【どう見るこの相場】菅新総裁選出の力学はマーケットにも波及しローテーション相場がスパイラル

どう見るこの相場

 今週焦点の政治イベントは、もちろんきょう14日に投開票の自由民主党の総裁選挙である。マスコミの下馬評通りに菅義偉新総裁選出の確度が固そうだ。3人の立候補者のうち、出馬表明が最も遅く、表明即優勢報道であった。そこにどんな政治力学が働いたか興味深い。かって不評だった森喜朗総裁を選出した「密室の政治」とは異なり、総裁選挙実施と公明正大であった。

 しかし安倍晋三首相の持病の悪化、辞任表明のタイミングなどどことどこが結び付き、誰が結び付けたのか、さらに安倍首相辞任で内閣支持率が、反転・急上昇し、もしもここに解散・総選挙が加わるようだと、まさに「政界の一寸先は闇」そのものを垣間見せることになる。

 だからか、今回の菅新総裁先取りの関連株買いは、従来とはやや趣が違ってみえた。他の2候補から遅れて総裁選出馬が観測された途端に、政見発表なしの関連株探しとなった。その後の立会演説会や記者会見での発言も、「安倍政治の継承」を第一義としただけに、政治課題を一つ一つ処理して積み上げていくボトムアップ型のように淡々としたもので、官房長官として取り組んできた実務ベースの関連株が中心となった。強く主張してきた携帯料金の引き下げ関連の格安スマホ株、自ら総務大臣として創設したふるさと納税関連株、業界再編を示唆したと受け取られた地銀株、少子高齢化関連の不妊治療薬関連株、「デジタル庁」関連の情報システム株などが、日替わりメニューのように買い進まれた。

しかし、何せ目玉銘柄なしの小型材料株揃いである。先着組が買い付いて一回転させたあとに、フォローする後発組は力不足が否めず、上値が重くなった途端に今度は売り逃げ競争となって往って来いとなるリスクと隣り合わせである。勢い関連株の乗り換えのローテーション相場とならざるを得ず、長居は無用のヒット・アンド・アウェーを余儀なくされる。ただこれは、ジョン・テンプルトンも「強気相場は懐疑のなかで生まれる」と看破しているように相場の初動段階でしばしば見受けられる相場現象ではある。

 首相の連続在任期間が歴代最長となった第2次安倍内閣も、発足時の1万円ソコソコだった日経平均株価が、2万4448円まで2倍化したが、この初動時も例外ではない。安倍政権成立の引き金となった2012年11月14日の当時の野田佳彦首相と安倍晋三自民党総裁の党首討論を思い出していただきたい。野田首相は、議員定数削減の確約を条件に週末の16日に衆議院を解散すると発言したが、このときテレビカメラに映った安倍総裁の顔には、まず半信半疑の表情が浮かんだようにみえた。

 このあと政局は解散・総選挙、自民党の政権奪還と動くのだが、これを受けたマーケットは、日経平均はまだ8600円台に沈んでおり、まず動いたのが小型材料株やゲーム株、東証マザーズ株などであり、主力株の動意はもっと後であった。このとき株価が2ケタ台にあった消費者金融株が、急動意となったことも今回の地銀株の軒並み高と符合する。

 「アベノミクス相場」が、独自色を強めてこれぞ「スガノミクス相場」と見定めるまでには、なお瀬踏み期間がありそうだ。その間は東奔西走、個別材料株のローテーション相場がダブル、トリプルとスパイラルに繰り返されるとしたら、これまで買われた関連株へ再チャレンジする余地があることになる。地銀株とともに、株高がマーケットばかりか消費者心理を改善させ新型コロナウイルス感染症の感染予防と経済活動の再開を両立させる関連株として業績即効性のある証券株にも注目してみたい。

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