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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは下値固め完了、16年5月期の収益改善期待で反発
- 2015/5/25 08:15
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信や店頭アフィリエイト広告ビジネスなどを展開している。株価は5月15日の直近安値338円から切り返しの動きを強めている。15年5月期の営業利益下振れ懸念を織り込み、安値圏340円近辺で下値固めが完了したようだ。16年5月期の収益改善期待で反発展開だろう。
コンテンツ制作・配信などのコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開し、中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営と電子コミック配信サービスを手掛けている。
配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略として、ネイティブアプリ事業を新たな収益柱に育成している。ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化に向けて、13年3月に音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月に子会社HighLabを設立、14年11月にアプリ開発の会津ラボを子会社化した。
中国・上海の携帯電話販売事業については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造の構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進している。
コンテンツ配信のグローバル展開では14年6月、インドネシア大手移動体通信キャリアのXL Axiata社が運営するアプリストア内のアプリ取り放題サービス向けに、スマートフォンアプリの提供を開始した。ローカライズした自社アプリを世界の各種プラットフォームに配信し、自社コンテンツ資産の2次利用を推進する戦略だ。
法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。また14年10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。
子会社HighLabは15年3月にパズルゲーム「ハニープラス」および旦那育成ゲーム「ウチの旦那はイケてない」の配信を開始した。さらに4月には美少女キャラと対局☆サクサク遊べる麻雀ゲーム「爽快麻雀!イーシャンテン」の事前予約開始を発表した。
15年4月には集英社コミック約1700作品・8800冊を、スマートフォン・タブレット向け総合電子書籍サービス「BOOKSMART」にて配信開始した。
なお5月21日にスマートコミュニティ事業への参入と、それに伴う合弁会社(子会社)の設立を発表した。スマートコミュニティ事業を機に地方創生ビジネスの拡大を図るとしている。
当社子会社のフォー・クオリアの取引先であるNTTネオメイト等が、経済産業省のスマートコミュニティ構想普及支援事業の採択を受けて、山口県宇部市で太陽光発電実証事業を開始するため、当社グループのアプリケーションおよびシステム開発力と、山口県に事業基盤・人脈・開発実績を持つフォー・クオリアの強みを活かして本事業に参入すべく、太陽光発電・電気販売を行う合弁会社として15年6月に山口再エネ・ファクトリーを設立する。
今期(15年5月期)の連結業績予想(11月28日に売上高と利益を減額修正、1月9日に税金費用減少で純利益を増額修正)については、売上高が前期比13.8%増の51億30百万円、営業利益が同34.4%減の2億20百万円、経常利益が同32.4%減の2億30百万円、純利益が同58.8%減の1億80百万円としている。配当予想(7月9日公表)は前期と同額だが普通配当で年間3円(期末一括)としている。
新サービスの企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」の開発遅延に伴って売上高が期初計画を下回り、子会社HighLabのネイティブアプリ「Fivetoak」および「ひっぱれ!ネコPingプラネット」のプロモーション費用など先行投資負担が影響して減益見通しとしている。
第3四半期累計(6月~2月)は前年同期比14.1%増収だったが、広告宣伝費の増加などが影響して同55.0%営業減益、同51.4%経常減益、同60.8%最終減益だった。
セグメント別に見ると、コンテンツサービス事業は新規コンテンツの投入などで売上高が同4.4%増の19億11百万円と順調だったが、広告宣伝費の増加などで営業利益(全社費用等調整前)が同25.3%減の4億39百万円だった。ソリューション事業は広告ビジネス「店頭アフィリエイト」に係る携帯電話販売会社との連携強化などで売上高が同26.5%増の18億29百万円、営業利益が同40.3%増の1億30百万円と好調に推移した。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)13億16百万円、第2四半期(9月~11月)11億98百万円、第3四半期(12月~2月)12億26百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期10百万円、第3四半期52百万円だった。
通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高72.9%、営業利益51.8%、経常利益54.4%、純利益90.0%である。営業利益と経常利益は低進捗率のため通期下振れに注意が必要だが、売上面で見るとコンテンツサービス事業は交通情報などが牽引し、ソリューション事業は広告ビジネス「店頭アフィリエイト」が大幅伸長して増収基調だ。
また来期(16年5月期)は、交通情報や「店頭アフィリエイト」の好調に加えて、3月に配信開始したゲーム新タイトルも本格寄与して営業損益改善基調だろう。
株価の動きを見ると、5月15日の直近安値338円から切り返しの動きを強めている。22日には387円まで急伸する場面があった。15年5月期の営業利益下振れ懸念を織り込み、安値圏340円近辺で下値固めが完了したようだ。
5月22日の終値360円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS4円63銭で算出)は78倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績に増資を考慮した連結BPS107円70銭で算出)は3.3倍近辺である。
日足チャートで見ると25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線突破の動きを強めている。15年5月期の営業利益下振れ懸念の織り込みが完了し、16年5月期の収益改善期待で反発展開だろう。