【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ワークマンはモミ合い上放れて高値更新、16年3月期増収増益予想を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ワークマン<7564>(JQS)は作業服専門店チェーンをFC中心に全国展開している。株価はボックス展開から上放れて高値を更新した。16年3月期増収増益予想を評価して自律調整を挟みながら上値追いの展開だろう。

 ワーキングウェア・作業用品の大型専門店チェーンをFC中心に全国展開している。ローコスト経営を特徴として「エブリデー・ロー・プライス」戦略を推進し、他社との差別化戦略としてPB商品「WORKMAN BEST」の開発・拡販、販売分析データの活用や単品管理プロジェクトの推進、より緻密な品揃えと地域特性に合わせた売り場づくりなどを強化している。PB商品については今後5年間で売上構成比30%達成を目指している。

 15年3月期末の店舗数は42都道府県下に、FC店(加盟店A契約店舗)が14年3月期末比23店舗増加の641店舗、直営店(加盟店B契約店舗およびトレーニングストア)が同4店舗減の108店舗、合計が同19店舗増加の749店舗である。なお14年11月に北海道、15年3月に熊本県に初出店した。

 ドミナントエリアの強化、出店エリアの拡大、既存店のスクラップ&ビルド(S&B)および不採算店舗の閉鎖なども推進し、人口10万人に1店舗として中期的には22年3月期に全国1000店舗、28年3月期に全国1300店舗を目指している。

 14年9月には、16年3月期から実施する「中期業態改革ビジョン」の中で、アベノミクス法人減税が実現して業績も増収増益が続けば、在籍社員の年収を現在の約600万円(平均年齢36.4歳)から5年を目途に約100万円引き上げる目標を織り込んだと公表している。小売企業の中でトップクラスの待遇や女性社員が第一線で働きやすい環境を作り、社員のモチベーション向上と業績拡大につなげる方針だ。

 また4月16日には、群馬県伊勢崎市に床面積1万坪の流通センターを新設するため、群馬県と用地売買予約契約に調印したと発表している。既存の伊勢崎流通センター(床面積7140坪)がフル稼働状態のため、近接地に新伊勢崎流通センターを建設(総投資額38億円程度、17年2月完成予定)し、東日本の伊勢崎流通センター(新旧2センターの一体運営)と西日本の竜王流通センター(滋賀県、13年稼働、床面積7180坪)の2拠点で、全国の店舗への物流をカバーする方針だ。

 4月30日に発表した前期(15年3月期)の非連結業績はチェーン全店売上高が前々期比0.6%増の691億85百万円、営業総収入が同0.6%増の484億26百万円、営業利益が同0.5%減の83億39百万円、経常利益が同0.4%減の94億69百万円、純利益が同5.2%増の58億76百万円だった。

 配当予想は前々期比4円増配の年間87円(期末一括)とした。配当性向は30.2%となる。なおROE(自己資本当期純利益率)は同0.8ポイント低下して14.0%、自己資本比率は同2.3ポイント上昇して77.5%となった。

 消費増税、天候不順、業態を超えた競争激化の影響などでチェーン全店売上高が同0.6%増収にとどまり計画を下回った。既存店売上高は同0.9%減だった。店舗展開は新規出店23店舗、S&B5店舗、賃貸契約完了による閉店4店舗だった。

 チェーン全店の運営形態別売上高は、FC店が同1.3%増の629億85百万円、直営店が同6.4%減の62億62百万円だった。PB商品は395アイテムとなり、チェーン全店売上高に占める割合は同6.1ポイント上昇して16.7%となった。利益面では円安による仕入価格の高騰や販管費の増加も影響して営業微減益だった。

 なお四半期別の推移を見ると、チェーン全店売上高は第1四半期(4月~6月)173億65百万円、第2四半期(7月~9月)148億67百万円、第3四半期(10月~12月)218億27百万円、第4四半期(1月~3月)151億26百万円、営業総収入は第1四半期125億22百万円、第2四半期105億20百万円、第3四半期150億63百万円、第4四半期103億21百万円、営業利益は第1四半期20億83百万円、第2四半期13億88百万円、第3四半期32億37百万円、第4四半期16億31百万円だった。

 今期(16年3月期)の非連結業績予想(4月30日公表)はチェーン全店売上高が前期比4.5%増の723億30百万円、営業総収入が同3.8%増の502億40百万円、営業利益が同4.9%増の87億40百万円、経常利益が同4.6%増の99億円、純利益が同7.6%増の63億20百万円、配当予想が前期と同額の年間87円(期末一括)としている。

 店舗展開は南関東・近畿地方を中心に新規出店25店舗、S&B3店舗、閉店1店舗で、期末合計店舗数は773店舗の計画である。PB商品の売上構成比は同3.8ポイント上昇の20.5%の計画だ。消費増税や天候不順の影響一巡、新規出店、競争力のあるPB商品の強化、およびPB商品売上構成比上昇による売上総利益率上昇などで増収増益基調だろう。

 月次売上高(FC店と直営店の店舗売上高合計、前年比速報値)を見ると、15年4月は全店109.3%、既存店108.1%だった。前年の消費増税前駆け込み需要反動減の影響が一巡し、月前半は雨具類、月後半は気温上昇とともに春夏商品が好調だった。なお4月は新規出店0店舗で、4月末の店舗数は749店舗である。

 テレビCM放映効果による知名度向上、積極的な新規出店、出店エリアの拡大、ドミナント出店の強化、PB商品力の強化、PB商品売上構成比上昇による粗利益率改善、アルゴリズム自動選択型需要予測機能を持つ自社開発の発注システムによる発注作業の効率化などの効果で、中期的な収益拡大シナリオに変化はないだろう。

 株価の動きを見ると、高値圏5400円~5900円近辺でのボックス展開から上放れ、14年9月6000円を突破して高値を更新した。5月12日には6770円まで上伸した。中期成長力を評価する流れに変化はないようだ。

 5月12日の終値6770円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS309円97銭で算出)は21~22倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間87円で算出)は1.3%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS2158円71銭で算出)は3.1倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するプラス乖離率が拡大して目先的な過熱感もあるが、週足チャートで見るとボックスレンジから上放れ、さらに13週移動平均線と26週移動平均線が上向きに転じて強基調の形となった。16年3月期増収増益予想を評価して、短期的な自律調整を挟みながら上値追いの展開だろう。

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