インフォコムは上値試す、21年3月期は再上振れの可能性

 インフォコム<4348>(東1)は電子コミック配信サービスやITサービスを展開している。21年3月期大幅増収増益予想である。新型コロナウイルスに伴う新たな生活スタイルも追い風となり、電子コミック配信サービスが牽引する。通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。中期的にも収益拡大基調を期待したい。株価は上場来高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。なお10月28日に第2四半期決算発表を予定している。

■ネットビジネス(電子コミック配信サービス)やITサービスを展開

 帝人<3401>グループで、一般消費者向けネットビジネス(子会社アムタスの電子コミック配信サービス「めちゃコミック」)、およびITサービス(医療機関・製薬企業・介護事業者向けパッケージのヘルスケア事業、RPAとAIを活用したWeb-ERPソフトGRANDITなどのサービスビジネス事業、大手企業向けシステムインテグレーションのエンタープライズ事業)を展開している。

 20年3月期のセグメント別売上構成比はネットビジネスが57%、ITサービスが43%、営業利益構成比(連結調整前)はネットビジネスが60%、ITサービスが40%だった。

 電子コミック配信サービスの拡大でネットビジネスが利益柱に成長した。なお20年3月末現在の「めちゃコミック」総会員数(有料会員数と無料会員数の合計)は約1170万人だった。またITサービスは年度末にあたる第4四半期の構成比が高い特性がある。

 M&A・アライアンスでは、19年5月アムタスが韓国で電子コミック配信サービスを展開するピーナトゥーンを連結子会社化、介護人材紹介事業のスタッフプラスを連結子会社化、19年7月アムタスとパピレス<3641>が海外への取次事業を行う共同出資会社アルド・エージェンシー・グローバル(AAG)を設立、19年10月ヘルスケア分野に特化したベンチャーキャピタルHealthXCapitalが運営するファンドに出資、19年12月製薬企業向けMR営業支援プラットフォーム「DigiPro」の音声入力機能強化に向けてアドバンスト・メディアと業務提携した。

 20年8月には進化系ERP「GRANDIT」を活用したRPAロボット「GRANDIT RPAオプション」のサブスクリプションサービスを開始、インドネシアのTerakorpと代理店契約を締結して医用画像管理システムのインドネシアでの販売を開始、20年9月にはテモナ<3985>と業務提携してAI不正注文検知サービス「at score」の提供を開始、シンガポールで介護人材マッチングプラットフォームを提供するスタートアップ企業Homageに出資して資本業務提携した。

■電子コミックとヘルスケアを重点事業として持続成長

 中期経営計画(2020年度~2022年度)では、高い成長性と収益性の両立を目指して、経営目標数値には23年3月期売上高850億円~1150億円(SI・サービス150億円、ヘルスケア150億円、電子コミック600億円、M&A)、EBITDA(営業利益+償却費)130億円~160億円、ROE15.0%以上を掲げている。またM&Aでは戦略投資枠300億円を設定している。

 基本方針は、電子コミックとヘルスケアを重点事業とする継続成長、サービス化の推進、共創の積極的推進(M&A、海外展開)としている。サービス化の推進では売上全体に占めるサービス比率を、現状の約6割から8割%超に引き上げる方針だ。

 電子コミックは、市場の年成長率11.9%を想定し、市場を上回る20%以上の成長を目指す。オリジナルコミックの拡充、データ分析・AI活用によるマーケティングの強化、独占先行配信の強化、アプリ版のフルリニューアル、配信システムの完全クラウド化、5G対応、海外展開、M&Aなどを推進する。新型コロナウイルスによる新たな生活スタイルの浸透も追い風となり、若年層を中心に電子で漫画を読む習慣の定着が期待されるため、想定を上振れる可能性が高まっている。

 ヘルスケアは、要介護者の増加に伴って介護IT市場の急速な拡大が見込まれることに加えて、新型コロナウイルスを契機にオンライン診療やオンライン服薬指導の普及も期待されている。介護を注力領域として、新規領域の健康分野における企業向け健康経営サービス「WELSA」や、製薬MR向けオンライン営業支援サービス、海外への展開も強化する。オンライン医療サービスの事業化も検討中としている。

■21年3月期大幅増収増益予想で再上振れの可能性

 21年3月期連結業績予想(7月31日に第2四半期累計予想と通期予想を上方修正)は、売上高が20年3月期比18.2%増の690億円、営業利益が23.0%増の101億円、EBITDAが22.4%増の115億円、経常利益が22.2%増の101億円、純利益が19.1%増の66億円としている。配当予想は20年3月期と同額の31円(第2四半期末10円、期末21円)としている。

 第1四半期は売上高が前年同期比22.9%増の155億89百万円、営業利益が68.6%増の20億91百万円、経常利益が67.6%増の21億26百万円、純利益が67.7%増の14億41百万円だった。電子コミック配信サービスが牽引して大幅増収増益だった。

 ネットビジネスは35.5%増収で80.7%増益だった。電子コミック配信サービスは36.9%増と大幅伸長し、四半期ベースの売上高が初めて100億円を突破した。ITサービスは2.5%増収で6.6%減益だったが、新型コロナウイルスのマイナス影響が想定より小さく概ね堅調だった。

 通期ベースでも、電子コミック配信サービスが各種施策の効果や新型コロナウイルスによる巣ごもり需要で大幅伸長する。またITサービスにおける新型コロナウイルスのマイナス影響が期初時点の想定を下回る見込みだ。通期のセグメント別計画は、ネットビジネスの売上高が36.4%増の450億円(うち電子コミック配信サービスが36.9%増の447億円)で営業利益が59.5%増の79億円、ITサービスの売上高が5.5%減の240億円(うちヘルスケアが2.1%減の105.6億円)で営業利益が32.3%減の22億円としている。ネットビジネスを上方修正し、ITサービスは期初計画を据え置いた。

 新型コロナウイルスに伴う新たな生活スタイルも追い風となり、電子コミック配信サービスが牽引して大幅増収増益予想である。そして通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。中期的にも収益拡大基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年9月末の株主対象

 株主還元については、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配に努め、配当性向30%の維持を目指すとしている。

 株主優待制度は、毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株数および保有年数に応じて、優待商品と交換できる株主優待ポイントを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は上値試す

 株価は好業績を評価して上場来高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。10月7日の終値は4080円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円58銭で算出)は約34倍、今期予想配当利回り(会社予想の31円で算出)は約0.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS653円82銭で算出)は約6.2倍、時価総額は約2350億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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