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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】DNAチップ研究所は調整のほぼ最終局面、中期成長期待
- 2015/5/18 07:03
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
DNAチップ研究所<2397>(東マ)はDNAチップ技術の事業化を目指すバイオベンチャー企業である。株価は安値圏でのモミ合い展開だが調整のほぼ最終局面だろう。16年3月期は赤字幅が縮小する見込みであり、中期成長期待で反発のタイミングだろう。
将来の個人化医療や未病社会の実現を見据えた遺伝子発現プロファイル収集・統計受託解析など、DNAチップ(DNAマイクロアレイ)技術の事業化を目指す研究開発企業である。研究受託事業(大学病院・研究機関や製薬・食品メーカー向けDNAチップ関連の受託実験・解析・統計処理サービス、および診断サービスなど)を主力として、商品販売事業も展開している。
時々刻々と変化する体調変化や加齢とともに起こる免疫変化などを遺伝子検査するRNAチェック(血液細胞遺伝子発現マーカー検査)に強みを持ち、中期成長に向けて次世代シークエンス受託解析サービスなど研究受託メニューを充実させるとともに、RNAチェックによる遺伝子解析検査サービス、独自開発パッケージソフトウェアによる診断サービス、健康モニタリングサービスなどの診断関連事業を収益柱に育成する方針だ。
診断関連事業では、新規サービスの「リウマチェック」(関節リウマチ薬剤効果予測検査)による多剤効果予測検査サービス、世界初の遺伝子発現による生体年齢の評価方法「免疫年齢」サービス、肺がん患者を対象に血液を用いてEGFR遺伝子の変異を検出する「EGFRチェック」サービスを強化する。
商品販売事業では高校・大学生教育用DNAチップ教材「ハイブリ先生」、乳癌再発リスクを予測する乳癌予後予測キット「MammaPrint」(導入商品)、問診パッケージソフト「iRIS:関節リウマチ問診システム」、DNA鑑定向け硬組織(歯牙・骨)からのDNA抽出キット「Tbone EX Kit」などの販売を強化している。
戦略商品に関しては中長期的に一般健康診断への採用拡大を目指し、大腸がん・悪性神経膠腫の術後予後予測、免疫年齢・肥満・うつ病・疲労・アルツハイマーなどの診断関連マーカーの開発・事業化、医薬品開発と一体化した診断マーカー開発(コンパニオン診断薬開発支援)、再生医療支援事業(培養細胞の安全性評価系)なども強化して業容を拡大する。14年3月には「神経膠腫予後予測方法、およびそれに用いるキット」に関する国内特許を取得した。
14年11月に第三者割当増資および新株予約権発行で、エンジニアリングプラスチック事業のエンプラス<6961>と資本業務提携した。バイオ事業における業界ネットワークの補完、新製品開発能力の強化、海外インフラの利用などでシナジー効果を目指すとしている。
15年2月には、末梢血のRNA発現を調べることにより個人の生体年齢を評価する受託サービス「免疫年齢」を開始した。加齢遺伝子(年齢とともに発現量が変化する遺伝子)から選んだ約90種類の遺伝子の発現量をマイクロアレイ法によって測定し、独自開発した回帰式を用いて生体年齢を算出することに成功した。世界初の遺伝子発現による生体年齢の評価方法である。この検査で体調変化の客観的評価ができるようになるため、健康食品、機能性食品、サプリメント、運動などアンチエイジング(抗加齢)や健康への取り組みの評価に利用することを目指す。
15年3月には、愛媛大学および北海道大学とともにJST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に採択された共同研究で、脳腫瘍の一種であるグリオーマ(神経膠腫)の機能を抑制するマイクロRNAを発見した。本研究は癌の根治療法を生み出すと期待されている。
5月7日には、関節リウマチ患者の血液中の遺伝子発現解析から疾患活動性と高い相関性を示すバイオマーカーを発見し、学校法人慶應義塾および学校法人埼玉医科大学と共同出願で、本件に関する国内特許を15年1月9日付で取得したと発表している。本特許を活用して、関節リウマチの薬剤効果の予測研究を含め研究開発(RNAチェック技術開発)の加速と診断メニューの拡充を進める。
5月11日には、5月29日~31日開催(福岡国際会議場)の「第15回日本抗加齢医学会総会」に出展すると発表した。血液遺伝子発現による生体年齢評価サービス「免疫年齢」を案内する。
前期(15年3月期)の非連結業績(4月10日に減額)は売上高が前々期比2.4%増の3億57百万円、営業利益が99百万円の赤字(前々期は44百万円の赤字)、経常利益が1億19百万円の赤字(同44百万円の赤字)、純利益が1億35百万円の赤字(同45百万円の赤字)だった。
研究受託事業における受託サービスで大型案件の受注がずれ込んだため、売上高が計画を下回り微増収にとどまった。そして診断サービスの新規メニュー開発に向けた研究開発費の増加、営業外での新株発行費用の発生、および減損損失計上などで各利益の赤字幅が拡大した。事業別売上高は研究受託事業が同1.5%増の3億40百万円、商品販売事業が同23.8%増の17百万円だった。
ただし営業黒字化に向けた研究受託メニュー強化や診断サービス拡充などの成果が着実に表れているようだ。研究受託の大型案件では創薬系15件、次世代シークエンス受託6件、国家プロジェクト(公募事業)8件、健康支援関連9件、再生医療支援関連33件などを受注した。
今期(16年3月期)の非連結業績予想(4月23日公表)は売上高が前期比23.1%増の4億40百万円、営業利益が48百万円の赤字、経常利益が48百万円の赤字、純利益が49百万円の赤字としている。
事業別売上高の計画は、研究受託事業が同18.8%増の4億04百万円、商品販売事業が同2.1倍の36百万円である。提案型研究受託の強化で製薬や食品会社向けビジネスが拡大する。診断サービスでは「リウマチェック(多剤効果判定)」「免疫年齢」「EGFRチェック」を拡販し、診断サービスの海外展開も推進する。増収効果に加えて、採算性の高いメニューの重点拡販や作業効率改善による粗利益率上昇、さらに営業外での一時的費用の一巡、特別損失の一巡で赤字幅が縮小する見込みだ。
中期的な業績改善推進プランとして「研究開発から事業化への加速」を掲げている。新規研究受託メニュー(がん領域を中心としたエクソソーム受託サービスや健康支援事業など)の開発・強化、診断支援サービス(リウマチェックやRNAチェックなど)の開発・拡充推進、エンプラスとの資本業務提携効果(バイオ事業における業界ネットワークの補完、新製品開発能力の強化、海外インフラの活用など)などで中期成長が期待される。
株価の動きを見ると、動意づく場面もあるが買いが続かず安値圏でモミ合う展開だ。5月14日と15日には768円まで調整した。ただし1月の年初来安値760円に接近して調整のほぼ最終局面だろう。
5月15日の終値は779円だった。週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、800円割れ水準はほぼ底値圏の形だ。中期成長期待で反発のタイミングだろう。