【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ラクーンは調整一巡して切り返し、16年4月期も増収増益基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ラクーン<3031>(東マ)は企業間電子商取引(EC)サイト運営を主力として事業領域拡大戦略を加速している。株価は急伸した4月高値1196円から一旦反落したが、900円近辺で調整一巡感を強めている。切り返しのタイミングのようだ。16年4月期も増収増益基調が予想され、中期成長力を評価して上値を試す展開だろう。

 アパレル・雑貨分野の企業間ECサイト「スーパーデリバリー」運営を主力として、クラウド受発注ツール「COREC(コレック)」事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービス「Paid(ペイド)」事業、売掛債権保証事業など周辺分野にも事業領域を広げている。

 14年12月にはアパレル大手のワールドが「スーパーデリバリー」に出展した。そして15年1月末時点の「スーパーデリバリー」会員小売店数は14年4月期末比2957店舗増加の4万3398店舗、出展企業数は同109社増加の1057社、商材掲載数は同1115点減少の45万2000点、クラウド受発注ツール「COREC」ユーザー数は1620社だった。

 M&Aやアライアンスも積極活用している。14年11月に子会社トラスト&グロースがスタンドファームと業務提携した。スタンドファームのクラウド請求書管理サービス「Misoca」登録業者に対して売掛保証サービスを提供する。また14年12月にはトラスト&グロースがトラボックスと業務提携した。荷物を運んで欲しい人とトラック運送業者を結ぶオンライン物流サービス「トラボックス」登録会員に対して運賃全額保証サービスを提供する。

 15年3月には「Paid」加盟企業数が1200社を突破した。当初はアパレルや雑貨の卸メーカーがメインの加盟企業だったが、サービス改良によって業種・業態を問わず、あらゆるBtoB向けサービスに導入できるようになり、グラフィックが運営する「印刷の通販グラフィック」(15年1月現在で27万件の法人・個人会員登録)、GMOコマースが運営するO2O事業、三菱自動車工業<7211>の「三菱自動車 電動車両サポート」にも導入された。

 4月7日にはクラウド受発注ツール「COREC」について、14年3月のサービス開始から1年でユーザー数が2000社(バイヤー1191社、サプライヤー809社)を突破したと発表している。会員ユーザーの業種別構成比を見ると、雑貨20%、アパレル13%、飲食料14%、IT12%、建築・設備3%、その他38%となっている。

 また4月15日には「COREC」と「Yahoo!ショッピング」の連携を発表した。発注にかかる作業時間や手間が大きく改善されるため「Yahoo!ショッピング」出店者のショップ運営業務が効率化される。また「COREC」利用頻度向上にも繫がるとしている。

 なお企業間ECサイト「スーパーデリバリー」流通に係る売上高に関して、従来は出展企業と会員小売店が「スーパーデリバリー」を通じて取引した金額を売上高計上(総額表示)し、商品仕入高も売上原価に計上していたが、15年4月期から、商品仕入高を売上高と相殺して表示する方法(純額表示)に変更した。この変更によって「スーパーデリバリー」流通に係る売上高は出展企業から徴収するシステム利用料売上となる。従来の総額表示に比べて見掛け上の売上高は減少するが利益に変更はない。

 前期(15年4月期)連結業績見通し(1月15日に増額)は売上高が前々期比6.1%増の20億50百万円、営業利益が同31.6%増の3億25百万円、経常利益が同33.1%増の3億30百万円、純利益が同62.6%増の2億円、配当予想(1月15日に増額)が同2円55銭増配の年間6円80銭(期末一括)としている。

 企業間ECサイト「スーパーデリバリー」での取引量が拡大し、売掛債権保証事業の保証残高も順調に増加する。利益面では「スーパーデリバリー」運営におけるコスト構造改革が順調に進展し、売掛債権保証事業で保証履行が抑制されていることも原価押し下げ要因となる。また「Paid」事業も加盟企業数増加に伴って収益改善が進展している。

 第3四半期累計(5月~1月)は前年同期比5.9%増収、同38.3%営業増益、同39.8%経常増益、同50.2%最終増益だった。EC事業「スーパーデリバリー」流通額が同3.6%増収と好調に推移し、売掛債権保証事業も順調に拡大した。また「Paid」事業の赤字縮小も寄与した。そして通期見通しに対する進捗率は売上高74.0%、営業利益78.2%、経常利益77.6%、純利益79.5%と順調な水準だった。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(5月~7月)4億90百万円、第2四半期(8月~10月)5億06百万円、第3四半期(11月~1月)5億22百万円、営業利益は第1四半期57百万円、第2四半期93百万円、第3四半期1億04百万円と拡大基調である。

 今期(16年4月期)も増収増益基調が予想される。ECサイト「スーパーデリバリー」流通額が増加基調であり、14年9月ビジネスプラン課金開始したクラウド受発注ツール「COREC」事業の収益寄与が本格化する。そして売掛債権保証事業や「Paid」事業の一段の収益改善も期待される。ストック型の収益構造であり、中期的にも収益拡大基調だろう。

 なお2月25日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限28万株、取得価額総額の上限2億円、取得期間15年2月26日~4月30日)については4月3日に終了した。累計の取得株式総数は25万6800株、取得価額総額は1億9999万2200円だった。

 株価の動きを見ると、15年4月期大幅増益見通しや自己株式取得などを好感し、13年11月993円を突破して4月高値1196円まで急伸した。その後は過熱感を強めて利益確定売りで一旦反落し、5月1日に860円まで下押す場面があった。ただし900円近辺では調整一巡感を強めている。

 5月7日の終値888円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS34円17銭で算出)は26倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間6円80銭で算出)は0.8%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS264円17銭で算出)は3.4倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を割り込んだが、週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近して切り返しのタイミングのようだ。16年4月期も増収増益基調が予想され、中期成長力を評価して上値を試す展開だろう。

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