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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】メディカル・データ・ビジョンは3月安値で底打ちして戻り歩調、ビッグデータ関連の中期成長力を評価
- 2015/4/30 07:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
メディカル・データ・ビジョン<3902>(東マ)に注目したい。医療分野のビッグデータ関連ビジネスを展開して中期成長が期待される。株価は14年12月IPO人気離散後の調整が一巡し、3月安値で底打ちして戻り歩調の展開だ。中期成長力を評価して水準切り上げの展開だろう。なお5月14日に第1四半期(1月~3月)の業績発表を予定している。
03年8月設立、14年12月東証マザーズに新規上場した。医療機関向けに医療情報システムを開発・販売するデータネットワークサービス、および製薬会社向けに各種データ分析ツールを販売するデータ利活用サービスを展開している。
データネットワークサービスで医療情報システムを販売するとともに、2次利用許諾を得た患者の医療・健康関連情報を集積する。そして集積した各種情報をビッグデータとして活用するためのデータ分析ツール・サービスを販売するビジネスモデルだ。医療機関からのシステム利用料・メンテナンス費用、および製薬会社からのサービス対価(システム利用料含む)が収益源である。
データネットワークサービスでは、現在はDPC制度導入対象病院向けのDPC分析ベンチマークシステム「EVE」「EVE-ASP」、および病院経営支援システム「Medical Code」を主力として提供している。
なおDPC制度は急性期病院における入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度である。医療費の適正化、診療データ(DPCデータ)開示による透明性の向上、医療の質向上などを目的として厚生労働省が03年に導入した。DPC対象病院には厚生労働省への診療データ提出が義務付けられているが、より効果的な診療を実施すれば従来に比べて収入が増えるというメリットがある。14年4月1日時点でDPC制度導入病院数は全国で1585病院に達している。
DPC制度導入対象病院向けのDPC分析システム「EVE」(06年8月リリース)は、自院の診療内容や状況を他院と比較しながら分析できるベンチマークシステムである。14年12月期の販売数は58病院で累計導入病院数は705病院となった。14年12月末現在でDPC対象病院の42.4%という圧倒的シェアを獲得している。DPC詳細分析ベンチマークシステム「EVE-ASP」(07年11月リリース)は、実名を公開した自院と他院を比較できるシステムだ。
病院向けの経営支援システム「Medical Code」(09年9月リリース)は、原価管理など病院経営全般に関わる事項を分析できるシステムである。14年12月期の販売数は32病院、累計導入病院数は131病院となった。
14年5月には診療所向け電子カルテソリューション「カルテビジョン」をリリースした。2次利用の許諾を得た個人データをさらに集積するため、治験会社などとのアライアンスも積極活用して、電子カルテソリューション「カルテビジョン」の拡販を強化する。
なお診療データベースの規模は4月24日時点で実患者数が1002万人(14年末比137万人増加)となり、2次利用の許諾を得たデータ提供病院数が189病院(がん拠点病院80病院を含む)となった。民間企業では最大規模のデータベースであり、規模と質において製薬会社などから高い評価を受けている。そして実患者数が1000万人を超えたことで、より多角的で精度の高い分析が可能となる。
製薬会社向けのデータ利活用サービスは、データネットワークサービスで集積した医療情報などの各種データをビッグデータとして活用し、処方数分析、処方日数分析、処方診療科分析、併用薬分析、副作用発生リスク分析などの分析ツール・サービスを提供する。
医療機関における処方実態が把握可能な診療データ分析ツール「MDV analyzer」(12年8月リリース)は、利用する製薬会社数が14年12月期に10社となった。また「MDV analyzer」の分析メニューでは対応できない製薬会社個別ニーズに対するサービスとして「アドホック調査サービス」も提供している。
さらに15年3月には薬剤安全性分析をはじめとした疫学調査支援を目的とした分析システム「MDV analyzer for Academia」を、15年4月には薬剤処方実態に関する基礎分析が簡便に行えるWEB分析ツール「MDV analyzer Light」をリリースした。
現在は先発薬メーカー向けが主力だが、15年2月にはOTC(一般用医薬品)およびH&BC(ヘルス&ビューティケア)分野を対象とした調査分析サービスも開始した。15年4月にはクロス・マーケティンググループ<3675>と共同で、OTC・H&BCメーカー向けに診療統計データと定性データをリンクさせたワンストップ分析サービス「ヘルスオプティマイザー」の提供を開始した。
今後はDPCデータにとどまらず、DPCデータを含めた個人データをさらに集積し、カルテ情報を永続的に取得できるように、電子カルテ・オーダリングシステム・レセプトコンピュータなど基幹システム分野への進出も計画している。病院・診療所への事業展開加速、永続的に取得するインフラおよびデータベース作りを通じて、事業基盤の安定化とともに中期成長を目指す方針だ。
今期(15年12月期)の業績(非連結)見通し(2月9日公表)は、売上高が前期比34.4%増の26億22百万円、営業利益が同0.6%増の2億62百万円、経常利益が同5.5%増の2億62百万円、純利益が同7.8%増の1億46百万円としている。なお外資系製薬メーカーが12月の決算期末に予算を消化する傾向が強いため、利益は第4四半期(10月~12月)に集中しやすい収益構造としている。
システム開発やデータ蓄積セキュリティ強化、電子カルテソリューション拡販や新規事業に関する人件費や費用の増加などで、営業利益はほぼ横ばい見通しだ。ただし主力製品・サービスの好調が牽引して大幅増収見通しだ。事業別売上高はデータネットワークサービスが同43.9%増の17億46百万円、データ利活用サービスが同18.8%増の8億76百万円としている。
データネットワークサービスでは「EVE」および「Medical Code」のさらなる拡販で導入病院数が増加する。診療所向け電子カルテソリューション「カルテビジョン」の本格化も寄与する。
データ利活用サービスでは「MDV analyzer」「MDV analyzer for Academia」「アドホック調査サービス」の拡販に加えて、OTC・H&BC分野の寄与も期待される。
中期成長イメージでは、15年12月期および16年12月期を成長の第3フェーズ(投資フェーズ)として、売上高は毎年30%前後の増加、売上高経常利益率は10%前後の維持としている。電子カルテソリューションを介して個人から同意を得た診療データを蓄積し、個人が診療情報を管理できる仕組みを構築する。さらに蓄積された多様なデータを活用して、利活用サービス領域の成長を加速させる方針だ。
そして17年12月期からは成長の第4フェーズ(投資回収期)としている。蓄積データを活用して利活用サービスのビジネス領域が拡大し、売上高の拡大とともに投資回収を開始する方針だ。中期的に収益拡大基調が期待される。
なお医療関連企業との資本業務提携により、富士フイルムが第1位株主、メディパルホールディングスが第2位株主、シミックホールディングスが第4位株主となっている。
株価の動きを見ると、3月11日の安値5150円から切り返して戻り歩調の展開だ。4月10日はストップ高の7600円まで急伸し、さらに21日には9450円まで上伸する場面があった。その後は目先的な過熱感を強めて上げ一服の形だが、自律調整の範囲だろう。
4月28日の終値7850円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS126円71銭で算出)は62倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS1970円51銭で算出)は4.0倍近辺である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を突破して上伸した。3月安値での底打ちから強基調への転換を確認した形だ。また日足チャートで見るとサポートラインとなった25日移動平均線が接近している。目先的な過熱感が解消して再動意のタイミングだ。中期成長力を評価して水準切り上げの展開だろう。