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【アナリスト水田雅展の銘柄診断】テクマトリックスは16年3月期2桁増収増益・増配予想、14年8月高値試す
- 2015/5/14 06:50
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
テクマトリックス<3762>(東1)はシステム受託開発やセキュリティ関連製品販売などの情報サービス事業を展開している。5月8日に15年3月期決算を発表し、16年3月期予想を2桁増収増益・増配とした。これを好感して株価は年初来高値を更新している。指標面には依然として割安感があり、中期成長力も評価して14年8月高値781円を試す展開だろう。
ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業、医療・CRM・EC・金融を重点分野としてシステム受託開発やクラウドサービスを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。
重点戦略として、ストック型ビジネスの保守・運用・監視サービス関連の戦略的拡大、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、ネットワーク・セキュリティ関連商材およびサービスの充実、ビッグデータ分析支援サービス、大規模EC事業者向けバックオフィスシステム構築ソリューション「楽楽ECインテグレーションサービス」などを強化している。
中期成長に向けてM&A・アライアンスを積極活用するとともに、グループ再編も推進している。14年2月に子会社の沖縄クロス・ヘッドが台湾のデータセンター事業者eASPNetと事業協力についての覚書を締結、14年3月にクロス・ヘッドを完全子会社化した。
14年7月に日本事務器(NJC)と医療情報クラウドサービス「NOBORI」に関する販売代理店契約を締結、14年8月に沖縄クロス・ヘッドが日本HPと業務提携、14年10月にクロス・ヘッドが仮想化技術の米Pica8(ピカエイト)社に出資、ソフトバンクテレコムなどと3社共同でクラウド型医療情報サービス「地域健康・医療情報プラットフォームサービス(HeLIP)」の提供を開始した。
14年12月にはクロス・ヘッドがエヌ・シー・エル・コミュニケーションの株式を追加取得して完全子会社化し、15年4月1日合併した。ネットワーク仮想化技術であるSDN市場の本格成長が期待されているため、合併によって技術力強化や業務効率化を推進する。
15年3月には子会社カサレアルがJetBrains社(チェコ)とトレーニングパートナー契約を締結し、サムライズム(東京都)とJetBrains社製品を利用した研修に関する業務提携を開始した。またスリーゼットに対して医療情報クラウドサービス「NOBORI」を、クリニックを対象としてOEM提供する契約締結を発表した。
5月1日には、医療サービス事業に特化したベンチャー企業である中国の北京ヘルスバンク・テクノロジー有限公司と、合弁会社(北京ヘルステック医療情報技術有限公司、当社出資比率40%)を設立(15年8月予定)すると発表した。当社子会社の合同会社医知悟が開発した遠隔医療ソフトウェアのライセンスを供与して、中国において遠隔医療事業を展開する。
なお医療分野では、オンプレミス型(ユーザーがハードウェア、ソフトウェア、データを自分自身で保有・管理)システム提供から、クラウド型(ユーザーがインターネット経由で利用)サービス提供へビジネスモデル変更を推進しているため、14年3月期から医療情報クラウドサービスの売上と利益をサービス期間に応じて按分計上する方法に変更した。このため今後複数年に亘って売上と利益にマイナス影響となるが、他事業の成長でカバーする。
5月8日に発表した前期(15年3月期)の連結業績(1月30日、本社移転に伴う原状回復費用の特別損失計上に伴って純利益を80百万円減額)は、売上高が前々期比6.1%増の184億17百万円、営業利益が同1.0%増の11億30百万円、経常利益が同2.7%減の11億32百万円、純利益が同26.3%減の5億84百万円だった。純利益は繰延税金資産追加計上の一巡や特別損失の計上が影響した。
配当予想については前々期と同額の年間15円(期末一括)とした。配当性向は31.1%となる。ROE(自己資本当期純利益率)は同4.2ポイント低下して9.4%、自己資本比率は同1.5ポイント低下して45.3%となった。
セグメント別動向を見ると、情報基盤事業は売上高が同7.6%増の120億44百万円、営業利益が同17.4%増の10億29百万円だった。サイバー攻撃に対応した次世代ファイアウォール関連が好調で、セキュリティ運用・監視サービス契約数も順調に増加した。売上高は過去最高となった。
アプリケーション・サービス事業は売上高が同3.5%増の63億73百万円、営業利益が同58.3%減の1億01百万円だった。インターネットサービス分野の受託開発が好調だったが、ソフトウェア開発技術者の確保に苦戦したようだ。医療分野では医療情報クラウドサービス「NOBORI」の好調な引き合いが継続している。CRM分野は大手システム・インテグレーターとの業務提携も寄与して受注が堅調のようだ。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)39億49百万円、第2四半期(7月~9月)46億55百万円、第3四半期(10月~12月)43億75百万円、第4四半期(1月~3月)54億38百万円、営業利益は第1四半期63百万円、第2四半期2億87百万円、第3四半期1億92百万円、第4四半期5億88百万円だった。第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。
今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比10.8%増の204億円、営業利益が同15.0%増の13億円、経常利益が同14.8%増の13億円、純利益が同43.7%増の8億40百万円とした。ストック型ビジネスの戦略的拡大により、人件費増加などを吸収して2桁増収増益見通しだ。純利益は特別損失の一巡も寄与する。配当予想は前期比2円増配の年間17円(期末一括)としている。
セグメント別売上高の計画は情報基盤事業が同14.6%増の138億円、アプリケーション・サービス事業が同3.6%増の66億円としている。情報基盤事業ではサイバー攻撃に対応した次世代ネットワーク・セキュリティ関連商材・サービスの拡販を目指す。アプリケーション・サービス事業ではCRM分野、医療分野、インターネットサービス分野におけるクラウドサービスの拡充を強化する方針だ。
株価の動きを見ると、マイナンバー制度やセキュリティ関連を材料視した3月738円から利益確定売りで一旦反落したが、16年3月期2桁増収増益・増配予想を好感して急伸している。5月13日は760円まで上伸して14年8月高値781円に接近する場面があった。
5月13日の終値754円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS69円33銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は2.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS530円20銭で算出)は1.4倍近辺である。
週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から再動意となって年初来高値を更新した。強基調を確認した形だ。指標面には依然として割安感があり、中期成長力も評価して14年8月高値781円を試す展開だろう。