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TACは上値試す、21年3月期大幅増益予想
- 2020/10/6 07:47
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
TAC<4319>(東1)は「資格の学校」を運営し、成長戦略として新事業領域への展開も強化している。出版事業では11月4日に書籍「魔法少女 山本美月」を刊行する。21年3月期は第1四半期に新型コロナウイルスでライブ講義中止などの影響を受けたが、通期ベースではコスト削減効果などで大幅増益予想としている。収益拡大を期待したい。株価は9月の年初来高値圏から一旦反落したが、素早く切り返しの動きを強めている。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。なお11月5日に第2四半期決算発表を予定している。
■「資格の学校」を運営
財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)、その他分野(情報・国際、医療・福祉など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営している。また法人研修事業、出版事業、人材事業も展開し、成長戦略として新事業領域への展開も強化している。
20年3月期のセグメント別売上高構成比は、個人教育事業が58%、法人研修事業が22%、出版事業が18%、人材事業が3%だった。
教育事業の受講者数は3.9%減の20万7118人(個人が3.9%減の12万6000人、法人が3.9%減の8万1118人)だった。
教育事業の分野別売上構成比は、財務・会計分野が19.1%、経営・税務分野が16.3%、金融・不動産分野が21.1%、法律分野が7.2%、公務員・労務分野が22.8%、情報・国際分野が7.6%、医療・福祉分野が1.2%、その他分野が4.7%だった。財務・会計分野、金融・不動産分野の構成比が上昇し、経営・税務分野、公務員・労務分野の構成比が低下した。
■四半期業績に季節変動要因
四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係などで季節変動の特徴がある。第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の公認会計士・税理士講座は、翌年受験のための受講申込が集中する時期となるため、現金ベース売上高が突出して多くなるとともに、翌四半期に向かって前受け金として繰り越されることから、発生ベース売上高の増加が少なくなる傾向がある。
また第4四半期(1~3月)から第1四半期(4~6月)にかけては、夏・秋の本試験時期に向けて全コースが出揃う時期にあたり、稼働率の上昇から前受金戻入額が増加することを通じて発生ベース売上高が増加する傾向にある。こうした売上の傾向に対して、売上原価や営業費用は毎月一定額計上されるため、四半期ごとの営業利益が変動しやすい。
■21年3月期大幅増益予想
21年3月期連結業績予想は、売上高が20年3月期比0.1%増の203億50百万円、営業利益が4.3倍の6億90百万円、経常利益が2.6倍の6億84百万円、純利益が4.0倍の4億10百万円としている。配当予想は20年3月期と同額の5円(第2四半期末2円、期末3円)である。
第1四半期は、売上高が前年同期比8.0%減の51億05百万円で、営業利益が7.0%減の5億12百万円、経常利益が21.0%減の5億13百万円、純利益が3.3%増の3億50百万円だった。
新型コロナウイルスでライブ講義の中止や企業向け研修の中止などの影響を受けて減収、営業・経常減益だった。教育事業の受講者数は15.2%減の6万5428人(個人が24.8%減の3万6373人、法人が1.1%増の2万9055人)だった。セグメント別に見ると、出版事業は巣ごもり需要でECサイト利用による書籍購入が増加して9.5%増収、2.4倍増益と好調だったが、個人教育事業、法人教育事業、人材事業はいずれも減収減益だった。
通期は原価や販管費などのコスト削減効果で大幅増益予想としている。新型コロナウイルスの影響を最小限に抑えるとともに、コロナ収束後の事業環境変化を見据えてオンライン講座やカリキュラム見直しなどに取り組む方針だ。コスト面では教室賃借料の削減、IT活用による業務効率化、WEb媒体活用による広告宣伝費の効率的運用などに取り組む。
なお各教室の講義は、緊急事態宣言解除以降、順次再開している。また第2四半期の営業外収益に、新型コロナウイルス感染症に係る特例措置に基づいた雇用調整助成金約1億43百万円を計上する。第1四半期は減収減益だったが、通期ベースで収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は急伸した9月の年初来高値圏から一旦反落したが、素早く切り返しの動きを強めている。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。10月5日の終値は224円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS22円16銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の5円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS295円67銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約41億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)