【小倉正男の経済コラム】あらゆるモノの製造を中国に依存しているというリスク

小倉正男の経済コラム

■日本ではマスクすらつくれないという現実

 「アベノマスク」、この是非、善し悪しについてはいまさら何もいわない。

 ただ事実関係でいうと、国は興和、伊藤忠、マツオカコーポレーションなど繊維製品に強い企業に布マスク製造を発注した。

 興和やマツオカはミャンマーに自社工場を持っているようだが、興和は中国の協力工場などにマスク製造を依頼した模様だ。配布されたマスクに変色や髪の毛が入っていたということで不良品が発生。

 その検品に時間がかかり、6月のいまになってようやく配布がほぼ完了した模様だ。「アベノマスク」が発表されたのは4月1日。ずいぶん時間がかかったものである。

 「アベノマスク」は、そのほとんどが中国、ミャンマー、ベトナムなど海外でつくられている。炙り出されたのは、日本はマスクすらまともにはつくれないという現実である。

■医療用ガウンは国内製造で緊急対応

 使い捨て用の医療用防護ガウンはどうか。わかっている範囲では、アパレルのワールド、ワイシャツの山喜などが国から受注。ワールドのケースは、医療用ガウン150万枚の受注で、岡山、長野、鹿児島工場などが製造を担当している。

 山喜は繊維素材メーカーが国から受注して、その製造を委託されたもの。山喜は100万枚製造するということで長崎、鹿児島工場などが対応している。両社とも9月末までに納入する。興味深いがワールド、山喜とも同時にマスクの国内製造にも着手している。

 一般論として、アパレル衣料はいまのグローバリズムによる水平分業では、日本は「生産適地」ではなくなっている。人件費が相対的に高い日本でアパレル衣料をつくれば高い製品になりマーケットで太刀打ちできない。

 すでにかなり以前から中国、そしてミャンマー、ベトナムなどに「生産適地」が移行。実際、「アベノマスク」は中国、ミャンマーなど海外でつくられている。「生産適地」の面で比較劣位にある日本でマスクをつくるという発想は最初からなかったわけだ。

 だが、医療用ガウンは国内でつくられている。医療用ガウンはマスクに比べれば高単価で、しかも国からの「特需」で採算は確保されている。

■製造の過剰な中国への依存=「中国リスク」

 ところが医療ガウンの製造を受注した企業は、マスク製造にも乗り出している。これらは一般用マスクで医療用マスクということではない。地方自治体などの受注も一部あるが、一般マーケット向け販売を想定している。

 抗菌性などの高い機能に加えて、ファッションも加味されたマスクで、高単価での販売を想定している。つまり、マーケットで販売単価が見合えばという条件付きだが、日本にはまだマスクを含めての製造力が残っている。

 アパレル衣料という産業に限定されたものだが、新型コロナウイルスが日本の製造力の一断面を浮き彫りにしたことは間違いない。

 「世界の工場」ということで中国にサプライチェーンが過剰なまで集中し過ぎている。医薬品原薬の製造なども中国に圧倒的に依存している。中国は「新型コロナ禍」で隠蔽行為などを非難されると、「中国が医薬品原薬の輸出を制限していないことを世界は感謝すべきだ」と発言。いざとなったら中国は輸出を止めるという牽制が含まれている。

 中国に進出している日本企業系の工場を中国からほかのアジア諸国に分散する。一部は日本国内に戻すことが必要になっている。「中国が輸出の制限をしていないことを世界は感謝すべきだ」。現状では、あらゆるモノでそういわれかねないリスクがあるわけである。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

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