アスカネットは調整一巡、20年4月期減益予想だが上振れ余地

 アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工と写真集制作を主力として、葬祭市場をIT化する葬Techや、空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)の事業化を推進している。20年4月期は一時的費用で減益予想だが、上振れ余地がありそうだ。AI事業の本格受注・量産化も期待したい。株価はモミ合い下放れの形となって昨年来安値圏だが、調整一巡して反発を期待したい。なお3月6日に第3四半期決算発表を予定している。

■写真加工関連を主力として、空中結像AIの事業化を推進

 葬儀社・写真館向け遺影写真加工のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力として、既存分野では葬祭市場をIT化する葬Tech、新規分野では空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)の事業化を推進している。19年4月期の売上構成比はMDS事業40.3%、PPS事業57.5%、AI事業2.2%だった。

 MDS事業は葬儀関連、PPS事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場である。いずれも景気変動の影響を受けにくい特性や、下期の構成比が高い季節特性がある。

 なお17年2月人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボットと資本業務提携、18年3月全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社と資本業務提携している。

 また20年2月には、AIカメラソリューション開発のAWLに出資して資本業務提携した。デジタルサイネージ分野でASKA3DプレートとAIカメラを組み合わせた新製品開発も目指すとしている。

■MDS事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進

 MDS事業は、専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。

 19年4月期末のハード設置件数は2484ヶ所、19年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が約35万枚、電照焼増枚数が約14万枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため、市場シェアは約30%(1位)である。

 成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」の拡販、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo」の浸透など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。19年12月には葬祭業者向けクラウド型印刷物作成ツール「SoSign(葬サイン)」の提供を開始、20年1月には葬儀社用Webサイト生成ツール「お葬儀.jp」の提供を開始した。

■PPS事業はOEMが拡大

 PPS事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するサービスで、高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力としている。19年4月期時点で約4290社の写真館向けなどに、BtoBとBtoCの合計(OEM除く)で年間約40万冊提供している。

 またNTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」に、フォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。OEMを中心とする需要拡大に対応するため、19年8月本社隣接地の新工場が稼働した。

■樹脂製ASKA3Dプレートは本格受注・量産期待

 空中結像のAI事業は、プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色として、サイネージ、車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一し、本格量産(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を目指している。

 高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレート、および大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートの開発・製造・販売を進めている。新バージョンの樹脂製ASKA3Dプレートは、国内外合計約200社に試作品を販売し、顧客側で組込製品化の検討を進めている。

 生産面では19年5月、一定水準以上の品質の安定と歩留まりの向上を実現できたため、月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行した。さらに一部工程の生産設備を増強することで、比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できるとしている。

 19年10月にはメルセデス・ベンツ日本のブランド発信拠点と体験施設にASKA3Dプレートが採用された。本格受注・量産化への期待が高まる。

■20年4月期減益予想だが上振れ余地

 20年4月期業績(非連結)予想は、売上高が19年4月期比7.0%増の67億38百万円、営業利益が5.1%減の8億24百万円、経常利益が5.1%減の8億29百万円、純利益が9.0%減の5億45百万円としている。配当予想は1円減配の10円(期末一括)である。

 セグメント別売上高計画は、MDS事業が3.3%増の26億22百万円、PPS事業が8.2%増の39億16百万円、AI事業が46.0%増の2億円である。MDS事業は遺影写真加工収入の着実な積み上げや葬儀演出ツールの伸長を見込む。PPS事業はOEMが牽引して増収だが、コスト面で設備移設関連の一時的費用や減価償却費などの増加を見込んでいる。AI事業は量産案件受注に向けてサンプル拡販を推進する。計画値には量産案件を含んでいない。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比7.9%増の31億42百万円、営業利益が5.6%増の3億23百万円、経常利益が4.6%増の3億24百万円、純利益が8.3%増の2億28百万円だった。

 MDS事業(1.3%増収・1.8%減益)は画像処理部門の人員増強に伴う人件費増加で微減益だった。PPS事業(13.6%増収・9.3%増益)は、売上がOEMの伸長などで好調に推移し、本社隣接地の新工場完成・稼働に伴う減価償却費の増加、移転費用の発生、人件費の増加などを吸収した。

 通期はMDS事業、PPS事業とも堅調に推移して増収だが、新工場稼働(19年8月)に伴う設備移設関連の一時的費用が発生し、減価償却費、人件費、開発費などの増加も考慮して微減益予想としている。ただしPPS事業のOEMの想定以上の伸長などで第2四半期累計が増益と順調であり、通期上振れ余地がありそうだ。収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年4月末の株主対象

 株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。

■株価は調整一巡

 株価はモミ合いから下放れの形となって昨年来安値圏だが、調整一巡して出直りを期待したい。2月26日の終値は1332円、今期予想PER(会社予想EPS32円36銭で算出)は約41倍、今期予想配当利回り(会社予想の10円で算出)は約0.8%、前期実績PBR(前期実績BPS322円49銭で算出)は約4.1倍、時価総額は約233億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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