トランザスは底値圏、21年1月期黒字予想

 トランザス<6696>(東マ)はIoT端末・機器のファブレス型メーカーで、ストック型収益構造への転換を推進している。21年1月期黒字予想である。収益改善を期待したい。株価は地合い悪化で上場来安値を更新したが底値圏だろう。反発を期待したい。

■IoT端末・機器のファブレス型メーカー

 STB(受信端末装置)やウェアラブル端末など、IoT端末(ターミナル)・機器を製造販売するターミナルソリューション事業を展開している。ファブレス型メーカーで、製造を台湾企業に委託している。販売はSIer・商社・ソフトウェア開発事業者などのVAR(付加価値再販パートナー)企業を通じて行う。

 VOD(ビデオ・オン・デマンド)などの映像受信端末装置であるSTBを、特定の機能に絞った単機能型の低価格コンピュータとして、ホテルでフロントが一括管理するルームコントロールシステムなどに活用していることが特徴である。ホテル・民泊・飲食業、物流業、製造業などの分野向けを中心に事業展開している。

 なお20年5月1日付(予定)で、メディアプラットフォームを展開している子会社のピースリー(従来は持分法適用関連会社だったが、2020年1月期第4四半期から連結子会社化)を吸収合併する。ピースリーはデジタルガレージ<4819>およびダリアと、20年1月ヘアーサロン向け番組配信事業で業務提携している。

■ストック型収益構造への転換を推進

 20年1月期売上構成比は、IoTソリューション64%(ホテル・飲食等のHospitality市場52%、その他のEnterprise市場12%)、IT技術(システム保守・開発)18%、ITサービス(各種ITサービス提供)18%だった。

 端末・システム販売のフロー型収益構造から、サブスクリプションモデル(月額課金)のストック型収益構造への転換を推進し、次世代型VOD、ウェアラブル端末、IoTコントローラー、ホスピタリティロボット、デジタルサイネージなどを開発・育成している。

 ホテル向け次世代型VOD「NGH」は、宿泊客に対して高いホスピタリティを提供するコンテンツ配信システムで、19年10月提供開始した。そして20年2月には、宿泊施設向け広告配信プラットフォーム「NGH for Premier Ads」を提供開始した。館内インフォーメーションと客室サービス等のコンテンツを一元管理する。また旅館こうろでも観光チャネルの実証実験を開始した。

 IoTルーム・コントローラー「AIRUX」は、客室の家電制御や監視を可能にして消費エネルギー削減を図るAI装置である。最初のプロジェクトとして、シンガポールのOTTO社の照明装置と組み合わせてフォルクスワーゲン・シンガポールに導入された。照明・エアコンの消費エネルギー削減装置として、シンガポールの子会社TAPが21年1月期から東南アジアで本格展開を開始する。

 民泊向け自動チェックイン装置「SHISA」は、市況変化で投資対効果に陰りが見えたため日本の民泊市場への展開を一旦停止し、需要の高い東南アジア市場の入退室装置への転換を推進する。

 ホスピタリティロボットは、ホテルやレストラン等のホスピタリティ業務の無人化を目指している。19年2月には東京都の都営地下鉄施設内における案内・警備ロボット実証実験に警備ロボット「TRA-DeCA」が採用された。

 次世代デジタルサイネージのコンテンツ配信・プラットフォーム「Magic Spot」は、スティックをTV・ディスプレイに挿入するだけでデジタルサイネージとして使用できる。19年11月にはサブスクリプションモデルで提供開始した。大型LEDとの組み合わせなどで市場が拡大している。

 また20年1月にはシンガポールの子会社TAPが、東南アジアの商業施設サイネージを展開するシンガポール企業に対して、センサー連動型サイネージ2000台を納品し、東南アジアでもサイネージ配信ビジネスを開始した。

 ウェアラブル端末「Cygnus」はカメラ、無線LAN、マイク・スピーカを搭載し、バーコード、QRコード、NFCタグの読み取りも可能なウェアラブル端末である。トランシーバ端末、工場ライン管理端末、レストラン向けオーダー端末、ロジスティクス向け端末、商品仕分端末としての導入を推進する。

■21年1月期黒字予想

 20年1月期の連結業績は、売上高が19年1月期比12.8%増の7億83百万円、営業利益が1億03百万円の赤字(19年1月期は1億44百万円の赤字)、経常利益が1億02百万円の赤字(同1億46百万円の赤字)、純利益が1億22百万円の赤字(同1億66百万円の赤字)だった。

 ピースリーが計画していたデジタルサイネージ端末の販売を、固定資産として保有してサービス提供する形に変更した。さらに売上・利益が内部取引として消去されたため、売上高、利益とも計画を下回った。

 21年1月期連結業績予想は、売上高が20年1月期比97.3%増の15億45百万円、営業利益が81百万円の黒字(20年1月期は1億03百万円の赤字)、経常利益が81百万円の黒字(同1億02百万円の赤字)、純利益が68百万円の黒字(同1億22百万円の赤字)としている。

 吸収合併(20年5月1日付予定)するピースリーのメディアプラットフォームビジネスが牽引して大幅増収・黒字予想である。事業別売上高の計画は、IoTソリューションが4億73百万円(Hospitality市場が2億30百万円、Enterprise市場が2億43百万円)、IT技術が1億73百万円、ITサービス・メディアプラットフォームが8億99百万円としている。収益改善を期待したい。

■株価は底値圏

 株価は地合い悪化で上場来安値を更新したが底値圏だろう。反発を期待したい。3月30日の終値は568円、今期予想連結PER(今期予想連結EPS19円77銭で算出)は約29倍、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS341円58銭で算出)は約1.7倍、時価総額は約18億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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