【どう見るこの相場】雪国まいたけの初値形成次第で再上場株にワンモア・チャンスを期待
- 2020/8/31 10:10
- どう見るこの相場
相場格言では「鬼より怖い一文新値」という。前回の高値を一文(1円)だけ更新し伸び切った新高値銘柄は、その反動は厳しい、ダブルトップ形成の売りサインと教えている。安倍晋三首相の辞任は、大叔父の故佐藤栄作氏の総理大臣としての連続在任記録を上回ったわずか5日後に突然、表明され、相場格言流にいうなら「5文(日)新値」であった。2007年9月の第1次安倍内閣時の辞任に次ぐダブルトップともなり、当然、その反動は激しく、前週末28日の後場取引時間中に辞任表明報道が市場に流れた途端、日経平均株価は、瞬間風速として614円安と急落し「アベノショック」となった。
「安倍一強」政治が一気に崩れるとして政局不安が強まり、異次元金融緩和政策「クロダノミクス」継続の不透明化懸念から為替相場も、円高・ドル安に振れた。早速、ポスト安倍候補の目立てが始まり、後継内閣は、来年10月の衆議院議員の任期切れまでの選挙管理内閣との観測も強まり、当コラムが前回(8月24日付け)取り上げた選挙関連銘柄の三羽烏が急伸した。麻生フオームクリート<1730>(JQS)とイムラ封筒<3955>(東2)は、それぞれ後場急伸してストップ高し、ムサシ<7521>(JQS)は、年初来高値を大幅に更新した。
週明けも、自由民主党の各派閥の動向などを巡って後任候補の駆け引きが続き、株価も「政局相場」の乱高下が予想される。投資スタンスとして、選挙関連銘柄や政局関連銘柄の深掘り・横展開なども有力な選択肢となるが、今週の当コラムは、敢えて別のテーマ株にアプローチしてみることとした。企業再生関連の再上場株である。安倍首相は、第1次安倍内閣時に退陣したあと、健康問題をクリアして第2次安倍内閣を組閣し、前回の退陣を教訓にして長期政権化を実現した。今回も、持病の潰瘍性大腸炎の悪化で辞任となったが、病状次第では一国会議員レベルを超えて影響力を残す院政も考えられないとはいえない。上場企業も同様で、一度、上場廃止となった銘柄が、再上場されれば、上場廃止となったことをスプリングボードに企業価値、投資価値はより高まるはずである。
折から9月17日に雪国まいたけ<1375>(東証第1部か第2部か市場区分は未定)が、5年3カ月ぶりに再上場される。また再上場ではないが、10月6日には、東芝<6502>(東2)が、事業売却のため分社化して設立した旧東芝メモリホールディングスのキオクシアホールディングス<6600>(東証第1部か第2部か市場区分は未定)が、新規株式公開(IPO)される。IPO市場は、連続最高値更新の米国のナスダック市場のグロース株人気に追随してフィーバーが続き、T&S<4055>(東マ)やニューラルポケット<4056>(東マ)など、公開価格から10倍化する短期テンバーガーが続出したが、前週末28日には、米国市場でFRB(米連邦準備制度理事会)が、新金融緩和指針を決定したことでグロース株よりバリュー株買いが強まり、安倍首相辞任表明も重なり、T&Sはストップ安し、ニューラルも急反落した。
そこに雪国まいたけの再上場である。IPO市場では、再上場株の初値形成はだいたい不首尾に終わる。多くが、投資ファンドの出口戦略の株式売出しを伴い資金吸収額が過大となるためで、雪国まいたけも、2015年4月に株式公開買い付け(TOB)をした投資ファンドのベインキャピタルの株式売出しが中心になる。ただ、キオクシアホールディングスも、筆頭株主のベインキャピタルの株式売出し案件であることなどから、雪国まいたけの初値形成が、予想外に堅調となるようなら、再上場株にバリュー株買いが再燃する展開も想定される。