【どう見るこの相場】「昔リート、今テレワーク」、地価下落でも割安ハウスビルダー株は勝ち組候補

どう見るこの相場

 「昔リート、今テレワーク」である。不動産市況とそれを変動させる需給要因を関連付けるキャッチ・フレーズだ。かつてバブル経済が破綻し「土地神話」が崩壊した時に、救世主として登場したのは不動産投資信託(REIT、リート)であった。高値掴みした所有不動産が不良債権化し投げ売りされ底なし沼化した地価に対して、創設されたリートが、所有価値より利用価値を訴求する「所有から利用へ」のパラダイムシフト(規範変遷)を提示して投資利回りにより相場感を生み出し、底値買いの受け皿となって相場反転を牽引した。

 現在はまた、不動産市況はアゲインストである。今年9月29日に国土交通省が発表したように、基準地価は3年ぶりに下落した。コロナ・ショックで訪日外国人観光客が入国制限され、都市部や観光地などでの再開発が頓挫し、またテレワーク推進による在宅勤務の増加で、オフィスビルの賃貸解約が増加し空室率が上昇したことなどが要因となった。この下落が一過性にとどまるかどうかは、もちろんコロナ禍がいつ一巡するかどうかが最大の要因となるが、不動産業界では、先行きの地価動向にやや冷めた見方もあるのは事実である。「2022年問題」が控えているからである。

「2022年問題」とは、1992年に改正された生産緑地法により都市部に残る農地を都市景観上、緑地として保存するために固定資産税の軽減や相続税の支払い猶予などの税制優遇制度が導入され、その条件として30年の営農が義務つけられたが、その30年目の指定解除時期が、2022年に迫っていることを指す。生産緑地法はその後も改正され、営農継続を条件に30年が過ぎてもさらに10年ごとに延長できる「特定生産緑地」制度が設けられているが、業界では、30年目の2022年に生産緑地が大量に市場放出され地価の下押し圧力になるのではないかと懸念されている。

 このアゲインストな環境をハネ返すと期待されているのが、そのコロナ禍が常態化して「ウイズ・コロナ」による継続する巣ごもり消費とテレワークである。実は今回発表の基準地価でも、物流施設の立地余地のある高速道路沿いの工業地が、巣ごもり消費のネット通販の増加を背景にスポット的に上昇した。またテレワーク推進により、初めて東京都からに人口流失が起こった。これは交通至便とはいえないものの、テレワークスペースのある郊外の低廉なマンションや戸建て住宅を取得する動きが強まったことが背景である。

 テレワークは、今回のコロナ・ショックを逆手に東京一極集中の是正、地方創生のチャンスにもなると期待されている。菅内閣の地方創生・規制緩和・デジタル庁創設政策もこれを後押しし、「2022年問題」による地価下落へ加速要因となる可能性もある。またこの「2022年問題」に関しては、日本への不動産投資を拡大させている外国人プレ-ヤの動向も要注目である。この点に関しては、今年6月に中国の富裕層向けの不動産情報プラットフオーム「神居秒算」を12億2500万円で取得したGA technologies<3491>(東マ)が以来、前週末9日につけた年初来高値1万470円まで2.6倍の大化けした先発組も出ている。

【関連記事情報】
【特集】テレワークの恩恵、ハウスビルダー株に注目

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■内蔵インヒールで自然な足長効果、フォーマルからビジネスまで対応  青山商事<8219>(東証プラ…
  2. ■デュアル周波数対応で通信の安定性を確保  世界的なDX進展を背景に京セラ<6971>(東証プライ…
  3. ■リアルタイム文字起こしと自動要約で議事録作成を効率化  シャープ<6753>(東証プライム)は2…
2025年4月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

ピックアップ記事

  1. ■低PER・高配当利回り、不動産・銀行株が市場を牽引  3月の東京都区部消費者物価指数が前年比2.…
  2. ■新年度相場のサブテーマは「物価」?!  米国のトランプ大統領は、「壊し屋」と奉る以外にない。その…
  3. ■新年度相場の初動として注目される値上げ関連銘柄  4月予定の値上げは、原材料価格上昇や物流費増加…
  4. どう見るこの相場
    ■トランプ関税懸念も『総論弱気、各論強気』の市場展開  「トランプ・ディール(取引)」と「トランプ…
  5. ■名変更会社の局地戦相場の待ち伏せ買いも一考余地  今年4月1日以降、来年4月1日まで社名変更を予…
  6. ■あの銘柄が生まれ変わる!市場を揺るがす社名変更、次なる主役は?  「トランプ・トレード」が、「ト…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る