【どう見るこの相場】たまたま株高になる「不思議な株高」はあるが、株安は悪材料があって売り込まれた結果

どう見るこの相場

■1月月間、2月第1週の「谷深し」銘柄は逆もまた真で「山高し」に期待

 「山高ければ谷深し」とは、誰も疑問を差し挟まない自然の摂理、物理法則みたいなものだろう。兜町でも、この株価変動の緩急大小と、反動の緩急大小が比例する相場シーンはしばしば見受けられる。この足元の典型例は、新型コロナウイルスの感染拡大で株価が急動意となった防疫関連株である。代表株の川本産業<3604>(東1)は、今年1月相場で上場来高値4000円まで8.5倍と大化けし全市場ベースの月間上昇率ランキングの断トツであった。「山高し」である。ところが、2月相場入りとともに3日連続のストップ安と売られ1495円へ突っ込み、上場来高値から6割超安となり、7日大引けでは1700円までリバウンドしたものの、2月第1週の週間値下がり率ランキングでは、ワーストワンとなってしまった。「谷深し」そのもだ。

 今回、当コラムでテーマとするは、この防疫関連株ではない。「山高ければ谷深し」が間違いないのなら、その反対の投資スタンスも成り立つのかどうかである。「逆もまた真」で「谷深ければ山高し」となるかのケーススタディである。兜町ではしばしば、急落銘柄の自律反発を狙う逆張り、リターン・リバーサルが有効な投資スタンスとして通用しており、戻りを試す投資家を集めてきた。ところが2月相場入りとともに、自律反発どころかまさしく「山高し」で上場来高値を更新するケースが、突発した。米国のニューヨーク・ダウ工業株30種平均である。1月31日に中国への渡航禁止・退避勧告の規制を嫌って603ドル安と昨年8月以来、半年ぶりの大幅下落となったにもかかわらず、その突っ込みから手の平を返すように2月5日に上場来高値を更新してしまった。前週末7日は一時、322ドル安と急反落したが、大引けでは277ドル安と持ち直している。

 こうなると国内株でも「谷深ければ山高し」にトライしたくなるのが、投資家心理だろう。そして同様に2月相場入りとともに「谷深ければ山高し」を試した銘柄も出現した。タマホーム<1419>(東1)である。同社株は、今年1月の東証第1部月間値下がり率ランキングでは第17位と売られたが、2月4日には今3月期業績の上方修正と増配を発表して一時22%超と急伸した。また、2回目の業績下方修正と減配で昨年来高値8360円から2回のストップ安を見舞われ5290円まで突っ込み、1月月間の東証1部値下がり率ランキングの第19位となったSCREENホールディングス<7735>(東1)も、国内大手証券の目標株価引き上げをテコに2月相場では6740円までリバウンドし急落幅の半値戻し目前となった。

 この2銘柄をみれば「谷深し」銘柄へ即アプローチしたくなるが、ここではプロ野球の智将・野村克也氏の名言を参考としたい。同氏は、「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」と、勝ち試合にはラッキーな勝ちはあるが、負け試合にはそれだけの負けるべく理由があって負けると勝負事の厳しさを看破した。この勝負哲学を敷衍すれば株価の高安も同様で、ラッキーでたまたま株高になる「不思議な株高」があるが、株安は、それだけの悪材料があって売り込まれた結果であり、「不思議な株安」はないことになる。しかし株安銘柄のなかには、売り材料が不確かだったり、その材料でそこまで売り込むのかという銘柄がないこともない。野村克也流にいえば「不思議な株安」銘柄となる。

 例えば前記のタマホームである。確かに消費税増税の影響懸念はあるものの、今期業績は2ケタ増収増益の最高業績ペースで推移し、自己株式取得・消却も続けた。「不思議な株安」銘柄そのもので、その反証として業績の上方修正と増配が突き付けられ売られ過ぎとしてリバウンドしたことになる。同様に東証1部の1月の月間値下がり率ランキングの50位までにランクされた銘柄から資格条件十分な「不思議な株安」銘柄をセレクトすることも、大いに期待が持てることになるはずだ。2月第1週の「不思議な株安」銘柄とともにリサーチした。

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