4%減の9百万円だった。
今期(16年2月期)の連結業績見通し(4月9日公表)は売上高が前期比9.7%増の131億円、営業利益が同3.3%減の11億40百万円、経常利益が同1.7%増の9億70百万円、純利益が同2.4%増の6億円としている。配当予想については年間8円(第2四半期末4円、期末4円)としている。前期比では2円減配の形だが、前期の年間10円には第2四半期末の市場変更記念配当2円を含んでいるため、普通配当ベースでは前期と同額である。
不動産管理事業における引き渡し戸数は分譲マンションが370戸(前期比59戸減少)、分譲戸建が65戸(同29戸増加)の計画としている。なお分譲マンション引き渡し計画戸数370戸に対して、255戸が契約済みで契約進捗率は68.9%となっている。また不動産管理事業おけるマンション管理戸数は2627戸(同488戸増加)の計画だ。
分譲マンション引き渡し戸数の減少、分譲マンション建設費の上昇、プロジェクト先行費用などを考慮して営業微減益の見通しだが、売上面では契約済みの分譲マンションおよび戸建住宅の引き渡しが順調に進むだろう。不動産管理事業の管理戸数増加や不動産賃貸事業のポートフォリオ充実も寄与する。
中期経営計画では目標値として16年2月期の新築分譲マンション引き渡し戸数494戸、売上高130億円、営業利益12億50百万円、経常利益12億円、純利益7億20百万円を掲げている。4月9日公表の16年2月期業績会社見通しでは、分譲マンション引き渡し戸数および利益が計画未達成の形となるが、成長市場への事業展開を加速して中期的には収益拡大基調が期待される。
事業展開の重点エリアとしている福岡市では、国家戦略特区に指定されたことも背景として、一段と人口増加傾向を強めることが予想される。日銀の金融緩和やアベノミクス重点戦略「地方創生」も追い風だろう。
なお4月20日に、コーポレート・ガバナンスの一層の強化を図ることを目的として、監査等委員会設置会社に移行すると発表した。5月27日開催予定の第17回定時株主総会における定款変更承認を前提としている。
株価の動き(14年8月15日付で東証マザーズから東証1部に市場変更)を見ると、4月9日の戻り高値709円から急反落して、10日と24日には直近安値となる624円まで調整した。16年2月期の営業微減益見通しを嫌気したようだ。ただし620円台では下げ渋る動きであり、目先的な売りがほぼ一巡したようだ。
4月27日の終値626円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS97円29銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS551円06銭で算出)は1.1倍近辺である。
週足チャートで見ると再び13週移動平均線と26週移動平均線を割り込んだが、14年10月安値599円に接近して調整のほぼ最終局面だろう。日銀の金融緩和や政府の地方創生戦略なども追い風として中期成長が期待され、指標面の割安感や株価の出遅れ感も強い。目先的な売りが一巡して反発展開が期待される。