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ゼリア新薬工業は上値試す
- 2020/5/25 04:57
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東1)は、消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。21年3月期の連結業績予想は新型コロナウイルスによる不透明感で未定としている。ただし影響は限定的だろう。収益拡大を期待したい。なお自己株式取得を発表している。株価は20年3月期が計画未達だったことを嫌気する形となったが、目先的な売り一巡して上値を試す展開を期待したい。
■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開
消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。
20年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業53%、コンシューマーヘルスケア事業47%、その他0%、営業利益構成比(連結調整前)は医療用医薬品事業28%、コンシューマーヘルスケア事業69%、その他3%だった。地域別売上比率は日本69%、欧州23%、その他8%だった。
医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールを主力として、H2受容体拮抗剤アシノン、亜鉛含有胃潰瘍治療剤プロマック、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドなども展開している。子会社ティロッツ社は、アストラゼネカ社から炎症性腸疾患(IBD)治療剤Entocortの米国を除く全世界における権利を取得し、国内でゼンタコートカプセルを販売している。
アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイおよびインドネシアにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。
コンシューマーヘルスケア事業は、ヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども、全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。
20年4月にはヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として、日水製薬<4550>から日水製薬医薬品販売の全株式を譲り受けて子会社化した。
■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進
消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(20年5月21日現在)は以下の通りである。
鉄欠乏性貧血を適応症とするZ-213(ビフォーファーマ社から導入)は、19年3月鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト静注500mgとして国内製造販売承認を取得した。
子宮頸癌を適応症とするZ-100(自社品)は第3相(日本を含むアジア共同治験)段階である。予定された患者登録をすべて終了した。
Z-338(自社品)は、日本で小児機能性ディスペプシア患者を対象とする第3相に着手した。欧州では機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階である。
高カリウム血症を適応症とするZG-801(ビフォーファーマ社から導入)は第2相段階である。米国では15年12月販売開始し、欧州では17年7月EMA(欧州医薬品庁)から承認取得している。
なお潰瘍性大腸炎を適応症とするZ-206(自社グループ品)は、中国で20年4月承認を取得した。販売については、開発主体であるTillotts Pharma AGが、イタリアのMenariniグループの中国現地法人と独占的販売権供与に関する契約を締結している。
■21年3月期連結業績予想は未定
20年3月期の連結業績は、売上高が19年3月期比2.3%減の604億26百万円、営業利益が9.6%増の40億94百万円、経常利益が17.7%増の38億79百万円、純利益が15.3%減の29億25百万円だった。配当は19年3月期と同額の34円(第2四半期末17円、期末17円)とした。
営業・経常増益だが計画を下回った。医療用医薬品は0.2%減収だった。アサコールが海外で順調だったが、Entocortの海外一部地域における在庫調整が影響した。コンシューマーヘルスケアは4.5%減収だった。ヘパリーゼ群がコンビニエンスストア市場における競争激化や、新型コロナウイルスによる外出自粛の影響などで第4四半期に大幅減少した。純利益は特別利益で前期計上した受取和解金が剥落して減益だった。
21年3月期の連結業績予想は新型コロナウイルスによる不透明感で未定としている。ただし影響は限定的だろう。収益拡大を期待したい。なお配当予想は20年3月期と同額の34円(第2四半期末17円、期末17円)としている。
■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象
株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は上値試す
なお5月21日に自己株式取得(上限80万株・17億60百万円、取得期間20年5月22日~20年11月5日)を発表している。
株価は20年3月期が計画未達だったことを嫌気する形となったが、目先的な売り一巡して上値を試す展開を期待したい。5月22日の終値は2062円、今期予想配当利回り(会社予想の34円で算出)は約1.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1134円30銭で算出)は約1.8倍、時価総額は約1095億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)