アルコニックスは戻り試す、21年3月期減収減益予想だが上振れ期待

 アルコニックス<3036>(東1)は商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指している。21年3月期は新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で減収減益予想としている。ただし第1四半期の利益は第2四半期累計予想を超過達成した。下期偏重の期初計画だが通期上振れ期待が高まる。株価は3月の安値を底にして順調に下値を切り上げている。第1四半期業績に対しても高進捗率を好感する動きだった。戻りを試す展開を期待したい。

■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」目指す

 軽金属・銅製品(伸銅品、銅管など)、電子・機能材(レアメタル・レアアース、チタン・ニッケル製品など)、非鉄原料(アルミ・亜鉛地金など)、建設・産業資材(配管機材など)を取り扱う非鉄金属商社グループである。

 商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。

■製造が利益柱

 20年3月期セグメント別売上高構成比は、商社流通79%(電子機能材30%、アルミ銅50%)で製造21%(装置材料11%、金属加工10%)だが、経常利益構成比は商社流通14%(電子機能材2%、アルミ銅13%)で製造85%(装置材料7%、金属加工78%)だった。

 レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、M&Aも積極活用して「非鉄金属の総合企業」を目指す成長戦略によって、利益面では製造、特に金属加工が柱に成長している。

 中期経営計画(21年3月期~23年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、経営目標値を23年3月期の経常利益87億円超、純利益60億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0~1.3倍程度としている。3年間の投融資総額はM&A・事業投資を中心に250億円~300億円としている。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指して積極投資を推進する方針だ。

 18年12月摩擦調整材カシューパーティクルを製造販売する東北化工を連結子会社化してブレーキ関連市場に参入、19年2月カーボンブラシを製造販売する富士カーボン製造所を連結子会社化、19年7月メキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業をメキシコFUJI-MX社が譲り受けて営業開始、19年10月香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立、20年3月連結子会社の平和金属を完全子会社化した。

■21年3月期減収減益予想だが上振れ期待

 21年3月期連結業績予想は売上高が20年3月期比9.6%減の2100億円、営業利益が24.7%減の39億円、経常利益が26.2%減の40億円、純利益が33.7%減の24億円としている。配当予想は20年3月期と同額の42円(第2四半期末21円、期末21円)である。

 新型コロナウイルスによる経済収縮の影響を考慮して減収減益予想としている。商社流通―電子機能材(経常利益計画11億円)は、5G本格稼働に伴う電子材料需要増加や、レアメタル棚卸資産評価損の一巡で利益改善を見込む。商社流通―アルミ銅(同10億円)は、自動車関連を中心に需要減少だが利益改善を見込む。製造―装置材料(同4億円の赤字)はメッキ材料、非破壊検査、小型モーター用カーボンブラシの需要減少で利益悪化を見込む。製造―金属加工(同23億円)は半導体実装機・半導体製造装置向け精密研削加工部品、自動車向け精密金属プレス部品の需要減少で利益悪化を見込む。

 第1四半期は、売上高が前年同期比20.1%減の480億95百万円、営業利益が6.0%減の11億57百万円、経常利益が19.6%減の12億43百万円、純利益が38.4%減の5億55百万円だった。

 リモートワーク需要などで半導体・電子材料関連は増加したが、自動車関連の需要が急減したため全体として減収減益だった。ただし前期計上したレアメタル棚卸資産評価損が解消したため、商社流通-電子機能材の損益が大幅改善し、全体としても営業利益の減益が小幅にとどまった。

 セグメント別経常利益は、商社流通―電子機能材が3億14百万円の黒字(前年同期は14百万円の赤字)、商社流通―アルミ銅が39.1%減の1億86百万円、製造―装置材料が7百万円の赤字(同25百万円の黒字)、製造―金属加工が38.2%減の7億51百万円だった。

 第1四半期は減収減益だが、利益進捗率は通期予想に対して営業利益29.7%、経常利益31.1%、純利益23.1%と順調だった。また第2四半期累計予想(営業利益11億10百万円、経常利益11億90百万円、純利益5億50百万円)を超過達成した。下期偏重の期初計画だが通期上振れ期待が高まる。

■株主優待制度は3月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は戻り試す

 3月27日発表の自己株式取得(上限80万株・8億円、取得期間20年4月1日~20年10月31日)については、20年7月31日時点で累計取得株式数が42万8600株となっている。

 株価は3月の安値を底にして順調に下値を切り上げている。第1四半期業績に対しても高進捗率を好感する動きだった。戻りを試す展開を期待したい。8月19日の終値は1396円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS94円80銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想42円で算出)は約3.0%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1578円62銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約362億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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