【テンポイノベーション・原康雄社長に聞く】ストック型の収益が積み重なる独自のビジネスモデルで業績拡大続く

ニーズの高い飲食店の居抜き店舗物件を不動産オーナーから賃借し、飲食店テナントに転貸

 テンポイノベーション<3484>(東1)は、飲食店の店舗物件に特化し、1都3県において、店舗転貸借事業を専門的に行うプロフェッショナルな会社だ。ランニング収益(ストック型の収益)が積み重なる独自のビジネスモデルで業績は最高益を連続更新中。「専門性・希少性の高いノウハウが培われており、株式市場においても中長期的にご評価いただけるのでは」と語る同社・原康雄社長に高収益の源泉などを聞いた。

収益構造は、契約毎に発生するイニシャル収益と、毎月の家賃収入であるランニング収益

――まず、収益構成について教えてほしい。

 【原】 収益の中心になるのは、毎月の家賃収入だ。当社が家主から賃借する賃料に、相場観を考慮したうえで、テナントに貸し出す転貸賃料を設定し、その差益が転貸差益として毎月の収入、ランニング収益になる。

 このほか、契約時に賃料相当の手数料や、居抜き物件の造作売買手数料をいただくので、こちらはイニシャル収入、フローの収益になる。

 こうして「転貸借物件数」が相当数積み上がると、転貸差益としてランニングの収益が不労所得のように積み上がっていくので、非常に安定性、収益性に長けたビジネスモデルといえる。

 ちなみに、この第2四半期末(2019年9月末)の転貸借物件数は1584件(前年同期比249件の増加)に拡大した。直近はさらに拡大して1634件だ。仮に月々の転貸差益が平均7万円だとして、これが2000件になると、ランニングの収益だけで月に1億4千万、年間で17億円、そこに契約毎に発生する、手数料収益や造作売買手数料がプラスされることになる。

 当社の収益構成は、大体このようなイメージでとらえていただければ分かりやすいのではないか。

好不況にかかわらず首都圏では開店したい人が高水準で推移

――事業特性としては「不況型」「好況型」どちらのタイプに。

 【原】 どちらかというと不況のほうがいいかもしれない。というのは、当社事業の片方の面として、閉店する店舗が増えれば、我々からすると仕入れの機会が増えるからだ。

 その反面、不況だと店を出す人が減るのではと思われるが、実際は、店を出したい人の数は減らないというデータがある。約10年前、当社はWeb上で店舗物件の検索ができる「居抜き店舗.com」というサイトをオープンした。このときに、オープン当時で月に500社、年間で6000社の出店希望の新規登録があった。あれから10年経ち、現在までどうなっているかというと、ほぼ同水準で店を出したい人の登録がある。

 わかりやすい例でいうと、東京・渋谷の竹下通りは、かれこれ30年以上現在と同じレベルの混雑が続いている。渋谷駅前にはもっと前から大きな繁華街がある。これと同様、東京都心の店舗物件は、商業地域の規模が大きく、密度も高い分、店を出したい人の数もほぼ変わらず高水準で推移しているとみていいだろう。

 こうしたことは、皆さん普段の生活の中ではあまり意識しないかもしれないが、東京の中心で店舗物件を専門に扱っている人間としては、安定した強い求心力と、高いポテンシャルを常々実感している。

――なるほど、それで「1都3県」というビジネスモデルですね。

 【原】 「1都3県」で飲食店舗物件が16万物件あるとされている。そして、東京都内には約8万5000軒の飲食店があるといわれている。一方、いま我々が借りているのは、「たったの」1634件に過ぎない。物件の仕入れだけを考えても大きなポテンシャルがあるのは明らかであり、当面は、1都3県に集中して事業を広げていきたいと考えている。

「転貸借物件数」7年後に3倍めざす、それでも潜在市場の5%程度

――中期経営計画(2022年3月期まで)を推進中です。

 【原】 中期経営計画の中身自体は、いまの事業が好調なので、その底上げを強める計画としている。現状、新規の契約は年間200件から250件あるが、これを、3年がかりで600件まで底上げする。

 そして、こうした母数を上げるには、人の増員、人の戦力化、これに尽きる。いま、営業担当者はだいたい35名ぐらいの体制だが、これを4年がかりで100名体制にし、順次戦力化を図る。こうした取り組みを続け、7年後の「転貸借物件数」を5500件まで拡大したい。いま1634件のところを3倍以上の5500件までもっていく。

 この5500件という数字には根拠があって、いま「1都3県」に約16万物件、飲食店の店舗物件がある中で、我々の基準で仕入れの対象となる物件は11万件ぐらいある。そのうちの5%が5500件となる。この5%を当社で借り上げて提供する計画だ。

 この計画が実現すると、年間のランニング収益だけで40億円になる。この年間40億円のランニング収益を維持するのに必要な社員の数は190名から200名ぐらいだ。今は80数名だが、収益が年間40億円台の体制になれば、1人あたり営業利益が2000万円クラスとなり、かなり生産性の高い、高収益なビジネスモデルが構築できる。

――中期成長を測る上で投資家が注目すべき勘所、数字や指標を。

 【原】 「転貸借物件数」が基本的な指標となるが、それ以外では、社員の増加数がわかりやすいかもしれない。これまで述べてきたように、いま1634件ある「転貸借物件数」を7年後には3倍以上の5500件までもっていくことなどを進め、ランニング収益だけで年間40億円規模にするには、人員も200名近い規模が必要だ。

 中途採用は1ヵ月に1人ぐらい、新卒は毎年10人前後の採用という計画だ。仕事を覚えるにはそれなりの時間がかかるので、着実に人をふやしていきたい。年間20名から25名ぐらいの増加ペースだろう。当社の仕事は、お店を出したくて店舗物件を探している方に、この物件はどうですか、と紹介する仕事なので、いわゆるセールスマンの仕事とはちょっと異なる。

「株主優待は実質拡充、利益拡大で増配前向き検討」

――業績は絶好調、株主還元についてのお考えは。

 【原】 昨年5月に株主優待の導入を発表し、12月には株式分割を実施したが、100株保有で3000円のジェフグルメカードという優待条件は据え置き、実質的な優待の拡充をした。一方、配当は、配当性向25%から30%を目安に考えている。ストックビジネスの特徴として、利益が毎年、確実に右肩上がりに積み上がって行くことになるが、それに比例して利益が順当に増えていくので、当然増配に繋がり、株主様にとっても魅力があると思う。

事業エリアは東京を中心に1都3県、対象物件はビルイン・路面店

 さきほど、「1都3県」に飲食店の店舗物件が16万物件あると話したが、このうち、年間で8~10%は閉店して新たに入れ替わっている。これは、10年も経つとほぼすべて新しくなっていることになる数字だ。東京では世界中の料理を食べることができ、たとえば、新宿では手に入らないものはないくらいだが、こうした世界的にも突出したエリアで我々は事業を行っている。

 当社は、地方に多くあるロードサイド店などは扱わず、あくまで都心部の駅近の物件で、ビルインと言われる店舗や路面店を中心に、10坪~30坪ほどの小規模物件を中心に、飲食店としての訴求ができ、飲食テナントを募りやすい規模の物件を扱う。幸い、東京にはこうした店舗が非常に多い。

 前期・2019年3月期の営業利益は7億円台に乗り、8年前と比較すると2000倍に拡大した。今期は8億円を超える見込みになっている。「転貸借物件数」を足元の3倍以上の5500件までもっていく計画だと話したが、これは、イメージすれば、ビルオーナーさんがビルを1つ増やしました、翌年また買いました、と毎年増やしていく場合に似ている。家賃収入、転貸差益は比例して増えていく。ちなみにテナント誘致が困難で空家賃が発生する物件は、解約すればいい。我々は所有しないので、所有者責任などのリスクがない。これもメリットになる。

 当社は十数年間、この店舗転貸借事業だけに特化している。東京の店舗物件、都心の店舗物件を借りて貸す、しかも飲食店テナントにターゲットを絞っており、専門性が非常に高いノウハウが培われている会社だと思っている。いわゆる「選択と集中」が一番いい形で発揮できていると思う。そこに会社としての価値を感じており、株式市場においても中長期的にご評価していただけるものと考えている。

――ありがとうございました。(聞き手:本紙・智田拓)

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