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ラクーンホールディングスは上値試す
- 2020/6/15 06:09
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ラクーンホールディングス<3031>(東1)は、企業間ECサイトのスーパーデリバリー運営を主力として、EC事業およびフィナンシャル事業を展開している。21年4月期は大幅増収増益(利益はレンジ)予想である。新型コロナウイルスのマイナス影響は限定的だ。逆にECの事業環境が良好であり、保証事業も信用不安に備える企業の増加が追い風となる。収益拡大を期待したい。株価は3月の安値圏からV字回復して1月の年初来高値に接近している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■企業間ECサイト「スーパーデリバリー」運営が主力
アパレル・雑貨分野の企業間(BtoB)電子商取引(EC)スーパーデリバリー運営を主力として、クラウド受発注システムのCOREC(コレック)事業、BtoB掛売り・決済業務代行サービスのPaid(ペイド)事業、売掛債権保証事業など周辺領域へ事業を拡大している。
20年4月期のセグメント別売上高構成比はEC事業(スーパーデリバリーとCOREC)54%、フィナンシャル事業(Paid事業、保証事業)46%、営業利益構成比はEC事業82%、フィナンシャル事業18%だった。
スーパーデリバリーは出展企業と会員小売店の増加に伴って月額課金システム利用料売上が積み上がるストック型収益構造である。また越境ECサービス「SD export」も展開している。20年4月には、アリババグループが運営する中国最大級のBtoC越境ECサイト天猫国際(Tmall Global)に、スーパーデリバリー海外旗艦店をオープンした。
グループ経営戦略として既存事業の成長スピード加速、M&Aの実施、新規事業の創出を推進する。経営目標値としては、早期にEBITDA10億円(18年4月期実績5.2億円)の達成を目指すとしている。なお4月21日には第5回新株予約権の行使が完了したと発表している。
18年12月家賃保証サービスのALEMOを子会社化、19年6月中国向け越境EC強化に向けてアドウェイズ<2489>と包括業務提携、19年12月オフィス内動画広告配信プラットフォーム「e-Pod Digital」運用のTAASに出資して資本業務提携した。20年5月1日には、子会社ラクーンフィナンシャルの事業用家賃保証事業を子会社ALEMOに承継し、ALEMOの社名をラクーンレントに変更した。
■会員企業数、流通額、取扱高、保証残高は増加基調
20年4月期末スーパーデリバリー会員小売店数は19年4月期末比3万9905店舗増の16万7067店舗、出展企業数は434社増の1853社、商材掲載数は27万2348点増の114万7291点、流通額は13.9%増の128億08百万円(国内が10.4%増、海外が32.2%増)となった。
Paid事業の加盟企業数は約3700社、グループ内含む取扱高は12.9%増の260億16百万円、保証事業の保証残高は20.2の756億44百万円(ラクーンフィナンシャル分267億74百万円、ALEMO分488億69百万円)となった。
■21年4月期大幅増収増益予想
20年4月期連結業績は、売上高が19年4月期比16.7%増の34億77百万円、EBITDAが30.3%増の8億48百万円、営業利益が28.7%増の7億06百万円、経常利益が29.8%増の7億08百万円、純利益が18.9%増の4億51百万円だった。配当は50銭増配の6円50銭(期末一括)とした。
全サービスが伸長して計画超の大幅増収増益だった。EC事業は11.3%増収で20.2%増益だった。会員小売店、出展企業、商材掲載数増加が順調に増加した。新型コロナウイルスで対面取引での卸売や仕入をできなくなった企業が流入したことも後押し要因となった。またマスクや除菌グッズの流通額が急増した。
フィナンシャル事業は21.7%増収で31.3%増益だった。Paid事業の取扱高、保証事業の保証残高が大幅伸長した。なお新型コロナウイルスによるデフォルトコストの増加は限定的だったが、影響が長期化する可能性を踏まえて、保証履行引当金、求償引当金および貸倒引当金を積み増した。
21年4月期連結業績予想は、売上高が20年4月期比12.1%増の39億円、利益はレンジ予想でEBITDAが15.5%増~26.1%増の9億80百万円~10億70百万円、営業利益が14.7%増~27.5%増の8億10百万円~9億円、経常利益が12.9%増~25.6%増の8億円~8億90百万円、そして純利益が8.6%増~21.9%増の4億90百万円~5億50百万円としている。配当予想は未定としている。
発生するデフォルトを悲観的に見積もった場合と、楽観的に見積もった場合の両極を想定して、各利益はレンジ予想としている。新型コロナウイルスのマイナス影響は限定的だ。逆にECの事業環境が良好であり、保証事業も信用不安に備える企業の増加が追い風となる。収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は3月の安値圏からV字回復して1月の年初来高値に接近している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。6月12日の終値は834円、今期予想連結PER(会社予想連結EPSの上限値27円26銭で算出)は約31倍、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS197円68銭で算出)は約4.2倍、時価総額は約168億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)