生化学工業は調整一巡、21年3月期1Qは新型コロナ影響減益、通期予想未定

 生化学工業<4548>(東1)は関節機能改善剤アルツが主力の医薬品メーカーである。21年3月期第1四半期は新型コロナウイルスの影響や研究開発費の増加で減収減益だった。通期予想は未定としている。当面は新型コロナウイルスの影響が意識されるが、期後半からの緩やかな回復を期待したい。株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形だが、業績悪化懸念の織り込みが完了して出直りを期待したい。

■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー

 糖質科学分野が主力の医薬品メーカーで、国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け単回投与関節機能改善剤Gel-One、米国向け3回投与関節機能改善剤VISCO-3、米国向け5回投与関節機能改善剤SUPARTZ-FX、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。

 20年3月期の事業別売上構成比は、医薬品事業が77%(国内医薬品48%、海外医薬品26%、医薬品原体が4%)で、LAL事業が23%だった。

 20年3月には海外製造拠点としてカナダのダルトン社を子会社化した。なおダルトン社を買収する際に中間持株会社として設立したSEC社、および買収目的会社として設立したSAC社が特定子会社に該当することになったため、ダルトン社とSAC社が現地法に基づく新設合併を行い、新設された新ダルトン社が旧ダルトン社から商号および事業を引き継いだ。

■新薬開発は糖質科学分野に焦点

 研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞り、開発パイプラインには腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603、変形性膝関節症改善剤SI-613、腱・靱帯付着部症を適応症とするSI-613-ETP、ドライアイ治療剤SI-614、間質性膀胱炎を適応症とするSI-722、癒着防止材SI-449がある。

 SI-6603は日本では18年3月製造販売承認を取得し、科研製薬<4521>が18年8月販売開始(腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコア)した。またスイスのフェリング社と日本を除く全世界におけるライセンス契約を締結している。マイルストーン型ロイヤリティーの総額は最大95百万米ドル(うち契約一時金5百万米ドル)である。米国では第3相臨床の追加試験が22年11月経過観察終了予定だが、新型コロナウイルスの影響で進捗が遅れているため、被験者増加や治験施設増加など各種施策を実行して組み入れを促進する。

 SI-613は、小野薬品工業<4528>と日本における共同開発・販売提携に関する契約を締結し、20年1月変形性関節症治療剤ONO-5704/SI-613の国内製造販売承認申請を行った。マイルストーン型ロイヤリティーの総額は最大120億円(うち契約一時金20億円)である。米国では第2相臨床試験結果の解析が終了し、第3相臨床試験の検討と並行して提携先の選定を進めている。中国では、20年4月エーザイ<4523>と共同開発および販売提携に関する契約を締結し、臨床開発計画の策定を進めている。SI-613-ETP(小野薬品工業とのSI-613の契約に含む)は後期第2相臨床試験の解析が終了し、次のアクションを検討中である。

 SI-614は米国で第2・3相試験が終了し、販売提携先を選定中である。SI-722は19年11月、米国における第1・2相臨床試験は新型コロナウイルスの影響で約4ヶ月の遅れを見込んでいる。治験施設の稼働は回復傾向である。SI-449は18年5月開始した日本でのパイロット試験で良好な結果が確認され、20年5月に国内ピボタル試験を開始した。

■22年3月期経常利益45億円目標

 中期経営計画の目標には、22年3月期売上高283億円、経常利益45億円、SKK EBITDA(営業利益に減価償却費、受取ロイヤリティーを加えた利益指標)50億円、海外売上高比率50.0%を掲げている。想定為替レートは1米ドル=105円、研究開発費は売上比25~30%である。利益配分は配当性向50%を目指す。

 重点施策としては、新たな収益の柱となる新薬開発の加速、製品の市場拡大による収益基盤強化、生産性向上のための改革を推進する。

■21年3月期1Q減益、通期予想は新型コロナウイルス影響で未定

 21年3月期連結業績・配当予想は新型コロナウイルスの影響を考慮して未定としている。外来受診の抑制や緊急を要さない医療処置の実施時期延期などで、医療機関への納入本数の減少が見込まれるとしている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比8.8%減の69億72百万円で、営業利益が68.3%減の3億05百万円、経常利益が51.2%減の6億10百万円、純利益が46.0%減の5億29百万円だった。

 新型コロナウイルスの影響で外来受診や手術件数が減少し、国内医薬品の薬価引き下げ、研究開発費の増加も影響した。医薬品事業は13.6%減収(国内がヘルニコアの寄与で0.1%増収、海外が41.8%減収、医薬品原体が1.7%増収)だった。LAL事業は新型コロナウイルスの影響が限定的で7.7%増収だった。営業外では投資有価証券売却益が減少したが、受取ロイヤリティーが増加し、為替差損が減少した。

 当面は新型コロナウイルスの影響が意識されるが、期後半からの緩やかな回復を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形だが、業績悪化懸念の織り込みが完了して出直りを期待したい。8月14日の終値は1054円、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1059円40銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約599億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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