メディカル・データ・ビジョンは急反発、20年12月期増収増益予想

 メディカル・データ・ビジョン<3902>(東1)は、民間最大級の大規模診療データベースを活用して医療分野ビッグデータ関連ビジネスを展開している。19年12月期は計画超の大幅増収増益だった。20年12月期も増収増益予想である。収益拡大を期待したい。株価は急反発の動きとなった。出直りを期待したい。

■医療分野ビッグデータ関連ビジネス

 医療分野のビッグデータ関連ビジネスとして、医療機関向けに医療情報システムを開発・販売するデータネットワークサービス、および製薬会社向けに各種データ分析ツール・サービスを販売するデータ利活用サービスを展開している。19年12月期の事業別売上構成比はデータネットワークサービスが38%、データ利活用サービスが62%だった。データ利活用サービスの構成比が上昇基調である。

 データネットワークサービスで医療機関向けに医療情報システムを販売するとともに、2次利用許諾を得た患者の医療・健康関連情報を集積する。そして集積した各種情報を分析し、データ利活用サービスとして製薬会社向けに提供するビジネスモデルだ。20年1月末の大規模診療データベース実患者数は19年12月末比31万人増加の3015万人となった。

 データネットワークサービスは主軸をDPC分析のEVEから、病院向け経営支援のMedical Codeにシフトするとともに、病院向けデジタルソリューションのCADA-BOXの導入を推進している。CADA-BOXは患者自身が診療情報の一部を保管・閲覧できるWEBサービスのカルテコと、患者が自由に支払条件を設定できる医療費後払いサービスのCADA決済を、電子カルテと連動させて活用するサービスである。19年12月末時点の導入数はEVEが802病院、Medical Codeが281病院、CADA-BOXが7病院(準備中を含めると計12病院)だった。

 データ利活用サービスはオーダーメード調査・分析サービスのアドホックを主力としている。

 収益は医療機関からのシステム利用料・メンテナンス費用、製薬会社からのサービス対価(システム利用料含む)である。またデータ利活用サービスにおいて下期偏重の傾向がある。

■事業領域拡大

 中期成長戦略として、2次医療圏344病院へのCADA-BOX導入、データ基盤のさらなる拡大、データ利活用ビジネスの拡大を推進している。事業領域拡大に向けて、17年1月医師向けサービスのDoctorbookを子会社化、17年6月SMO業務のコスメックス(現MDVトライアル)を子会社化、19年12月31日(みなし取得日)医療系システム開発のメディカルドメイン(MDI)を子会社化した。

 また18年9月には未病領域データ事業を発表している。DPCデータからリアルタイム診療データ(個人から同意を得てリアルタイムに集積する診療情報、健診・検診情報)に軸足を移行しながら、DPCデータとリアルタイム診療データを相互に集積した「さくらデータバンク」として成長を推進する。新たなデータ取得方法(包括データ利用契約)を開始して、19年12月期末のリアルタイム診療データは80万人規模となった。

■19年12月期は計画超の大幅増収増益、20年12月期も増収増益予想

 19年12月期連結業績は、売上高が18年12月期比12.5%増の40億26百万円、営業利益が2.3倍の8億09百万円、経常利益が2.3倍の8億04百万円、純利益が8.0倍の5億54百万円だった。アドホック調査サービスが牽引し、計画超の大幅増収増益で過去最高を更新した。

 データネットワークサービスの売上高は3.2%増の15億14百万円だった。CADA-BOXの受注苦戦などで小幅増収にとどまった。子会社のDoctorbookは歯科領域サービスが伸長し、Clinical Cloud by MEDIPALサービスを開始した。データ利活用サービスの売上高は19.0%増の25億11百万円だった。アドホック調査サービスが20.5%増収と大幅伸長した。子会社のMDVトライアルはデータ活用の治験事業を開始した。

 コスト面では人件費が増加したが、増収効果に加えて、18年12月期に計上した商品評価損の一巡も寄与して大幅増益だった。なお特別損失に投資有価証券評価損1億27百万円を計上している。

 20年12月期連結業績予想は、売上高が19年12月期比19.2%増の48億円、営業利益が11.2%増の9億円、経常利益が11.9%増の9億円、純利益が8.2%増の6億円としている。

 過去最高予想である。重点施策としてリアルタイム診療データの規模拡大(150万人超)や、グループ各社商品の有機的結合を推進し、両事業とも伸長見込みとしている。子会社の業績拡大(MDVトライアルの治験、DoctorbookのClinical Cloud by MEDIPALサービス、MDIの連結)も寄与する。収益拡大を期待したい。

■株主還元方針を変更

 20年12月期から株主還元方針を変更する。20年12月期末に初配当3円(配当性向20%以上程度目途)を実施するとともに、自社株取得(上限60万株・6億円、取得期間20年2月12日~20年9月30日)を実施する。一方で株主優待制度は廃止する。

■株価は急反発

 株価は昨年来安値圏から急反発の動きとなった。出直りを期待したい。2月14日の終値は1018円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS14円99銭で算出)は約68倍、今期予想配当利回り(会社予想の3円で算出)は約0.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS99円68銭で算出)は約10倍、時価総額は約407億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る