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松田産業は戻り試す、21年3月期減収減益予想だが保守的
- 2020/8/21 08:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
松田産業<7456>(東1)は貴金属関連事業および食品関連事業を展開している。大型リチウムイオン電池リサイクル事業も開始した。21年3月期は新型コロナウイルスの影響を考慮して減収減益予想としたが、第1四半期は相場上昇の貴金属関連事業が牽引して増収増益だった。通期予想は保守的だろう。上振れを期待したい。株価は通期減収減益予想を嫌気する形で年初来高値圏から急反落したが、目先的な売り一巡して戻りを試す展開を期待したい。
■貴金属リサイクルや農林水産品販売を展開
貴金属リサイクル(貴金属事業)や産業廃棄物処理(環境事業)などの貴金属関連事業、および農林水産品を扱う食品関連事業を展開している。20年3月期の売上高構成比は貴金属関連事業62%、食品関連事業38%、営業利益構成比は貴金属関連事業79%、食品関連事業21%だった。
貴金属リサイクルは、金・銀・白金族などの貴金属製品やめっき用化成品をエレクトロニクス業界へ販売するとともに、半導体や電子部品を製造する過程で規格外となった部品(スペックアウト品)などの貴金属含有スクラップを国内外のメーカーから回収・処理・製錬することで、貴金属をリサイクルする。
産業廃棄物処理は、写真の感光材料からの銀の回収、廃酸や廃アルカリの無害化中間処理など、産業廃棄物の回収・処理を行っている。無害化処理技術に強みを持ち、全国47都道府県での収集運搬業許可を得ている。
8月6日にはセメント製造設備を利用した大型リチウムイオン電池リサイクル事業の開始を発表した。太平洋セメントと共同で、敦賀セメント構内に設置した焙焼設備を用いて大型リチウムイオン電池リサイクル技術開発を実施してきたが、敦賀セメントが広域認定制度におけるリチウムイオン電池処理施設に認定されたため、20年4月から営業運転を開始した。
食品関連事業は水産品、畜産品、農産品の販売を展開し、新たな販売市場の開拓および現地における仕入強化を推進している。19年10月には中華民国(台湾)市場において新規展開を開始した。
収益面では、半導体・電子部品などエレクトロニクス業界の生産動向、貴金属および食品市況の影響を受けやすい特性がある。
■22年3月期営業利益55億円目標
新中期経営計画(19年度~21年度)の目標値は22年3月期売上高2200億円、営業利益55億円、営業利益率2.5%、ROE6.0%としている。
貴金属関連事業では、基幹事業の基盤強化、資源循環ビジネスをはじめとする顧客価値提案強化と営業体制整備、自動車関連市場・化学関連市場・海外市場の拡大、E-スクラップ・高機能材料・LiBリサイクル等の事業領域拡大を推進する。食品関連事業では、基幹事業の基盤強化、強い商品づくりのための開発・品質保証・生産管理支援機能強化、顧客ニーズに応じた商品ラインナップ拡大、グローバル展開加速を推進する。
■21年3月期減収減益予想だが保守的
21年3月期連結業績予想(期初時点では未定としていたが8月7日に公表)は、売上高が20年3月期比2.4%減の2060億円、営業利益が11.9%減の55億円、経常利益が10.7%減の57億円、純利益が5.1%減の38億40百万円としている。配当予想は2円増配の36円(第2四半期末18円、期末18円)である。
第1四半期は、売上高が前年同期比7.6%増の535億40百万円、営業利益が2.8%増の16億34百万円、経常利益が3.9%増の16億84百万円、純利益が2.3%増の11億24百万円だった。食品関連事業は低調だったが、相場上昇の貴金属関連事業が牽引した。
貴金属関連事業は16.5%増収で22.0%増益だった。貴金属リサイクルの取扱量は横ばい、産業廃棄物処理受託の取扱量は減少したが、金製品の販売量増加、貴金属相場の上昇で大幅増収増益だった。食品関連事業は4.9%減収で39.6%減益だった。農産品が増加したが、水産品および畜産品が減少し、保管料のなどの増加も影響した。
通期は減収減益予想とした。新型コロナウイルスの影響が、貴金属関連事業では業績への影響が特に下期に及ぶこと、食品関連事業では通期にわたって需要低迷の影響が残ることを想定した。ただしやや保守的だろう。上振れを期待したい。
■株主優待制度は毎年3月末の継続1年以上保有株主が対象
株主優待制度は毎年3月31日現在、1単元(100株)以上を継続1年以上保有する国内在住株主を対象として株主優待品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は目先的な売り一巡して戻り試す
5月14日発表の自己株式取得(上限16万株・2億円、取得期間20年6月1日~20年8月31日)については、7月31日時点で累計取得株式数9万6600株となった。
株価は決算発表前に急伸していたこともあり、通期減収減益予想を嫌気する形で年初来高値圏から急反落したが、目先的な売り一巡して戻りを試す展開を期待したい。8月20日の終値は1525円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS146円07銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の36円で算出)は約2.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2294円82銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約441億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)