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テクマトリックスは高値更新の展開、21年3月期予想は未定だが収益拡大基調
- 2020/8/24 09:04
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
テクマトリックス<3762>(東1)は、セキュリティ関連製品販売やクラウドサービス提供などの情報サービス事業を展開し、成長ドライバーとしてクラウドサービスが拡大している。21年3月期第1四半期は大幅増収増益だった。新型コロナウイルスに伴うリモートワーク需要に対応したセキュリティ関連製品やサービスが好調だった。通期予想は引き続き未定としているが、新型コロナウイルスによるプラス影響が大きいだけに収益拡大基調だろう。株価は好業績を評価して上場来高値更新の展開だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■成長ドライバーのクラウドサービスが拡大
セキュリティ関連製品販売やクラウドサービス提供などの情報サービス事業を展開し、成長ドライバーとしてクラウドサービスが拡大している。
グループ会社は、医療情報クラウドサービスのNOBORI(三井物産<8031>が出資して共同で事業展開)、遠隔画像診断関連ITサービスの医知悟、NOBORIの子会社(19年4月子会社化)でクラウド型線量管理システムのA-Line、ITシステム基盤コンサルティングのクロス・ヘッド、クロス・ヘッドの子会社で沖縄県内におけるIT人材教育やデータセンターサービスの沖縄クロス・ヘッド、システム開発のカサレアル、金融系ITベンチャーの山崎情報設計(19年11月子会社化)である。
セグメント区分は情報基盤事業(ネットワーク・セキュリティ関連ハードウェアの販売、保守・運用・監視サービスなど)、およびアプリケーション・サービス事業(医療・CRM・EC・金融を重点分野とするクラウドサービス提供、システム受託開発など)としている。
20年3月期のセグメント別売上高構成比は情報基盤事業67%、アプリケーション・サービス事業33%、営業利益構成比は情報基盤事業75%、アプリケーション・サービス事業25%だった。またストック売上比率は情報基盤事業で38.6%、アプリケーション・サービス事業で53.7%だった。
クラウドサービスでは、コンタクトセンター向け顧客情報・対応履歴一元管理CRMシステム「Fastシリーズ」や、医療情報クラウドサービス「NOBORI」などを展開している。20年3月期末の「NOBORI」の画像保管患者数は3118万7000人、保存検査件数は1億7779万4000件となった。
■全領域におけるサービス化を加速
中期経営計画「GO BEYOND 3.0」では、目標数値に21年3月期売上高280億円、営業利益27億円(情報基盤事業の売上高が185億円で営業利益が17億50百万円、アプリケーション・サービス事業の売上高が95億円で営業利益が9億50百万円)を掲げている。
事業戦略としては、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、セキュリティ&セイフティ(安心と安全)の追求、資本・業務提携や大学・研究機関との連携など事業運営体制の多様化、全領域におけるサービス化の加速、AI利用を含むデータの利活用、BtoC(消費者向けビジネス)への参入、海外市場での事業の加速、グループを横断した人財・技術の有効活用など事業運営基盤の強化、M&Aの活用を掲げている。
アライアンス戦略では、20年5月NOBORIがエムスリー<2413>と業務提携、NOBORIがインドのDeepTek社に出資して資本業務提携、20年6月NOBORIがエムスリーと共同運営する医用画像診断支援AIプラットフォーム事業においてエルピクセルと業務提携、20年7月NOBORIがクラウド型ERプラットフォームのTXP Medicalと業務提携、沖縄クロス・ヘッドがロゼッタ<6182>と販売代理店契約を締結して業務提携した。
新サービスでは、20年5月NOBORIが医療情報を患者がスマートフォンから閲覧できるPHRサービスを開始、テクマトリックスが学校法人軽井沢風越学園向けにコミュニケーション・プラットフォーム「typhoon」を新規開発・導入して教育分野領域のソリューションを開始、20年6月クロス・ヘッドがテレワーク時代の情報漏洩対策と生産性向上をワンストップサービスで実現するCASSの提供を開始、NOBORIがエムスリーと共同運営する医用画像診断支援AIプラットフォーム事業においてCOVID-19肺炎画像解析プログラムの販売を開始した。
■21年3月期予想は新型コロナウイルスを考慮して未定だが収益拡大基調
21年3月期の連結業績・配当予想は、新型コロナウイルスの影響を現段階において合理的に算定することが困難として、未定としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比17.0%増の74億46百万円、営業利益が73.3%増の9億69百万円、経常利益が74.2%増の9億73百万円、純利益が77.0%増の6億54百万円だった。新型コロナウイルスの影響でリモートワークを支援するセキュリティ関連製品の需要が高まり、情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業とも好調に推移して大幅増収増益だった。
情報基盤事業では次世代ファイアウォール、個人認証システム、総合セキュリティ運用・監視サービスなど、アプリケーション・サービス事業では医療分野の医療情報クラウドサービスNOBORI、CRM分野のFAQシステムなどが好調だった。なお収益認識に関する会計処理方法変更により、従来の方法に比べて、情報基盤事業では売上高が12億14百万円減少、利益が96百万円減少、アプリケーション・サービス事業では売上高が55百万円増加、利益が24百万円増加している。
通期予想は引き続き未定としているが、新型コロナウイルスによるプラス影響が大きいだけに収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年9月末の株主対象
株主優待制度は、毎年9月30日現在の500株以上保有株主を対象に、保有株式数に応じて実施(詳細は会社HP参照)している。なお20年7月1日付(効力発生日)で1株を2株に分割したが、基準を変更していない。
■株価は上値試す
株価(20年7月1日付で株式2分割)は第1四半期の好業績を評価して上場来高値更新の展開だ。目先的には過熱感で利益確定売りが優勢になる可能性もあるが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。8月21日の終値は2325円、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS343円67銭で算出)は約6.8倍、時価総額は約1035億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)