- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】コラボスはコールセンター向けクラウドサービス、16年3月期も増収増益基調
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】コラボスはコールセンター向けクラウドサービス、16年3月期も増収増益基調
- 2015/5/18 07:07
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
コラボス<3908>(東マ)はコールセンター向けにIP電話交換機システムや顧客情報管理システムをクラウドで提供している。株価は3月のIPOから約2ヶ月で落ち着きどころを探る段階とも言えるが、足元では売られ過ぎ感を強めている。16年3月期も増収増益基調であり、クラウド化の流れを背景として中期成長期待も高い。指標面は割高な水準とは考えられず、目先的な売りが一巡して反発局面だろう。
01年10月ITXの子会社として設立、10年7月親会社がITXからオリンパスビジネスクリエイツに異動、11年6月株式公開に向けてMBOを実施、15年3月東証マザーズに新規上場した。
VOIP技術(IPネットワーク上で音声を送受信する通信技術の総称)を利用したクラウド型コールセンター・ソリューションのパイオニアである。企業が保有するお客様相談室や製品問い合わせセンターなどのコールセンター向けに、IP電話交換機システムや顧客情報管理(CRM)システムをワンストップクラウドサービスで提供している。
従来の自社内に設備を持って運用するオンプレミス型コールセンターの場合は、システム・機器の導入に関する高額な設備投資やシステム運用費用が必要だったが、クラウド型コールセンターでは少ない初期費用と月額料金で運用でき、導入に要する期間短縮や短納期での移転・席数増減にも対応できるというメリットがある。このためコールセンターシステムの自社内オンプレミス型からクラウドサービス利用へとシフトする企業が増加している。
そして当社のワンストップクラウド型サービスの経済性と高機能性の両立が評価されて顧客数は増加基調だ。200席超の大規模コールセンターから5席前後の小規模コールセンターまで、大手テレマーケティング会社を含めて規模を問わず豊富な導入実績を持ち、クラウド型コールセンターサービス(音声系プラットフォーム)の市場シェアNO.1企業である。
サービスラインナップはクラウド型で提供される電話交換機システムおよび顧客情報管理システムで構成され、顧客情報自動検索や自動発信・自動登録などの機能で連携している。コールセンターの規模、インバウンド(受信)やアウトバウンド(発信)などの顧客ニーズに合わせて、最適な組み合わせのサービスを提案し、ワンストップでサービスを提供できることが強みだ。
主力サービスは02年5月にサービスを開始した「@nyplace(エニプレイス)」である。米AVAYA社製のIP電話交換機システムをクラウドで提供するインバウンド向けサービスだ。12年2月にサービスを開始した「COLLABOS PHONE」は、小規模コールセンター向けに当社オリジナルのソフトフォン型電話交換機能をクラウドで提供している。低価格・短納期で、統計管理に必要なレポート機能や録音機能なども実装している。
07年4月にサービスを開始した「COLLABOS CRM」は、コールセンターに特化した機能構成でインバウンド業務に適した顧客情報管理システム(アプリケーション)である。また10年11月にサービスを開始した「COLLABOS CRM Outbound Edition」は、発信リスト作成や自動架電・クリック架電機能などを備えて、アウトバウンド業務に適した顧客情報管理システム(アプリケーション)である。いずれもクラウドでサービスを提供する。
収益は月額利用料金課金型であり、契約数の増加で収益が積み上がるストック型のビジネスモデルである。そして3年以上の長期利用顧客が全体の約5割を占めている。なお利用コールセンター席数・利用チャネル数(同時回線接続数)・利用ID数、オプション機能追加などによって月額利用料が変動する。
5月8日に発表した前期(15年3月期)の非連結業績は、売上高が前々比9.2%増の14億82百万円、営業利益が同41.2%増の2億05百万円、経常利益が同21.9%増の1億75百万円、純利益が同26.8%増の1億07百万円だった。
営業外費用に株式公開費用や株式交付費用を計上したが、各サービスとも順調に増加して計画値(3月17日公表)を上回る大幅増収増益だった。配当は無配継続とした。またROE(自己資本当期純利益率)は同4.3ポイント低下して15.6%、自己資本比率は同11.8ポイント上昇して74.9%となった。
サービス別動向を見ると、主力の電話交換機システム「@nyplace」はコールセンター席数が同728席増加して4703席、売上高が同5.9%増加して11億40百万円だった。ソフトフォン型「COLLABOS PHONE」はチャネル数が同166チャネル増加して591チャネル、売上高が同51.7%増加して88百万円だった。
また顧客情報管理システムの「COLLABOS CRM」は利用ID数が同149ID増加して2342ID、売上高が同7.5%増加して1億87百万円、そして「COLLABOS CRM Outbound Edition」は利用ID数が同188ID増加して539ID、売上高が同40.0%増加して35百万円だった。
今期(16年3月期)の非連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比10.0%増の16億30百万円、営業利益が同6.9%増の2億20百万円、経常利益が同22.4%増の2億15百万円、純利益が同28.0%増の1億37百万円としている。配当予想は未定としている。各サービスとも前期と同程度の席数・チャネル数・利用ID数の増加を見込み増収増益基調だ。営業外での株式公開費用などの一巡も寄与する。
中期成長戦略としては、顧客基盤拡大に向けた販売力強化、新たな付加価値の提供に向けたサービス・商品の創出加速、安定事業創出に向けた経営基盤強化を掲げている。M&A・アライアンス戦略やアジア地域を中心とする海外展開も推進する方針だ。
マーケティング手法の多様化やコスト低減のニーズも背景として、自社内オンプレミス型コールセンターから、低コストで拡張性や柔軟性も高いクラウド型コールセンターへのシフトが加速すると予想されている。サービス提案力やワンストップサービスの強み、さらに市場シェアNO.1の実績も武器として契約数の増加が期待され、中期的に収益拡大基調だろう。
株価の動き(公開価格3620円、初値3月18日8600円)を見ると、IPO人気が離散して調整局面だ。直近IPO銘柄を見直す動きで5000円割れ水準から4月28日の6600円まで切り返す場面があったが、反落して5月15日の安値4450円まで調整した。15年3月期の大幅増収増益も好材料出尽くしで反応した形だ。
5月15日の終値4570円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS197円29銭で算出)は23倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS1297円95銭で算出)は3.5倍近辺である。
IPOから約2ヶ月で落ち着きどころを探る段階とも言えるが、25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。16年3月期も増収増益基調であり、クラウド化の流れを背景として中期成長期待も高い。指標面は割高な水準とは考えられず、目先的な売りが一巡して反発局面だろう。