【アナリスト水田雅展の銘柄分析】きちりは第3四半期累計の低進捗率の売り一巡、中期成長力を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 きちり<3082>(東1)は自社ブランドの飲食店チェーン事業と飲食店運営プラットフォーム事業を展開している。株価は4月の年初来高値から反落し、第3四半期累計(7月~3月)の低進捗率で水準を切り下げたが、目先的な売り一巡感を強めている。中期成長力を評価して反発展開だろう。

 カジュアルダイニング「KICHIRI」や「いしがまやハンバーグ」を主力業態とする直営店の自社ブランド展開事業、および飲食店運営のプラットフォーム提供や他業種企業のブランド・コンテンツ活用のプラットフォームシェアリング(PFS)事業を展開している。

 14年6月期末時点の店舗数は70店舗(関西エリア42店舗、関東エリア28店舗)で、新業態開発にも取り組みながら出店余地の大きい首都圏への新規出店戦略を強化している。

 PFS事業は、ITやクラウドを駆使して構築した外食特化型インフラ(購買・物流などのバックヤード機能、会計・労務管理・教育・デザインなどのバックオフィス機能、取引先紹介などのバックアップ機能といった本部機能)を活用する事業だ。

 PFS事業を大別すると、ブランド・コンテンツ活用型(優れたブランド・コンテンツを持つ企業と業務提携し、当社のプラットフォームを活用して新しいレストランビジネスを創造する)、およびクラウドサービス展開型(当社が構築した外食特化型インフラを他の飲食店チェーンなどに提供してアウトソーシング受託する)を展開している。

 ブランド・コンテンツ活用型では独自性ある新業態が開発できる、クラウドサービス展開型では参画企業・店舗数の増加に伴ってスケールメリットが得られるという強みがある。ブランド・コンテンツ活用型では13年2月精米機トップメーカーで「ギャバライス」ブランドのサタケ、13年4月イタリアのバッグブランド「オロビアンコ」、13年5月福岡県「はかた地どり」生産者の農業組合法人福栄組合と業務提携した。

 15年1月にはPFS事業の一環として、健康長寿県として注目されている長野県との間で、食を通じた健康長寿発信の推進に関して戦略的連携協定を締結した。長野県の食材の魅力と健康長寿のライフスタイルと食文化を広く発信することを目的に、協業の第一弾としてJR長野駅に直結した駅ビル「MIDORI長野」内で「長野県長寿食堂」(3月オープン)を運営する。

 また15年3月には米国に子会社KICHIRI USAを設立(15年4月)すると発表した。日本から発信する「和食」および当社独自の「おもてなし」を強みとした日本食業態を米国で展開する。

 5月8日に発表した今期(15年6月期)第3四半期累計(7月~3月)の非連結業績は売上高が前年同期比4.9%増の54億01百万円、営業利益が同0.8%増の3億66百万円、経常利益が同8.6%減の3億56百万円、純利益が同8.9%減の2億11百万円だった。

 営業外収益での協賛金収入が減少して経常減益、最終減益だったが、新規出店も寄与して増収となり、営業利益も僅かながら増益を確保した。新規出店は東京都内2店舗、千葉県1店舗の合計3店舗で、PFS事業の一環として長野県との戦略的提携による「長野県長寿食堂」も出店した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)17億03百万円、第2四半期(10月~12月)18億85百万円、第3四半期(1月~3月)18億13百万円、営業利益は第1四半期1億04百万円、第2四半期1億87百万円、第3四半期75百万円だった。

 通期の非連結業績予想は前回予想(8月8日公表)を据え置いて、売上高が前期比8.5%増の75億円、営業利益が同45.7%増の7億円、経常利益が同35.8%増の7億円、純利益が同41.9%増の4億20百万円、配当予想が前期から記念配当2円50銭を落として年間7円50銭(期末一括)としている。

 既存店売上高は98.5%、新規出店は10店舗の計画だ。出店戦略において優先的に出店したい立地の物件が確保できる状況のため、前期の新規出店4店舗に比べて大量出店となる。PFS事業ではブランド・コンテンツ活用型で新規3案件を計画し、クラウドサービス展開型の提供店舗数は自社ブランド店舗を含めて前期末の約200店舗から今期末には約300店舗に増加する見込みだ。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72.0%、営業利益が52.3%、経常利益が50.9%、純利益が50.2%だった。やや低水準の形だが、ブランド認知度向上効果などで既存店売上高が堅調であり、期中の新規出店、PFS事業でのブランド・コンテンツ活用型の新規3案件、クラウドサービス展開型の拡大も寄与して第4四半期(4月~6月)の挽回が期待される。

 なお月次レポート(前年同月比、速報値)を見ると、15年4月の売上高は既存店(対象69店舗)が97.1%、全店(対象77店舗)が109.7%だった。

 中長期ビジョンでは、自社ブランド展開事業およびPFS事業を2本柱として展開し、目標値として18年6月期売上高100億円、営業利益15億円、経常利益16億円、純利益10億円、配当性向30%(当面は20%)を掲げている。事業別には自社ブランド展開事業が100店舗で売上高94億円、PFS事業が契約店舗数500店舗(契約売上規模300億円)で営業利益6億円を目標としている。

 自社ブランド展開事業の新規出店加速に加えて、長野県との戦略的連携協定を皮切りにPFS事業における連携も加速するようだ。米国での本格事業展開も寄与して中期的に収益拡大基調が期待される。

 株主優待制度については毎年12月31日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。優待内容は14年12月31日現在の対象株主から「当社運営店舗で利用できる優待券3000円分、または近隣に店舗がない等の理由で優待券を利用しない方は当社事業における関連商品を選択できる」とした。

 株価の動きを見ると、動意づいた4月の年初来高値761円から反落し、第3四半期累計の低進捗率で700円近辺まで水準を切り下げた。ただし700円を大きく割り込む動きは見られず、目先的な売り一巡感を強めている。

 5月24日の終値701円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS41円44銭で算出)は17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間7円50銭で算出)は1.1%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS157円27銭で算出)は4.5倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を割り込んで調整局面の形となったが、700円近辺が下値支持線のようだ。目先的な売り一巡感を強めており、中期成長力を評価して反発展開だろう。

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