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ジーニーは21年3月期黒字転換予想、マーケティングテクノロジー事業で成長目指す
- 2020/8/31 10:26
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジーニー<6562>(東マ)は、アドテクノロジーをベースとするマーケティングテクノロジー事業で成長を目指している。21年3月期第1四半期は赤字が縮小した。そして新型コロナウイルスの影響が一定程度残るが、第2四半期からの営業黒字化を目指し、通期増収・黒字転換予想としている。収益改善を期待したい。株価は安値圏でモミ合う展開だが下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。
■マーケティングテクノロジー事業で成長目指す
インターネットメディアの広告収益最大化を図る独自のアドテクノロジー(ウェブサイトやスマートフォンアプリ等に各々の閲覧者に合った広告を瞬時に選択して表示させる技術)をベースとして、事業領域拡大戦略およびサービス提供地域拡大戦略を推進し、マーケティングテクノロジー事業(アド・プラットフォーム、マーケティングソリューション、海外)で成長を目指している。
収益面の季節特性として、広告主の予算配分の影響を受けるため、12月および年度末の3月に売上が集中する傾向がある。なお14年にソフトバンク(現ソフトバンクグループ)と資本業務提携し、現在はソフトバンク<9434>の持分法適用会社である。
■アド・プラットフォームはDOOH領域に積極展開
アド・プラットフォームは、ネットメディア向けサプライサイドビジネスプラットフォーム「GenieeSSP」を主力として、広告主向けデマンドサイドビジネスプラットフォーム「GenieeDSP」および「GenieeDMP」も展開している。
ネット広告取引市場では、RTB(広告枠を自動で瞬時にオークション形式で取引するシステム)によって取引されるが、同社独自の広告配信最適化アルゴリズムで効果的な広告配信を実現している。SSPサービスでは16年度から国内トップシェアを確立している。さらにビッグデータやAIを活用して、広告配信の精度向上や自動化に取り組んでいる。
また事業領域拡大戦略で、DOOH(交通広告や屋外広告など自宅以外の場所で接触する屋外デジタル広告)領域に積極展開している。
18年11月タクシー後部座席に設置されたデジタルサイネージ向け広告配信プラットフォームを開発し、19年2月にはDeNA<2432>のタクシー配車サービスでの本格運用を開始した。19年8月ジオネクサスにDOOH広告配信プラットフォームをOEM提供した。19年11月メディカルアシストTVと業務提携し、歯科医院デジタルサイネージ向けプログラマティックOOH広告配信を開始した。
20年1月にはヒットと業務提携した。そして20年2月首都高速道路沿い大型屋外ビジョン向けプログラマティックOOH広告配信を開始、20年3月東京・渋谷ハチ公口および大阪・御堂筋沿いにプログラマティックOOH広告配信を開始した。
20年7月には、京王エージェンシーと業務提携してデジタル広告効果の可視化に向けた実証実験を開始した。20年8月には、ユニカと業務提携してDOOH向け広告配信サービス「YUNIKA VISION DOOH」の提供を開始した。
■マーケティングソリューションと海外も拡大
マーケティングソリューションは、CRM(顧客管理)/SFA(営業管理)システム「ちきゅう」、マーケティングオートメーション「MAJIN」、チャット接客ツール「chamo」を展開している。
CRM/SFAシステム「ちきゅう」は、顧客管理CRMシステムおよび商談管理SFAシステムを一体化させたクラウド型サービスである。マーケティングオートメーション「MAJIN」は企業のマーケティング活動を自動化し、効率的に購買・契約等を行うためのプラットフォームである。19年9月には「ちきゅう」と「MAJIN」を連携し、ワンプラットフォーム化によってクラウドサービス拡大戦略を推進している。
海外は東南アジアを中心に「GenieeSSP」などを展開している。デマンドサイドは不採算案件の縮小など事業構造改革を推進し、ソフトバンクと協業してクロスボーダーサービスを強化・拡大する方針だ。
■22年3月期EBITDA30億円超目標
中期経営計画では目標値に22年3月期売上高250億円、売上総利益60億円、EBITDA30億円超を掲げている。
事業ポーフォリオマネジメントとKPI管理を強化しつつ、プロダクト間クロスセルの取り組み拡大、事業領域(事業軸)とサービス提供地域(地域軸)の拡大を推進する。マーケティングソリューションなど、利益率の高いプロダクトやストック型収益の構成比を高めて、中期的に収益力向上を目指す。
■21年3月期黒字転換予想
21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定としていたが8月12日に公表)は、売上高が20年3月期比8.6%増の155億80百万円、営業利益が1億86百万円の黒字(20年3月期は91百万円の赤字)、経常利益が1億74百万円の黒字(同1億41百万円の赤字)、純利益が1億34百万円の黒字(同1億78百万円の赤字)とした。
第1四半期は売上高が前年同期比9.7%減の30億63百万円、営業利益が1億32百万円の赤字(前年同期は1億62百万円の赤字)、経常利益が1億28百万円の赤字(同1億69百万円の赤字)、純利益が1億02百万円の赤字(同1億51百万円の赤字)だった。
新型コロナウイルスの影響で広告需要が減少して減収・赤字だったが、不採算の取り組みの停止などで収益性が改善し、全体として赤字縮小した。なおサービス・エリア別の売上は、アド・プラットフォーム事業が4.8%減収、マーケティングソリューション事業が34.4%減収、海外事業が23.9%減収だった。
通期ベースでは増収・黒字転換予想とした。新型コロナウイルスの影響(売上総利益への影響額は▲4.2億円と想定)が一定程度残るが、8月12日時点程度の経済活動が継続すると想定し、第2四半期からの営業黒字化を目指す。重点分野のDOOHやSaaS分野への一定の投資も継続する方針だ。
なお下期が広告業界の需要期となるため下期偏重の計画である。そして第4四半期には、上場来最高額となる売上総利益9億円を目指すとしている。通期ベースで収益改善を期待したい。
■株価は下値固め完了
株価は上値が重く安値圏でモミ合う展開だが下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。8月28日の終値は593円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS7円48銭で算出)は約79倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS141円47銭で算出)は約4.2倍、時価総額は約107億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)