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フライトホールディングスは下値切り上げ
- 2020/4/23 04:40
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
フライトホールディングス<3753>(東2)は電子決済ソリューションを主力としている。新型コロナウイルス感染症拡大と緊急事態宣言による業績への直接的な影響は限定的だろう。有望案件が目白押しであり、中期的に収益拡大を期待したい。株価は3月の安値圏から下値を切り上げている。出直りを期待したい。
■電子決済ソリューションが主力
子会社のフライトシステムコンサルティングがシステム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、および電子決済ソリューションなどのサービス事業、子会社のイーシー・ライダーがB2B(企業間取引)ECサイト構築システムのECソリューション事業を展開している。
19年3月期のセグメント別売上高構成比は、C&S事業が55%、サービス事業が35%、ECソリューション事業が10%だった。収益はサービス事業の大型案件によって変動する傾向が強い。
■サービス事業は電子決済ソリューションを展開
サービス事業は電子決済ソリューション分野で、スマートデバイス決済専用アプリのペイメント・マイスターと、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末のIncredistシリーズを展開している。
ペイメント・マイスターは、iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末として利用する大企業向けBtoB決済ソリューションである。ホテル・レストランなどに幅広く導入されている。
Incredistシリーズは、EMV(接触型ICクレジットカード)決済、コンタクトレスEMV(非接触型ICクレジットカード)決済に対応し、コンタクトレスEMVはMastercardなど国際6ブランドの認定が完了している。Incredist Premiumは全国のソフトバンクショップおよびドコモショップに導入されている。国内電子マネー決済ではNTTドコモのiDに対応し、19年7月にはSuicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が完了した。
今後の戦略製品として、据置・モバイル兼用型のマルチ決済装置Incredist Trinity、およびIncredist Trinity Miniの販売を推進している。ソフトバンク向けのIncredist Trinity Miniは19年度~20年度に順次導入予定である。なおソニー銀行のSony Bank WALLETのTVCMに、Incredist Trinityが使用されている。
自動精算機分野では、米国ID TECH社製VP6800を、国内の飲料自動販売機や駐車場無人自動精算機などに接続するためのマルチ決済端末VP6800・IFCを製品化している。
■電子決済ソリューションはキャッシュレス化政策が追い風
電子決済ソリューションはキャッシュレス化政策の流れが追い風となる。改正割賦販売法施行によって磁気カード対応からICカード対応に移行することが義務付けられたため、一般の店舗、タクシーや電車の券売機、屋外に設置されている自動販売機やコインパーキング精算機など、クレジットカードを取り扱う全ての業種で対応が必要となった。また訪日観光客の決済利便性向上も目的として、国策として非接触クレジットカード決済(正式名称コンタクトレスEMV、通称NFC決済)の普及促進が図られている。
こうした状況も背景として、決済種類・ブランドの拡大、電子マネーブランドの拡大、決済端末製品ラインアップの拡充と拡販、決済パートナーの拡大、ストック型ビジネスモデルの拡大など、電子決済ソリューションの展開を加速している。
18年5月には三井住友カードと包括加盟店契約を締結した。三井住友カードの代行として加盟店開拓・契約締結・管理を行い、継続的に手数料収入が得られるストック型収益となる。中堅カード会社との接続など決済パートナーの拡大を推進する。
19年6月にはGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)と接続開始した。GMO-FGを通じた決済ソリューションの第一弾として、自動精算機向けVP6800・IFCの拡販を展開する。20年後半からの販売本格化が期待される。
19年7月には、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>のタクシー配車アプリMOVの車内決済システムとしてincredist Premiumが採用された。DeNA向け納品は20年春頃から本格化する見込みである。さらにMOVと日本交通の配車アプリJapan Taxiが統合することになり、製品供給対象のタクシー台数が大幅に増加する見込みとなった。
またキャッシュレス決済需要が高まっている中小店舗・商店街への対応として、各地の商店街連合会や各種団体と連携して決済代行事業を行っているJASPASと資本提携し、決済ソリューションの展開を加速する。東京都の自由が丘や銀座など大型商店街への導入が進展しているようだ。
■ロボット関連も強化
C&S事業は、公共系・音楽配信系・金融系・物流系・放送系などのシステム開発を展開している。サービス事業との融合でロボット関連も強化している。ジエナ社と共同開発したロボットコンテンツ制作サービスScenariaは、簡単にコンテンツ更新できるソリューションとして、ソフトバンクロボティクスの人型ロボットPepperや、NTT東日本のデスクトップ型ロボットSotaに対応している。
ECソリューション事業のEC-Rider B2Bは、卸売・企業間取引に特化したECサイト構築システムである。また伝票処理自動化ソリューションの新製品OCRiderの拡販も推進する。
■20年3月期黒字予想
20年3月期の連結業績予想(11月1日に上方修正)は、売上高が19年3月期比2.8倍の40億円、営業利益が5億60百万円の黒字(19年3月期は4億08百万円の赤字)、経常利益が5億円の黒字(同4億03百万円の赤字)、純利益が3億30百万円の黒字(同4億08百万円の赤字)としている。大型案件が寄与して大幅増収・黒字化予想である。
第3四半期累計は売上高が37億91百万円で、営業利益が7億55百万円の黒字(前年同期は3億79百万円の赤字)だった。C&S事業で大口案件の基幹システム開発進捗遅れに伴って受注損失引当金繰入額を計上したが、サービス事業で改正割賦販売法に対応したIncredist Trinity Mini大口案件の納品が進捗した。
新型コロナウイルス感染症拡大と緊急事態宣言による業績への直接的な影響は限定的だろう。有望案件が目白押しであり、中期的に収益拡大を期待したい。
■株価は下値切り上げ
株価は3月の安値圏から下値を切り上げている。出直りを期待したい。4月22日の終値は661円、前期推定連結PER(会社予想連結EPS34円90銭で算出)は約19倍、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS36円77銭で算出)は約18倍、時価総額は約63億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)