【編集長の視点】タカラレーベンは小反落も業績予想未定を契約済戸数増で押し返し割り負け訂正余地

タカラレーベン<8897>(東1)は、前日3日に3円安の380円と小反落して引けた。同社株は、今年3月6日につけた年初来安値301円から約30%の底上げをしており、目先の利益を確定する売り物に押された。ただ今年5月25日の3月期発表時決算時に今2021年3月期予想業績を未定としたことを前2020年3月期末の新築マンションの契約済戸数が、1062戸と前々期末比2ケタプラスとなっていることで押し返しに割り負け訂正買いが下値に交錯している。また全国的に地方都市で「まちなか居住」を促進するコンパクトシティ化が展開されていることも、同社のビジネス環境、業績に追い風になるとして側面支援材料視されている。

■2020年3月末の新築マンション契約済戸数は前年比12%増

 同社は5月25日の決算発表では、前2020年3月期業績が、ホテル事業での棚卸資産の評価損や固定資産の減損損失を合計30億7900万円計上したことで下方修正着地する一方、今2021年3月期予想業績を新型コロナウイルス感染症の影響を適切・合理的に判断することは困難として未定とした。それでも前2020年3月期業績は、売り上げ1684億9300万円(前々期比27.6%増)、営業利益119億100万円(同18.5%増)、経常利益112億100万円(同24.1%増)、純利益53億6100万円(同16.6%減)と純利益が連続減益となったほかは、売り上げが過去最高を更新し営業利益、経常利益は2ケタのプラスで着地した。新築分譲マンションの売上戸数が、同18.0%増の1955戸と伸び売り上げも同34.9%増と過去最高となり、不動産管理戸数の拡大や発電事業で売電施設の売却収入があったことなどが要因となった。配当は、配当性向を25%~30%程度をメドとする配当政策通りに年間19円(前々期実績16円)に増配した。

 今2021年3月期業績は、新型コロナウイルス感染症の影響が予想可能となった時点で公表するとして配当とともに未定としている。ただ2020年3月末時点の新築分譲マンション事業の契約済戸数は、1062戸と2019年3月の943戸を12.6%上回っており、ホテル事業の特別損失も一巡するだけに業績期待が底流している。また配当も、配当政策を維持して配当性向を25%以上と表明しており、高水準据え置きの可能性も高まる。

 なおコンパクトシティ化は、急速な人口減少、高齢化で低密度となっている地方都市の市街地を都市機能の集中、公共交通機関の整備、医療・福祉利用環境の向上などにより持続可能な都市・社会に再活性化するもので、全国エリアで事業展開をしている同社にとっては、アクティブシニア層の地方中核都市でのコンパクトシティ需要取り込みに追い風となる。

■年初来調整幅の3分の1戻しを達成しPBR0.8倍水準から再発進

 株価は、前期第3四半期の好決算を好感して年初来高値にあと2円と迫る513円まで買い進まれたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)、世界同時株安に巻き込まれて年初来安値301円まで大幅調整した。同安値からは売られ過ぎとして底上げ、年初来調整幅の3分の1戻しまでリバウンド、今回の今期業績未定予想でもこの水準での下値抵抗力の強さを発揮した。PBRは0.81倍、PERも前期実績ベースで7倍台となお割安であり、値ごろ妙味も加わり、調整幅の半値戻しの400円台回復から年初来高値515円を目指し再発進しよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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