寿スピリッツは反発の動き、21年3月期は新型コロナ影響だが期後半からの緩やかな回復期待

 寿スピリッツ<2222>(東1)は「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げ、首都圏エリア強化や商品プレミアム化などの重点施策を推進している。21年3月期は新型コロナウイルス影響で厳しい状況だが、期後半から緩やかに回復に向かうことを期待したい。株価は第1四半期の大幅減収・赤字を嫌気して年初来安値を更新したが、売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■「お菓子の総合プロデューサー」として地域限定ブランド菓子を展開

 地域限定ブランド菓子の製造・販売を展開する持株会社で、全国各地のお菓子のオリジナルブランドとショップブランドを創造する「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げている。さらにWSR(ワールド サプライジング リゾート)宣言を経営スローガンに掲げ、中期経営目標を売上高経常利益率20%としている。

 主要子会社(セグメント)は、ショップブランド「東京ミルクチーズ工場」などを展開するシュクレイ、「LeTAO」などを展開するケイシイシイ、「お菓子の壽城」などを展開する寿製菓・但馬寿、「赤い風船」などを展開する九十九島グループ、および「コンディトライ神戸」などを展開する販売子会社(東海3社、中国・九州4社、関西2社)である。

 20年3月期の販売チャンネル別売上構成比は、通信販売6.4%(うちルタオ通販5.0%)、店舗販売(直営店舗、催事)43.3%、卸売(駅・空港・高速道路SAなどの小売店、代理店卸、OEM)46.6%、海外3.6%、その他0.1%だった。

 駅・空港・高速道路SAなど、交通機関チャネルでの土産品としての販売比率が高いことも特徴である。またクリスマス・年末年始・バレンタイン・ホワイトデー商戦などで、下期の構成比が高い季節特性もある。

■首都圏WSR化展開など重点施策を推進

 重点施策としては、ハイブリッド店舗などビジネスモデル・商品・売場・販売のGTS(グレート・トランスフォーメーション・サクセス)化、免税売場拡大などインバウンド対策の強化、海外における事業モデル構築、首都圏でのWSR化展開(シュクレイの既存店売上拡大、新規出店、および催事・卸売拡大、グループ各社の主力ブランドの催事展開)などを推進している。

 また新たな重点施策としてメインとニューの項目を掲げ、既存ブランド・既存店・既存商品のさらなる深化、新ブランド・新店舗・新商品で新たな世界観創出することを目指している。

 重点施策の20年3月期売上高は、インバウンド(国際線ターミナル売店卸売上)が19年3月期比16.7%増の53億75百万円、海外(現地法人売上+ロイヤルティ含む国内出荷売上)が23.5%増の16億28百万円、シュクレイ(首都圏WSR化)が16.9%増の161億99百万円だった。

■21年3月期1Qは新型コロナウイルス影響で大幅減収・赤字

 21年3月期第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比74.4%減の27億15百万円で、営業利益が24億09百万円の赤字(前年同期は15億54百万円の黒字)、経常利益が17億55百万円の赤字(同15億67百万円の黒字)、純利益が11億63百万円の赤字(同10億22百万円の黒字)だった。大幅減収・赤字だった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けた外出・移動自粛、店舗臨時休業などの影響で、事業活動の大幅な縮小を余儀なくされた。

 売上面では「LeTAO」を中心とする通信販売が大幅伸長したが、セグメント別にはシュクレイが81.4%減収、ケイシイシイが61.3%減収、寿製菓・但馬寿が78.4%減収、九十九島グループが78.9%減収、販売子会社が87.0%減収、その他が48.8%減収だった。なお雇用調整助成金の申請などにより、助成金収入6億23百万円を営業外収益に計上した。

 通期の連結業績・配当予想は引き続き未定としている。第1四半期の月別売上(海外子会社除く)は4月が82.4%減、5月が79.0%減、6月が61.5%減だった。7月以降の状況として、緊急事態宣言解除によって一部に回復の兆候が見られるが、全体として回復ペースは低調としている。

 新型コロナウイルスの影響を踏まえた緊急対策として、感染予防策の徹底、コスト削減、資金流動性の確保、在庫の適正化、収束後を見据えた新ブランド・新商品開発の準備、通信販売の対策強化を推進する方針だ。なお8月にはシュクレイとケイシイシイが、JR東京駅に開業した新商業施設に新ブランドを含めた合計7店舗を出店した。21年3月期は新型コロナウイルス影響で厳しい状況だが、期後半から緩やかに回復に向かうことを期待したい。

■株主優待制度は毎年3月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年3月末現在の100株以上保有株主を対象に、保有株式数に応じて自社グループ製品や直営店舗利用優待券を贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は反発の動き

 株価は第1四半期の大幅減収・赤字を嫌気して年初来安値を更新したが、目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。悪材料の織り込み完了して出直りを期待したい。8月17日の終値は4125円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS680円11銭で算出)は約6.1倍、時価総額は約1284億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る