【どう見るこの相場】ストップ高とストップ安銘柄が交錯する値動きの荒い相場展開

どう見るこの相場

■「AC(コロナ後)」にアクセルならPER検査株、ワクチン・治療薬開発株になおマグマ

 「命の次に大事なのはカネ」などと言い切ったら、拝金主義として大顰蹙を買うだろう。では「生命」と「経済(カネ)」を天びんに掛けるのはどうだろう?日本の新型コロナウイルス感染症に対する対策が、いままさにこれである。「緊急事態宣言」の期限を5月31日まで延長したのに、同宣言解除の基準を近く公表するとしており、一部自治体では行動制限や休業要請の緩和・解除を前倒しした。

 この両てんびんにアクセルを踏み新型コロナウイルス感染症の収束と経済再建がともに実現するなら、出口戦略となって「AC(After Corona、コロナ後)の展望も拓ける。しかし「二兎を追うものは一兎も得ず」の諺もある。両てんびんがバランスを失って中途半端で不首尾に終わったりすれば大事で、「オーバーシュート(爆発的患者急増)」の第2波と経済の二番底を覚悟しなくてはならなくなる。

 もともと日本の新型コロナウイルス感染症対策は、欧米各国に比べて「トゥー・リトル、トゥー・レイト(小さ過ぎ、遅過ぎ」)であった。「緊急事態宣言」の発出は、今年4月7日と1カ月遅れ、感染者確認のPCR検査も遅々として進まず検査件数は欧米の1割以下、「アベノマスク」も不評を買い、全国民に一律10万円を給付する経済対策も、4月7日に閣議決定した2020年度補正予算を慌てて組み替えて4月30日に可決・成立させたが、まだ手元には届いていない。対して欧米各国は、すでに次のステージの経済活動の再開へ一歩踏み出し、米国株はこれを積極的に先取り、日本株も追随しているところだ。

後発組の日本を欧米各国にキャッチアップさせようというのだから、優先順位としてなお低水準にとどまっているPCR検査や抗体検査の検査数を拡充させて、感染の基礎データを収集し実態確認が欠かせない。また、望むべくはワクチンや治療薬を早期に開発し、「カネより命」をアピールする必要もある。感染拡大の初期段階の今年2月には、新型コロナウイルスの封じ込めこそが最大の経済対策と大合唱したことを思い起こせばなおさらだ。

 これを裏付けたのが、今年2月17日に公表したPCR検査の相談・受診の目安の見直しである。同目安は、加藤勝信厚生労働大臣は、国民や都道府県の保健所の誤解と強弁したが、37.5度の発熱が4日以上続くとの具体的条件を明記したことで、「帰国者・接触者相談センター」で受診がはねつけられ、PER検査には抑制的に働き検査自体が低水準にとどまった。目安公表当時も、とくに高リスクの高齢者には、最悪命取りになるとして医療関係者の異論を呼んでいた。「AC」へアクセルを踏むためにも見直して検査件数を拡充させるのは、通過しなければならない関門となる。またこれと同時並行的に、経済活動の再開に向けとくに強くアクセルを踏み込んでいる米国で、オーバーシュートの第2波が発生するのか収束するのか見極める時間も稼げるはずだ。

 アクセルを踏むためのキー・ワードは、PCR検査・抗体検査、ワクチン・治療薬の開発で、この関連株は引き続きベース銘柄人気をキープするとして注目した。連休明け後の前週は、関連株のなかにストップ高銘柄とストップ安銘柄が交錯する値動きの荒い相場展開となったが、なおマグマを内包しているとみたい。

【関連記事情報】
【特集】キー・ワードは、PCR検査・抗体検査、ワクチン・治療薬の開発関連銘柄

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る