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ゼリア新薬工業は戻り試す、21年3月期増収増益予想
- 2020/9/24 08:46
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東1)は、消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。21年3月期は主力製品の伸長や新薬の上市などで増収増益予想としている。20年9月には鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト静注500mgの販売を開始した。通期ベースで収益拡大を期待したい。株価は7~8月の直近安値圏から反発して徐々に水準を切り上げている。戻りを試す展開を期待したい。
■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開
消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。
20年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業53%、コンシューマーヘルスケア事業47%、その他0%、営業利益構成比(連結調整前)は医療用医薬品事業28%、コンシューマーヘルスケア事業69%、その他3%だった。地域別売上比率は日本69%、欧州23%、その他8%だった。
医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコール(協和キリンとの販売提携を終了して20年4月から単独販売)を主力として、H2受容体拮抗剤アシノン、亜鉛含有胃潰瘍治療剤プロマック、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドなども展開している。子会社ティロッツ社は、アストラゼネカ社から炎症性腸疾患(IBD)治療剤Entocortの米国を除く全世界における権利を取得し、国内ではゼンタコートカプセルを販売している。
アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイおよびインドネシアにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。
コンシューマーヘルスケア事業は、ヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども、全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。
20年4月にはヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として、日水製薬<4550>から日水製薬医薬品販売の全株式を譲り受けて子会社化した。
■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進
消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(20年8月4日現在)は以下の通りである。
鉄欠乏性貧血を適応症とするZ-213(ビフォーファーマ社から導入)は、19年3月鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト静注500mgとして国内製造販売承認を取得、20年8月薬価収載、20年9月販売開始した。なお日本では18年4月から1年間に鉄欠乏性貧血と診断された患者数が約490万人と推計され、約220万人が鉄製剤(経口・静注製剤)の処方・治療を受けているが、日本の鉄製剤市場で販売されている注射剤は現在1剤のみで、治療選択肢が限られた状況となっている。本剤は新たな選択肢として期待されている。
子宮頸癌を適応症とするZ-100(自社品)は第3相(日本を含むアジア共同治験)段階である。予定された患者登録をすべて終了した。
Z-338(自社品)は、日本では小児機能性ディスペプシア患者を対象とする第3相段階、欧州では機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階である。
高カリウム血症を適応症とするZG-801(ビフォーファーマ社から導入)は第2相段階である。米国では15年12月販売開始し、欧州では17年7月EMA(欧州医薬品庁)から承認取得している。
潰瘍性大腸炎を適応症とするZ-206(自社グループ品)は中国で20年4月承認取得した。販売については、開発主体であるTillotts Pharma AGが、イタリアのMenariniグループの中国現地法人と独占的販売権供与に関する契約を締結している。
■海外におけるアサコールとEntocortの市場浸透などを推進
収益拡大に向けた重点施策として、医療用医薬品事業では潰瘍性大腸炎治療剤アサコールの情報提供活動強化、鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト静注500mgの市場構築、海外におけるアサコールと炎症性腸疾患(IBD)治療剤Entocortの市場浸透、コンシューマーヘルスケア事業では主力製品に次ぐ製品群の育成、日水製薬医薬品販売とのシナジーによる事業拡大を推進する方針だ。
■21年3月期増収増益予想
21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定、8月4日に公表)は、売上高が20年3月期比0.9%増の610億円、営業利益が5.0%増の43億円、経常利益が0.5%増の39億円、純利益が12.8%増の33億円としている。配当予想は20年3月期と同額の34円(第2四半期末17円、期末17円)としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比11.8%減の133億31百万円、営業利益が20.3%減の10億60百万円、経常利益が59.3%減の6億34百万円、純利益が15.0%減の9億74百万円だった。なお営業外ではスイスフラン高によって為替差損益が悪化(前年同期は差益1億36百万円、今期は差損5億73百万円)した。特別利益では債務取崩益(6億74百万円)を計上した。
医療用医薬品事業(5.4%減収)は、IBD治療剤Entocort(国内はゼンタコート)が堅調だったが、主力の潰瘍性大腸炎治療剤アサコールが国内市場で薬価改定(19年10月と20年4月)の影響を受け、海外市場でもスイスフラン高の影響を受けて減収だった。コンシューマーヘルスケア事業(19.1%減収)は、殺菌消毒薬などの衛生用品が伸長したが、新型コロナウイルスによる外出自粛の影響や競争激化により、主力のヘパリーゼ群やコンドロイチン群が苦戦した。
第1四半期が減収減益となった影響で第2四半期累計も減収減益予想だが、通期は増収増益予想としている。第2四半期以降の医療用医薬品事業での主力製品の伸長や新薬の上市、コンシューマーヘルスケア事業での複数の新製品投入によって挽回を見込んでいる。通期ベースで収益拡大を期待したい。
■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象
株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は戻り試す
なお5月21日に自己株式取得(上限80万株・17億60百万円、取得期間20年5月22日~20年11月5日)を発表している。
株価は7~8月の直近安値圏から反発して徐々に水準を切り上げている。戻りを試す展開を期待したい。9月23日の終値は2063円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS71円47銭で算出)は約29倍、今期予想配当利回り(会社予想の34円で算出)は約1.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1134円30銭で算出)は約1.8倍、時価総額は約1096億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)