アイリッジは戻り試す

 アイリッジ<3917>(東マ)は、O2O・OMOソリューションをベースとして、電子地域通貨やライフデザインにも事業領域を拡大している。21年3月期予想は新型コロナウイルスによる不透明感で未定としている。当面は顧客の予算縮小の動きが懸念材料として意識されるが、中期的に収益拡大を期待したい。株価は3月の安値圏から反発して水準を切り上げている。戻りを試す展開を期待したい。

■O2O・OMOソリューションをベースに事業領域拡大

 企業のO2O(Online to Offline)およびOMO(Online Merges with Offline)を支援するO2O・OMOソリューション(スマホをプラットフォームとするO2Oソリューションの提供、O2Oアプリの企画・開発、O2Oマーケティング支援)をベースとして、フィンテック(電子地域通貨)領域やライフデザイン領域にも事業領域を拡大している。

 18年5月デジタルガレージ<4819>と資本業務提携、18年8月デジタルガレージからセールスプロモーションのDGマーケティングデザインの株式80%取得して連結子会社化、19年10月システム受託開発のキースミスワールドを吸収合併した。

 20年3月期のサービス別売上高構成比は、月額報酬(FANSHIPのサービス利用料、アプリのシステム保守料等)が15%、アプリ開発・コンサル・プロモーション等(アプリ企画・開発に伴う収入、アプリマーケティングに伴う収入、広告・販売プロモーションに伴う収入)が85%だった。

■O2O・OMOソリューションはFANSHIPが主力

 O2O・OMOソリューションは、ファン育成プラットフォーム(顧客データ分析プラットフォーム)FANSHIPが主力である。スマホ向け位置情報連動型O2Oソリューションpopinfoを19年7月ブランドリニューアルした、利用ユーザー数(ID発行数)は20年3月末時点で1億9127万となった。利用ユーザー数に応じた従量課金型月額報酬の積み上げによるストック収益となる。今後はFANSHIPの機能強化によるストック収益拡大や、One to Oneマーケティングプラットフォームとしての導入拡大を図る。

 さらに子会社DGマーケティングデザインとの連携によって、デジタル・フィジカルマーケティング領域に展開する。オンライン・オフライン双方において、広告~購買~決済~SRMまで消費者の行動プロセス全てをカバーするトータルソリューションを推進する。

■電子地域通貨も展開加速

 フィンテック領域(電子地域通貨)は子会社フィノバレーが、電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」をベースとして事業展開を加速している。

 19年9月にはeumo、ポケットマルシェ、IKEUCHI ORGANICと共同で電子地域通貨「eumo」の実証実験を開始した。電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」が採用された。20年2月には、木更津市のデジタル地域通貨「アクアコイン」の協業先である君津信用組合と資本提携した。20年3月には「MoneyEasy」がセブン銀行ATMとのシステム連携を開始した。

■ライフデザインなど新規事業も育成

 ライフデザイン領域の新規事業では18年8月、デジタルガレージの子会社で分譲マンションのチラシ制作など、不動産マーケティング大手のDGコミュニケーションズの株式14%を取得した。従来は流通・小売・鉄道・金融分野が主力だったO2Oソリューションを、DGコミュニケーションズと連携して、不動産・住まい・街づくりなどライフデザイン領域にも展開する。

 18年9月にはAIスピーカー向けアプリ開発プラットフォームNOIDを提供開始している。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。また5月15日にはメディカルネットと、歯科向けオンライン診療サービスの共同開発で業務提携した。

■21年3月期予想は未定

 20年3月期の連結業績(19年3月期は決算期変更で8ヶ月決算)は、売上高が53億37百万円、営業利益が1億14百万円、経常利益が1億14百万円、純利益が81百万円の赤字だった。

 売上高、利益とも計画を下回った。第4四半期に新型コロナウイルスでイベント・プロモーション中止の影響を受けた。純利益は特別損失にソフトウェア減損損失を計上したことも影響した。

 21年3月期予想は新型コロナウイルスによる不透明感で未定としている。重点活動領域として、アプリ開発案件の粗利率改善と高付加価値化、ストック売上拡大による安定収益比率の向上、事業環境変化への対応などに取り組む方針だ。なお中期経営計画の目標値としては、22年3月期売上高70億円、営業利益5億円、EBITDA7億50百万円を掲げている。

 当面は一部顧客の予算縮小の動きが懸念材料として意識されるが、中期的に収益拡大を期待したい。

■株価は戻り試す

 株価は3月の安値圏から反発して水準を切り上げている。戻りを試す展開を期待したい。5月25日の終値は1026円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS374円02銭で算出)は約2.7倍、時価総額は約69億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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