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マーチャント・バンカーズは戻り試す、21年3月期大幅増益予想
- 2020/9/28 08:44
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マーチャント・バンカーズ<3121>(東2)は成長戦略として、投資事業やブロックチェーン技術を活用した事業(ANGOO FinTech関連)を強化している。21年3月期はマーチャント・バンキング事業が牽引して大幅増益予想としている。ANGOO FinTech関連も寄与して中期的に収益拡大を期待したい。株価は上値の重い展開だが、徐々に下値を切り上げている。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。
■マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開
マーチャント・バンキング事業(国内外の企業および不動産向けの投資事業)と、オペレーション事業(宿泊施設・ボウリング場・インターネットカフェ店舗・服飾雑貨店の運営、病院食業務受託)を展開している。20年3月期の営業利益構成比(調整前)はマーチャント・バンキング事業が102%、オペレーション事業が▲2%だった。
賃貸用収益不動産およびオペレーション事業によって安定的なキャッシュ・フローを獲得し、投資事業やブロックチェーン技術を活用した事業(ANGOO FinTech関連)を成長戦略として強化している。
■マーチャント・バンキング事業は企業・不動産向け投資
マーチャント・バンキング事業は、国内外の企業および不動産向け投資を展開している。企業投資はブロックチェーン・AI・再生医療の3分野を重点的投資分野として、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行う。
企業投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングス、金属コーティング加工のCN Innovationsがある。
アーリーワークスは、20年1月NEC通信システムと超高速次世代型ハイブリッドデータベースに関する共同研究を開始、20年2月バレットグループと業務提携してデジタル広告におけるブロックチェーンの有効性に関する共同検証を開始した。
不動産投資は、ネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションやホテルを中心に物件を保有し、年間7億円の賃料収入を安定的に確保している。今後は新たな賃貸用不動産取得によって収益基盤強化を進めるとともに、不動産特定共同事業法にかかる許可を取得して多様な資金調達手段の確保に取り組む。
20年4月には新生インベストメント&ファイナンスと業務提携、20年6月には保険代理店の九の里と業務提携した。20年6月にはインターネット貸金業への取り組みを開始した。20年8月には日本で不動産投資を行っている柏舟投資(香港の柏舟国際諮詢の子会社)と、日本での不動産開発および不動産投資に関して業務提携した。
■オペレーション事業は活性化・拡大を推進
オペレーション事業は岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、愛媛大学医学部付属病院の病院食業務受託、東京都内2店舗のインターネットカフェ運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営・ネット通販を展開している。今後の戦略としては、大株主アートポートインベストの関連会社アートポートアジア(香港)が著作権を持つ映像コンテンツや、子会社MBKブロックチェーン中心に取り組んでいるブロックチェーン技術を活用して、オペレーション事業の活性化・拡大を推進する。
子会社のケンテンは20年4月にラファンと協業してネットショップをスタートした。コロナ対応グッズの販売を強化し、月次売上は20年6月が前年比167%、7月が179%、8月が117%と大幅伸長している。
20年1月に持分法適用関連会社化したアビスジャパンは、LED照明・節水装置などの製造・販売・設置工事を展開している。20年5月には空き家対策事業および電力小売事業への取り組みを開始し、20年7月には「空き家問題の解決とDIY賃貸専用建築の融合」をテーマとする経営革新計画が東京都知事の承認を受けた。また新型コロナウイルス対策の一環として非接触式AI検温システムの販売を開始し、青森県内の市役所への納入が決定した。20年9月には都内で60店舗以上を展開する居酒屋チェーンから20店舗程度(予定)の内装解体工事を受注した。
また20年7月には、人工知能分野の先進的企業であるiFLYTEKの日本法人AISと、日本市場でのマーケティングで業務提携した。
なおホテル事業(加古川プラザホテルの受託運営、Rホテルイン北九州エアポートの保有・賃借)については、新型コロナウイルス影響の先行きが見通せないため20年8月に撤退を発表した。事業撤退時期および方法は未定だが、特段の損失の発生は見込まれないため業績への影響は軽微としている。
■成長ドライバーとしてブロックチェーン技術を活用した事業を強化
成長ドライバーとしてブロックチェーン技術を活用した事業(ANGOO FinTech関連)を強化している。具体的には、不動産などの資産に裏付けされたトークンを発行するSTO(Security Token Offering)など、ブロックチェーン技術を活用した決済・送金等の金融サービス、不動産の流動化、資金調達などを強化する。
18年11月資本業務提携したアーリーワークスのブロックチェーンプラットフォームを採用し、子会社MBKブロックチェーンがプロモーション活動全般の企画などによって業務受託料を得る。
19年5月大株主のアートポートインベストと共同設立した新会社が仮想通貨交換所CRYPTOFEXの運営会社CR社(エストニア)を買収、19年7月仮想通貨交換所のブランド名をANGOO FinTechに変更、19年8月子会社MBKブロックチェーンがCR社と業務委託契約を締結、20年2月ANGOO FinTechのサービス開始、20年5月MBKブロックチェーンがANGOO FinTech運営業務を受託した。
20年7月には、日本でセキュリティートークン関連のソリューション事業に取り組んでいるレヴィアスと、セキュリティートークン発行取引プラットフォームシステム関連業務での業務提携に基本合意した。また大手暗号資産交換所運営会社IDCM社と資本提携、および全世界での暗号資産関連業務での業務提携に関するMOUを締結した。
■21年3月期大幅増益予想
21年3月期の連結業績予想は、売上高が20年3月期比2.1%増の25億円、営業利益が2.8倍の6億円、経常利益が4.6倍の5億円、純利益が3.6倍の3億円としている。配当予想は1円増配の2円(期末一括)である。
第1四半期は売上高が前年同期比33.9%減の3億03百万円、営業利益が39百万円の赤字(前年同期は30百万円の黒字)、経常利益が57百万円の赤字(同3百万円の黒字)、純利益が64百万円の赤字(同2百万円の黒字)だった。
オペレーション事業が新型コロナウイルスによる店舗一時休業などの影響を受けて59.1%減収だったため、全体として減収・赤字だった。ただし主力のマーチャント・バンキング事業は国内および海外企業からの投資回収などで10.4%増収と好調だった。
通期もオペレーション事業が新型コロナウイルスの影響を受けるが、マーチャント・バンキング事業が牽引して大幅増益予想としている。ANGOO FinTech関連も寄与して中期的に収益拡大を期待したい。
■株価は戻り試す
なお17年9月発行の第15回新株予約権について、1万7359個が未行使(発行新株予約権は2万2500個)のため、行使期間を21年9月22日に延長した。
株価は上値が重くモミ合う形だが、徐々に下値を切り上げている。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。9月25日の終値は325円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS10円77銭で算出)は約30倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS126円17銭で算出)は約2.6倍、時価総額は約91億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)