JSPは売り一巡

 JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品大手である。成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなど、高機能・高付加価値製品の拡販を推進している。当面は新型コロナウイルス感染症拡大による世界経済収縮の影響が懸念材料となるが、中期的に収益拡大を期待したい。株価は安値圏だが売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。

■発泡プラスチック製品大手、高機能・高付加価値製品を開発・拡販

 発泡プラスチック製品大手である。押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。

 19年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業36%、ビーズ事業59%、その他5%、営業利益構成比(連結調整前)は押出事業39%、ビーズ事業59%、その他2%だった。自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)など高機能・高付加価値製品の拡販を推進している。

 収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。

■自動車部品用ピーブロック拡販など成長戦略推進

 中長期の目標数値は、新中期経営計画「Deeper&Higher2020」で21年3月期売上高1380億円、営業利益110億円、営業利益率8%、経常利益113億円、純利益79億円、長期ビジョン「VISION2027」で28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。

 21年3月期目標の前提条件は為替が1米ドル=113円、1ユーロ=133円、1人民元=17円、原油価格(ドバイ)が1バーレル=55米ドルである。セグメント別目標数値は、押出事業の売上高が467億64百万円で営業利益が33億76百万円、ビーズ事業の売上高が850億43百万円で営業利益が83億93百万円、その他事業の売上高が61億93百万円で営業利益が1億80百万円である。新規事業は計画に含めず、外数として売上高30億円を目指す。

 基本方針は、差異化戦略(押出事業のスチレンペーパー、ミラボード、FPD関連保護材ミラマットエース、高断熱材ミラフォーム、ビーズ事業のピーブロック、エレンボールNEOなど)の推進、成長戦略(4つの成長エンジン=自動車部品、建築住宅断熱材、FPD関連保護材、新たな事業領域)の推進、人材育成やコーポレートガバナンス強化など経営基盤の強化としている。

 3年合計の設備投資額は約300億円、減価償却費は約180億円の計画である。国内外での自動車部品用ピーブロックの拡販・用途開拓を目指し、生産能力を増強する。

 自動車部品用ピーブロックは、自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大し、日系自動車メーカーのシートコア材などへの採用が広がっている。その他用途を含めたピーブロック販売数量は、21年3月期に18年3月期比約27%増を見込んでいる。中期成長ドライバーとして期待される。

 省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、19年1月関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成した。これにより東西2大生産拠点体制を構築した。

 新製品ではミラフォーム畳(衝撃緩和型畳床)「ふわり」を発売した。またデンカ<4061>と共同開発した建築構造物向け軽量・不燃ボード「スチロセメン」の早期製品化を目指している。

■20年3月期減益予想

 20年3月期連結業績予想(10月29日に下方修正、1月31日に2回目の下方修正)は売上高が19年3月期比3.4%減の1122億円、営業利益が12.4%減の48億円、経常利益が14.3%減の50億円、純利益が11.8%減の38億円としている。純利益は第4四半期に計上予定の特別損失(減損処理)4億円も影響する。配当予想は19年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)である。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比2.9%減の855億61百万円、営業利益が11.2%減の43億08百万円、経常利益が14.0%減の43億67百万円、純利益が15.6%減の33億07百万円だった。

 高付加価値製品の販売数量は堅調だったが、全体的な市況悪化、食品トレー向けなど汎用品の需要減少、減価償却費の増加などで減益だった。押出事業は5.4%減収で13.5%減益、ビーズ事業は1.0%減収で2.7%減益だった。

 当面は新型コロナウイルス感染症拡大による世界経済収縮の影響が懸念材料となるが、中期的に収益拡大を期待したい。

■株価は売り一巡

 株価は安値圏だが売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。4月15日の終値は1346円、前期推定連結PER(会社予想連結EPS127円48銭で算出)は約11倍、前期推定配当利回り(会社予想50円で算出)は約3.7%、前々期実績連結PBR(前々期実績連結BPS2691円76銭で算出)は約0.5倍、時価総額は約423億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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