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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンディスプレイは今期見通し下方修正で急落したが売り一巡、反発のタイミング
- 2014/10/27 07:32
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
中小型液晶ディスプレイ製造のジャパンディスプレイ<6740>(東1)の株価は、業績悪化懸念や地合い悪化などで10月7日に8月安値501円を割り込み、10月15日の今期(15年3月期)業績見通し下方修正で10月17日の313円まで急落した。ただしその後は340円近辺でモミ合う展開だ。売りはほぼ一巡したようだ。目先的には売られ過ぎ感も強めている。来期(16年3月期)の収益改善期待で反発のタイミングだろう。なお11月13日に第2四半期累計(4月~9月)の業績発表を予定している。
ソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズの3社が統合して12年4月に事業を開始し、14年3月東証1部市場に新規上場した。
モバイル分野(スマートフォン・タブレット)向けを主力として、車載・C&I・その他分野(車載分野、デジタルカメラ分野、医療分野)向けに、高精細・高画質・低消費電力・薄型・軽量の中小型液晶ディスプレイを製造・販売している。前期(14年3月期)の得意先別売上構成比は米アップル向けが約3割を占めた。製造は国内5拠点と海外は中国、フィリピン、台湾に展開し、車載向け事業の強化に向けて米デトロイトに新規オフィスを開設している。
中期戦略では成長市場での高シェア獲得を目指し、市場競争力の高い技術力と高い生産能力を強みとしている。12年6月には石川サイト能美工場、13年6月には茂原工場で最先端のLTPS(低温ポリシリコン)液晶ラインが稼働した。14年6月には台湾の子会社TDIを通じて、台湾の液晶ディスプレイモジュール製造の中日新科技股份有限公司(STC)を子会社化した。STCが有する中国・珠海市のモジュール製造工場を活用して中国でのビジネス基盤を強化し、中国市場でのシェア拡大を目指す戦略だ。
中期的には中国のスマートフォンメーカーもグローバルブランドを指向しているため、国内外でスマートフォンの高精細ディスプレイ比率の上昇が予想され、高精細WQHD(1440×2560画素)の市場シェア50%を目指している。モバイル分野に比べて需要変動の小さい車載用でも、カーナビやインパネ関連で高精細ディスプレイの需要増加が予想され、デザインイン拡大の成果で来期(16年3月期)から売上が大幅に増加する見通しだ。
14年6月には高解像度タブレット向け「Pixel Eyes」の量産準備開始(14年秋の量産開始)を発表した。タッチセンサー機能をディスプレイに内蔵する当社独自技術を搭載した製品で、ディスプレイモジュールの薄型・軽量化および透過率向上が実現できるとしている。14年7月にはモバイル製品向け「IPS-NEO」の量産を開始した。当社独自の光照射配向プロセスを採用して低消費電力で高コントラストを実現した。
また14年7月には、産業革新機構(INCJ)、当社、ソニー<6758>およびパナソニック<6752>が、ソニーおよびパナソニックが有する有機ELディスプレイパネルの研究開発機能を統合して、JOLED(ジェイオーレッド)を設立(15年1月予定)することで最終合意した。当社は新会社JOLEDに15%出資し、JOLEDとのシナジーで今後の研究開発を加速させる方針としている。
10月23日には新しい駆動方式の高速応答液晶ディスプレイを開発したと発表した。高視野角・高コントラストで色調変化が小さいといった長所はそのままで応答速度を向上させた。リアルタイムの正確な動画表示が求められる車載向けやカメラ向けなど幅広い製品用途への適用が期待され、15年度中の量産確立を目指すとしている。なお10月29日~31日パシフィコ横浜で開催の「Display Innovation2014」に出展する。
今期(15年3月期)第2四半期累計(4月~9月)および通期の連結業績見通しについては10月15日に下方修正を発表した。また事業の効率化を促進して中期的な競争力の強化を図るべく、生産効率の劣る第3世代LTPS(低温ポリシリコン)液晶ラインを有する深谷工場を16年4月(予定)に閉鎖することも発表した。深谷工場に係る減損損失など約70億円を今期下期に特別損失として計上するが、閉鎖後は年間約70億円の固定費削減効果が得られる見込みとしている。
第2四半期累計は前回予想(5月15日公表)に対して、売上高を237億円減額して前年同期比10.8%減の2863億円、営業利益を219億円減額して209億円の赤字(前年同期は139億25百万円の黒字)、経常利益を193億円減額して225億円の赤字(同96億57百万円の黒字)、純利益を221億円減額して253億円の赤字(同265億35百万円の黒字)とした。未定としていた第2四半期末の配当予想は無配とした。
大口顧客向けの出荷遅れに加えて、中国のLTE対応機種向けFull-HD(1080×1920画素)市場立ち上がり遅れなどの影響で売上高が想定を下回り、タブレット向けディスプレイの販売不振、売価下落に対するコスト低減対応の遅れなども影響して営業損益が大幅に悪化した。
通期の連結業績見通しは前回予想に対して売上高を100億円減額して前期比20.4%増の7400億円、営業利益を335億円減額して同76.5%減の65億円、経常利益を300億円減額して同92.1%減の15億円、純利益を368億円減額して100億円の赤字(前期は339億18百万円の黒字)とした。なお期末配当予想は未定としている。
売上面では上期の売上未達成額を挽回できず通期売上高も減額した。ただし中国など東アジア向けFull-HDの出荷回復、第4四半期(1月~3月)の高精細WQHDの出荷増加などで、下期(10月~3月)の売上高は期初計画を上回る見通しだ。利益面では従来のグローバルスマートフォンメーカー向け出荷が大幅に減少するため営業利益を大幅減額した。ただしFull-HDやWQHDの利益貢献、高解像度タブレット向け「Pixel Eyes」の売上構成比上昇などで、下期の営業損益は上期との比較で大幅に改善する見通しだ。純利益については深谷工場閉鎖に伴う特別損失約70億円計上も影響する。なお下期の想定為替レートは1ドル=105円としている。
4月28日の前期(14年3月期)業績下方修正に続き、半年間で2回目の業績下方修正となったが、下期の営業損益改善、さらに車載分野の拡大などで来期(16年3月期)の一段の営業損益改善を期待したい。
株価の動きを見ると、一部証券会社による投資判断引き下げによる業績悪化懸念や全般地合い悪化の影響で、10月7日に8月安値501円を割り込んで水準を切り下げた。さらに10月15日の今期業績見通し下方修正で10月17日の313円まで急落した。ただしその後は340円近辺でモミ合う展開だ。売りはほぼ一巡したようだ。
10月24日の終値343円を指標面で見ると、前期実績PBR(前期実績の連結BPS673円28銭で算出)は0.5倍近辺である。日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が20%超に達し、目先的には売られ過ぎ感も強めている。下期および来期の営業損益改善期待で反発のタイミングだろう。