- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- アイリッジは反発の動き、21年3月期営業・経常減益予想だが中期成長期待
アイリッジは反発の動き、21年3月期営業・経常減益予想だが中期成長期待
- 2020/9/23 07:53
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイリッジ<3917>(東マ)は、O2O・OMOソリューションをベースとして、電子地域通貨やライフデザインにも事業領域を拡大している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響を考慮して営業・経常減益(純利益は黒字化)予想だが、中期的に収益拡大を期待したい。株価は反発の動きを強めている。21年3月期予想の織り込み完了して戻りを試す展開を期待したい。
■O2O・OMOソリューションをベースに事業領域拡大
企業のO2O(Online to Offline)およびOMO(Online Merges with Offline)を支援するO2O・OMOソリューション(スマホをプラットフォームとするO2Oソリューションの提供、O2Oアプリの企画・開発、O2Oマーケティング支援)をベースとして、フィンテック(電子地域通貨)領域やライフデザイン領域などにも事業領域を拡大して中期成長を目指している。
18年5月デジタルガレージ<4819>と資本業務提携、18年8月デジタルガレージからセールスプロモーションのDGマーケティングデザインの株式80%取得して連結子会社化、19年10月システム受託開発のキースミスワールドを吸収合併した。
20年3月期のサービス別売上高構成比は、月額報酬(FANSHIPのサービス利用料、アプリのシステム保守料等)が15%、アプリ開発・コンサル・プロモーション等(アプリ企画・開発に伴う収入、アプリマーケティングに伴う収入、広告・販売プロモーションに伴う収入)が85%だった。
中期経営計画の目標値としては、23年3月期売上高70億円、営業利益5億円、EBITDA7億50百万円を掲げている。
■O2O・OMOソリューションはFANSHIPが主力
O2O・OMOソリューションは、ファン育成プラットフォーム(顧客データ分析プラットフォーム)FANSHIPが主力である。スマホ向け位置情報連動型O2Oソリューションpopinfoを19年7月ブランドリニューアルした、
20年6月末時点のFANSHIP利用ユーザー数(ID発行数)は2億352万(19年6月末比5101万増加、20年3月末比1225万増加)となった。利用ユーザー数に応じた従量課金型月額報酬の積み上げによるストック収益となる。
今後はFANSHIPの機能強化によるストック収益拡大や、One to Oneマーケティングプラットフォームとしての導入拡大を図る。20年8月には住宅メーカー向けCRMサービス「FANSHIP for Sumai」を開始し、導入第1号として近藤建設の「KONDO Group オーナーズアプリ」を提供開始した。
さらに子会社DGマーケティングデザインとの連携によって、デジタル・フィジカルマーケティング領域に展開する。オンライン・オフライン双方において、広告~購買~決済~SRMまで消費者の行動プロセス全てをカバーするトータルソリューションを推進する。
■電子地域通貨の展開加速
フィンテック領域(電子地域通貨)は子会社フィノバレーが、電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」をベースとして事業展開を加速している。
19年9月にはeumo、ポケットマルシェ、IKEUCHI ORGANICと共同で電子地域通貨「eumo」の実証実験を開始した。電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」が採用された。20年2月には、木更津市のデジタル地域通貨「アクアコイン」の協業先である君津信用組合と資本提携した。20年3月には「MoneyEasy」がセブン銀行ATMとのシステム連携を開始した。
20年9月には、三井物産100%出資のグルーヴァースが展開する共通ポイントプログラムのウェルネス貯金「ウェルちょ」に「Teamウェルちょ」の一員として参加した。アプリ開発技術とデジタル地域通貨活用に関する知見を提供する。
■ライフデザインなど新規事業も育成
ライフデザイン領域の新規事業では18年8月、デジタルガレージの子会社で分譲マンションのチラシ制作など、不動産マーケティング大手のDGコミュニケーションズの株式14%を取得した。従来は流通・小売・鉄道・金融分野が主力だったO2Oソリューションを、DGコミュニケーションズと連携して、不動産・住まい・街づくりなどライフデザイン領域にも展開する。
なお18年9月にはAIスピーカーAlexaスキル開発運用クラウドNOIDを提供開始している。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。20年5月にはメディカルネットと歯科向けオンライン診療サービスの共同開発で業務提携した。20年6月にはNOIDを活用して、大塚製薬の公式Alexaスキル「サプリメントチェック」を開発支援した。
■21年3月期営業・経常減益(純利益は黒字化)予想だが中期成長期待
21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定、8月14日に公表)は、売上高が20年3月期比6.3%減の50億円、営業利益が12.3%減の1億円、経常利益が12.3%減の1億円、純利益が40百万円の黒字(20年3月期は81百万円の赤字)としている。
第1四半期は売上高が前年同期比24.4%増の9億81百万円、営業利益が28百万円の赤字(前年同期は1億75百万円の赤字)、経常利益が27百万円の赤字(同1億74百万円の赤字)、純利益が24百万円の赤字(同1億32百万円の赤字)だった。
新型コロナウイルスの影響で一部案件の見送りが発生したが、開発案件の大型化・高付加価値化や月額報酬の増加で大幅増収となり、原価低減への取り組みや前年計上のソフトウェア償却費の剥落も寄与して赤字縮小した。サービス別の売上は月額報酬が46.7%増収、アプリ開発・コンサル・プロモーション等が18.6%増収だった。
通期は新型コロナウイルスの影響長期化を考慮して減収、営業・経常減益(純利益は減損処理一巡して黒字)予想としている。重点施策として、アプリ開発案件の粗利率改善と高付加価値化、ストック型ソリューション強化による安定収益比率の向上、リモートワークなど事業環境変化への対応を推進する。中期的に収益拡大を期待したい。
■株価は反発の動き
株価は反発の動きを強めている。21年3月期予想の織り込み完了して戻りを試す展開を期待したい。9月18日の終値は1005円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS5円95銭で算出)は約169倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS374円02銭で算出)は約2.7倍、時価総額は約68億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)