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インテリジェントウェイブは上値試す
- 2020/7/2 07:54
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インテリジェントウェイブ<4847>(東1)は、金融分野や情報セキュリティ分野を中心にシステムソリューション事業を展開し、中期的にサイバーセキュリティ総合プロバイダーを目指している。20年6月期増益予想である。新型コロナウイルスによる業績への直接的な影響は限定的と考えられる。21年6月期も収益拡大を期待したい。株価は新型コロナウイルスへの警戒感で急落する前の水準を回復し、1月の年初来高値に接近している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力
大日本印刷<7912>の連結子会社で、ソフトウェア開発を中心とする金融システムソリューション事業、情報セキュリティ分野を中心とするパッケージソフトウェア販売・保守サービスのプロダクトソリューション事業を展開している。高度な専門性が要求されるクレジットカード決済のフロント業務関連システム分野を強みとしている。
19年6月期の売上構成比は金融システムソリューション89%、プロダクトソリューション11%、営業利益構成比は金融システムソリューション97%、プロダクトソリューション3%だった。
クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスを収益柱としている。金融業界のシステム投資や案件ごとの採算性が影響し、下期の構成比が高い特性もある。
■事業領域拡大に向けて新製品・新サービスを強化
金融システムソリューションでは、クレジットカード決済のフロント業務関連システムから、金融領域全般への事業領域拡大を目指し、クラウドサービスも強化している。また拡大するEC決済に対応して、複数のカード会社と次世代不正検知の実証実験を進めている。プロダクトソリューションでは、サイバー攻撃や情報漏えいに対応したセキュリティ関連のソリューションを強化している。
クラウドサービスの20年3月末時点の導入社数は、OnCore SwitchのIGATESが2社、不正検知のIFINDSが3社、アクワイアリング業務のIOASISが5社となった。
AI関連の新規開発案件では、SMBC日興証券「AI株価見守りサービス」に、CEP(Complex Event Processing)エンジンであるFES(Fast Event Streamer)が採用され、19年7月サービス開始した。
19年8月には、あいおいニッセイ同和損害保険などと共同で、業界初のテレマティクス技術を活用した事故対応システム「テレマティクス損害サービスシステム」を開発した。
中期事業計画では経営目標値として、22年6月期売上高120億円(金融システムソリューション106億円、プロダクトソリューション14億円)、営業利益12億円(営業利益率10.0%)を掲げている。サイバーセキュリティ総合プロバイダーを目指し、金融システムソリューションにおけるクラウドサービスは中期的に売上高14億円(19年6月期実績6億37百万円)を目指す。なお目標値には次の大型開発案件の候補や新規商材を織り込んでいない。
■20年6月期増益予想
20年6月期業績(非連結)予想は売上高が19年6月期比1.5%増の106億円、営業利益が8.5%増の10億円、経常利益が9.1%増の10億40百万円、純利益が5.3%増の7億20百万円としている。配当予想は19年6月期と同額の9円(期末一括)である。
金融システムソリューションは0.7%増収で7.9%増益、プロダクトソリューションは8.5%増収で29.0%増益の計画である。金融システムソリューションでは大型開発案件が減少するが、その他開発案件の増加でカバーする。クラウドサービスの売上高は8億円の計画としている。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比1.5%増の78億05百万円、営業利益が13.3%減の5億85百万円、経常利益が12.7%減の6億01百万円、純利益が14.7%減の3億98百万円だった。
金融システムソリューション事業はソフトウェア開発やクラウドサービスの拡大で1.1%増収だが、自社製パッケージの減少や一部開発案件の利益率低下で2.1%減益だった。プロダクトソリューションは他社製品の増加で6.6%増収だが、利益率の高い自社製品の減少で赤字拡大した。
第3四半期累計は減益だったが概ね計画水準であり、第4四半期で補う計画としている。なお通期売上高は上振れの見込みとしている。新型コロナウイルスによる業績への直接的な影響は限定的と考えられる。21年6月期も収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は新型コロナウイルスへの警戒感で急落する前の水準を回復し、1月の年初来高値に接近している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。7月1日の終値は805円、前期推定PER(会社予想EPS27円37銭で算出)は約29倍、前期推定配当利回り(会社予想の9円で算出)は約1.1%、前々期実績PBR(前々期実績BPS242円23銭で算出)は約3.3倍、時価総額は約212億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)