【どう見るこの相場】正月休みの恒例ルーティーンの極低位株ファンドは令和に入って装いも新たに再考余地
- 2020/1/6 12:01
- どう見るこの相場
「ボーっと生きてんじゃねーよ!」……大発会からチコちゃんに叱られる心配がある。最長9日間の正月休みに、日頃の家族サービス放棄の罪滅ぼしの海外旅行に疲れ果て、久し振りの帰省で親戚、旧友たちと飲み続けてなかなかお屠蘇気分が抜けず、「ねえねえ岡村、このなかで一番、寝正月をした大人ってだあれ」と名指しされる個人投資家である。米国市場は、この間3日間も取引をし、中国の金融緩和策や米国のイラン革命隊司令官殺害などで株価が急騰急落を繰り返したのに、大発会がリスクオンでスタートするのかリスクオフの売り先行となるのか見当がつかず、臨戦態勢がまるで整っていないからだ。
思い起こせば、一昔前の昭和の時代だって、大掃除の手を止めたり、年始回りの振舞酒の酔いがなかなか抜けないなかでも、来し方行く末の株価への反省・展望作業は欠かさなかった。その一つの正月休み恒例のルーティーンといえば、ボロ株ファンドの銘柄セレクションである。ボロ株ファンドとは、大納会の相場表を広げ、大引け値現在で株価の安い順に10銘柄程度を見つくろって組み入れるいわゆるプライベートファンドである。株価が1ケタ、2ケタの銘柄がゴロゴロあって、そのなかから取捨選択して最小売買単位の1000株ずつ組み入れるのだが、その極低位株は、もちろん赤字、無配、債務超過など箸にも棒にもかからない限界企業ばかりである。しかしそんな10銘柄でも、そのうちの1銘柄でも2銘柄でも動意付けば、他の銘柄の超低空飛行をカバーしておつりがくるというマネーゲーム感覚的な極限投資である。
ところが平成に入って、このボロ株ファンドは、冷や飯を食わされ続きとなった。もともとこのボロ株ファンドの成立条件は、系列グループの親会社とメーンバンク、所管官庁のバックアップが十全に機能していることが前提で、この護送船団方式が、経営再建のウルトラC思惑などを強めボロ株の株価動意要因となっていたからだ。平成不況が極まり、親会社やメーンバンク自身が、バブル経済崩壊後の負の遺産処理に苦しみ、所管官庁も、事後調整型への転換を迫られてキバを抜かれた上に、経営者のモラルハザードが糾弾され、株主責任が叫ばれ、企業の生き死にはマーケットが決めることなどとする逆風が強まり、「企業多死時代」が当たり前になってくれば、ボロ株は、株券が紙クズ同然となるリスクと背中合わせで危なくてとって手が出せなくなった。それに、売買単位の100株への集約化で株式併合ラッシュも起こり、該当株も減少した。
では令和ではどうか?昨年末になって金融庁と東証が、シャカリキとなって進めようしていると伝えられた市場改革も、こうした限界企業への市場退場勧告と受け取れないこともなく相変わらず逆風となる。しかしである。昨年12月19日に長谷川コーポレーション<1808>(東1)が、細田工務店<1906>(JQS)に対する株式公開買い付け(TOB)を発表して、100円台下位の細田工務店の株価が、TOB価格を上回って窓を開けて急騰したのをみれば、個人投資家のなかに連綿と息づいてきた「安物買い」のDNAが、またぞろ大きく刺激を受けたことは間違いない。すわ「第2の細田工探し」と沸き立ち、ボロ株ファンドの出番となることは想定範囲内となる。
ただし令和版のボロ株ファンドである。昭和、平成と経由してきただけにそれだけの工夫や装いを新たにすることも不可欠となる。まず業績が黒字で配当を実施している銘柄に限定することが、組み入れ銘柄の最低条件となる。「ボロ株ファンド」が、必然的に「極低位株フアンド」と変わることになる。そのうえでチコちゃんに「ボーと空望みしてんじゃねーよ!」と叱られるのも覚悟して、令和2年相場の運試しをしてみるのも、新春相場らしいイベントとなりそうだ。
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