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マーチャント・バンカーズは下値固め完了、20年3月期大幅営業増益予想
- 2020/1/29 05:18
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マーチャント・バンカーズ<3121>(東2)は、マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開している。成長戦略として不動産物件のSTOなどブロックチェーン技術を活用した事業を強化する方針だ。また環境関連事業への取り組みも開始する。20年3月期は上方修正して大幅営業増益予想である。収益拡大を期待したい。株価は動意づく場面があっても買いが続かず安値圏だが、下値固め完了して出直りを期待したい。
■マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開
マーチャント・バンキング事業(国内外の企業および不動産向けの投資事業)と、オペレーション事業(宿泊施設・ボウリング場・インターネットカフェ店舗・服飾雑貨店の運営、病院食業務受託)を展開している。19年3月期の営業利益構成比(調整前)はマーチャント・バンキング事業91%、オペレーション事業9%だった。
賃貸用収益不動産およびオペレーション事業によって安定的なキャッシュ・フローを確保し、投資事業やブロックチェーン技術を活用した事業を成長戦略として強化する方針だ。
■マーチャント・バンキング事業は企業・不動産向け投資
マーチャント・バンキング事業は、国内外の企業および不動産向け投資を展開している。企業投資はブロックチェーン・AI(人工知能)・再生医療の3分野を重点的投資分野として、投資先とともに企業価値を創造していく「ハンズオン型」の投資を行う。
企業投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングス、金属コーティング加工のCN Innovationsがある。19年6月にはIVホールディングスと販売合弁会社を設立し、販売合弁会社が静脈認証システム開発のSYNCHROと業務提携した。
不動産投資は、ネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションやホテルを中心に、19年8月時点で24物件・取得価額103億円を保有し、年間7億円の賃料収入を安定的に確保している。
今後は新たな賃貸用不動産取得による収益基盤強化を進めるとともに、不動産特定共同事業法にかかる許可を取得して多様な資金調達手段の確保に取り組む方針だ。また19年9月には内装工事のプレステージプランニングと業務提携した。不動産事業強化に向けてリノベーション事業に取り組む。
■オペレーション事業は活性化・拡大を推進
オペレーション事業は、岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、兵庫県加古川市の加古川プラザホテル運営、愛媛大学医学部付属病院の病院食業務受託、東京都内2店舗のインターネットカフェ運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営を展開している。
今後の戦略としては、大株主アートポートインベストの関連会社アートポートアジア(香港)が著作権を持つ映像コンテンツや、子会社MBKブロックチェーン中心に取り組んでいるブロックチェーン技術を活用して、オペレーション事業の活性化・拡大を推進する。
19年6月には中国の大手医療機関・大承医療投資と、大承医療投資が経営する病院での病院食業務受託に関する業務提携を基本合意した。19年7月にはネットカフェ運営のランシステム<3326>と、映像作品プロモーションタイアップに関して基本合意した。19年8月には大承医療投資と、医療ツーリズムおよびネットカフェの展開でも業務提携の基本合意者を締結した。19年9月には子会社ケンテンがネット販売を開始した。19年12月にはケンテンが、ファッションブランド「NICOLE」の販売プロモーションを行うことでニコルと合意した。
1月20日には、環境関連商材(LED照明・節水装置)製造・販売・設置工事のアビスジャパンとの資本業務提携(株式取得20年3月下旬予定)、および環境関連事業への取り組み開始を発表した。アビスジャパンの持分法適用関連会社化についても協議・検討を進める。
■成長戦略としてSTOなどブロックチェーン技術を活用した事業を強化
成長戦略として子会社MBKブロックチェーンを中心に、不動産などの資産を小口にトークン化して投資希望者を募るSTO(Security Token Offering)など、ブロックチェーン技術を活用した事業(決済・送金等の金融サービス、不動産の流動化、資金調達など)を強化する方針だ。
18年11月ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークスと資本業務提携した。19年1月仮想通貨「Z502」のイノベーション合同会社と資本業務提携した。子会社MBKブロックチェーンがプロモーション活動全般の企画を行い、業務受託料を得る。
また大株主のアートポートインベストと共同で設立した新会社が、ユーロ圏での営業ライセンスを保有する仮想通貨交換所CRYPTOFEXの運営会社CR社(エストニア)を19年5月買収し、19年7月ブランド名をANGOO FinTech(アンゴーフィンテック)に変更した。アーリーワークスのブロックチェーンプラットフォームを採用し、ユーロ圏20ヶ国以上を対象にサービス提供予定である。
19年8月には子会社MBKブロックチェーンがCR社と独占的業務委託契約を締結した。ANGOO FinTechの審査やプロモーションを行い、業務請負収入や配当収入を収益とする。
19年9月には香港のBS証券と、アジアの企業を対象としたSTO(Security Token Offering)ビジネス、および香港証券取引所への上場を目指す日本企業へのアドバイザリー業務に関して業務提携した。BS証券の顧客でSTOによる資産流動化や資金調達を希望する企業に対して、STOに関する情報提供、トークンによる資金調達・流通の場としてのANGOO FinTechの紹介などによって手数料を得る。
19年10月にはエストニアで不動産投資プラットフォームを構築・運営するBOP社と業務提携した。協業してエストニアの不動産物件のSTOに取り組む。また1月14日にはエストニア駐在員事務所開設(20年2月予定)を発表した。
■20年3月期大幅営業増益予想
20年3月期の連結業績予想(1月6日に上方修正)は、売上高が19年3月期比24.0%増の24億円、営業利益が2億80百万円(19年3月期は1億03百万円の黒字)、経常利益が1億60百万円(同4百万円の赤字)、純利益が1億円(同2億82百万円の黒字)としている。12月16日に発表した販売用不動産売却(札幌市、共同住宅、20年2月引き渡し予定)を織り込んだ。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比横ばいの8億96百万円、営業利益が35百万円(前年同期は17百万円の黒字)、経常利益が20百万円の赤字(同32百万円の赤字)、純利益が21百万円の赤字(同2億75百万円の黒字)だった。
マーチャント・バンキング事業は1.1%減収だが賃貸収入が寄与して12.6%増益、オペレーション事業は0.6%増収で4.2倍増益だった。全体としては販管費抑制なども寄与して大幅営業増益だった。純利益は前期計上の投資有価証券売却益の剥落が影響した。
なお子会社MBKブロックチェーンとCR社の独占的業務委託契約による第1号案件に関して、審査手数料およびプロモーション手数料として受領しているコインの会計処理を現在確認中であり、業績に与える影響も精査中としている。通期ベースで収益拡大を期待したい。
■株価は下値固め完了
株価は動意づく場面があっても買いが続かず安値圏だが、下値固め完了して出直りを期待したい。1月28日の終値は301円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS3円58銭で算出)は約46倍、今期予想配当利回り(会社予想の1円で算出)は約0.3%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS125円41銭で算出)は約2.4倍、時価総額は約84億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)